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125.アベルくんとローズと未来。

125.アベルくんとローズと未来。




 俺は、しばらくベッドの上で静かな時間を過ごす。

 母さんは婆ちゃんと一緒に下階のリビングで話をしているみたいだ。


 リーサは当たり前のように俺の隣で寝ている。


 さっきまでロッティーも居たが疲れたのだろう、自分の部屋で休むと言って出て行った。


 ローズはまだかいがいしく俺の面倒を見ている。

 

 「ローズ、俺はこのままちょっと眠るから、いなくていいよ。」

 俺がそう言うと


 「いえ、お怪我をしたアベル様をそのままにはしておけません。」


 そう言ってベッドサイドの椅子から離れない。


 「ローズ、お前には随分心配ばかりかけるね。すまない。」


 「なんでお謝りになるんです!そんな必要ないのに!」


 「もっと、お前は自由にしていいんだ。俺にばかりかまけていてはいけない。いろんなものを見て感じてそしてこの家から出なきゃならないんだよ。」


 「なんでそんなこと仰るんです?アベル様、そんなこと言わないで!私を捨てないで!」


 「捨てるんじゃないんだ。お前は旅立たなきゃ、ここから巣立ちをしなければならないんだよ。それがお前のためなんだ。」


 「アベル様、私…私…」

 ローズは俯いて口籠る。


 「そうだ、お前はそれ以上言えないだろ。言っても仕方いと思っているからさ。俺もお前の気持ちには気づいているんだ。それはとても嬉しいことなんだよ。でもこの先この関係は続けられなくなる。それが分かっているからお前はその先を言えないんだろ?」

 

 涙を流すローズは黙ってうなだれる。


 「僕もこんなこと言うのはもっと先のことだと思っていた。だけどこんなことがあった。どこに行っても命を狙われるか分からない。僕のそばにいるとお前も危ないんだよ。」


 「私もヨハン様のところで修行しています。アベル様には迷惑を掛けません。」

 「そういう意味じゃないんだけどな。ローズ、分かっていて話をずらすのはやめろ。」


 「そうじゃなければアベル様のそばに入れないじゃないですか。」

 「やっぱり確信犯か。お前もずる賢くなったね。」


 「そうでなきゃアベル様と一緒所に居られませんよ。」

 「僕はずる賢くないけどな。」


 「アベル様はズルいですよ。私の気持ちを知っていてそういう事を言いますから。」

 「言うべきことを言っただけだ。何もズルいことじゃないさ。」


 「それがズルいって言ってるんです。私の気持ちを考えてもくれない。」

 「考えないよ。使用人の気持ちは考えない。」


 「そうですか、なら私もアベル様の気持ちを考えずここに居ます。」


 「ローズ、考えてみろ。俺が15になって成人したらお前は二十歳だ。もう行き遅れだぞ?それで良いのか?俺は駄目だと思う。お前はしっかりしたところに嫁いで、いい家族を築くんだ。それが俺がお前に希望する最大、最良の思いだ。」


 「アベル様は成人してどうするんです?どなたかとご婚約ですか?」

 「まあ、そうなる。今はまだ断っているが、向こうのその気が変わらなければ、間違いないくオリビア王女だ。」


 「王女様…、でも、リラ様は?あの方はどうするんです?」

 「リラは特殊な立場だけど、貴族ではないからな。」


 「お妾ですか?」

 「わからん。その時にならんとな。」

 「じゃ私もお妾でいいです。」


 「お妾でいいですじゃないんだよ。」

 「じゃあ、どうすればいいんですか。」


 「どうもしなくていい、お前はこの家から出て、結婚して幸せになるんだ。」

 「私の幸せは、アベル様のお世話をすることです。」


 「お前は。こんな強情だったっけ?」

 「そうです。アベル様の事では強情になります。私は欲張りになったんです。この前のデートは一回だけじゃ満足しません。何度もアベル様としたいんです。」


 と、言い合いをしているところにノックが鳴った。


 ローズがすかさずドアを開けに行く。

 おい、涙くらい拭いて行け。


 「あ、ローズ、アベル様起きてる?って、あんた泣いてたの?」

 この声はエレナか。


 また面倒なのか来た。


 「アベル様!どういう事です!」

 「使用人のお前に怒られるいわれはないし、話をする必要もないが?」


 「あ、そうですね!それは失礼いたしました。下の食堂で皆さんお待ちです。ローズは連れてい行きますがよろしいですよね。」


 「ああ、構わない。好きにしろ。」


 「はい、失礼します。」

 バタン!!と大きな音でエレナはドアを閉めて出て行った。


 「あんたも不器用ね。」

 リーサは俺が起き上がってベッドの上で胡坐をかいている顔の前に飛んでくる。


 「起きてたのかよ。」

 「起きるわよ、泣いたり怒鳴ったり、うるさいもの。」


 「そりゃそうか。」

 「そりゃそうよ。」


 「飯に行こうぜ。みんな待ってる。」

 「そうね。今日は働いたから、ゆっくり食べたいわ。」


 「そうだな、珍しくお前が働いたもんな。」

 「あんたのためでしょ。感謝しなさいよ。」


 「してるよ。一度は腕一本諦めたもんな。」

 「そうよ、あなたのリーサがやったのよ。」


 「誰があなたのリーサだよ。さっきの話に当てられたな?神の癖に人間の感情に引きずられてどうすんだよ。」

 「いいじゃないの。誰も困りはしないでしょ。」


 「まあいいや、母さんに怒られる前に行こう。」


 「そうね、でもアリアンナも今日は疲れているんじゃない?」

 「元A級冒険者を舐めない方がいいぞ。」

 

 「あっ、そうね。行きましょう。」


 


 そう言って俺たちは食堂に向かうのだった。


ここまで読んでいただき、有難うございます。

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