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122.アベルくんと父の決意と母への告白。

122.アベルくんと父の決意と母への告白。




 険しい顔で父さんが出て行った後

 俺はベッドに横たわったまま母さんに質問した。


 「母さん、父さんどこに行ったの?やっぱり王城?」

 「そうね、陛下に捜査の協力要請でしょう。私たちだけじゃどうにもならないわ。」


 まあ、そうだ。

 辺境伯領騎士団が10名、父さんと母さん、ヨハン、アーサー。

 捜査人員及び戦力はこれだけ。

 俺もいるけど、多分今は別邸外には出してもらえまい。

 

 まして首都で辺境伯領の人間が好き勝手やっていいものでもない。

 捜査行為を行うにも、王、宰相、近衛騎士団、セイナリア騎士団など、要請及び許可を得なければなるまい。

 何かしらの圧力がかかれば、容易に突破が出来なくなる。

 外様はこれがネックになるな。


 「母さん、僕らだけで捜査できると思う?」

 「あなたは駄目よ。これは絶対。ここに居るの、分かったわね。」

 母さんは悲しそうな、怒るような眼で俺を見つめ言った。

 「それに、今それが出来るようにローランドが向かったのよ。父さんのことを信じて待ちましょう。」

 

 「リーサ、どう思う?」

 「私は政治の話は分からないわよ。そんなの貴族がしなさよってだけ。」

 そのとおりだ。

 貴族の命のやり取りに一般人が入れば悲劇しか起こらない。

 それに神の介在なんて、それは喜劇だ。


 『あんた、失礼よ。』

 はい、はい。

 だから、思考を読むなって。


 今回、俺たちが乗った馬車が狙われた。

 この考えはマストだ。

 他に被害が出ないだけの火薬量を見れば間違いないだろう。

 街の真ん中だ。

 どうやって?

 馬車に潜って爆弾を取り付け、火をつけた。


 チャールズ、ユーリという優れた騎士が居た。

 その目を掻い潜って。


 火をつけるだけなら、離れた場所から導火線に火をつけるのは魔法が使えればたやすい。

 導火線に火が付くイメージさえすればいい。


 爆弾なんて使わなくても、遠距離から馬車への魔法攻撃いいんじゃね?

 なるほど、そういう考えもありだね。

 だけどそれは母さんがいる限りさせない。

 生半可な攻撃は、母さんの魔力操作で相殺させてしまう。

 それくらい凄いんだよ、アリアンナ・ヴァレンタインは。

 今回の犯人はそう言う点も知っていたって事だろう。


 つい、母さんの凄さを思っていたら、笑顔になってしまっていたらしい。

 「どうしたの?楽しいことでも思い出した?」

 不思議に思った母さんが微笑みながら聞いてきた。


 「ううん、母さんの魔法は凄いよなって、まだまだ敵わないって思って。」

 「あなただって凄い魔法を使えるじゃない。自分で作るし。私が敵わないわよ。」


 「繊細な魔力操作、事象から事象への再定義。まだまだ母さんには敵わないよ。」

 「あなたが言った二つは訓練の努力が必要なだけ。あなたの魔法に対しての集中力ならすぐ習得できるわ。」

 

 「そうかなぁ?母さんと姉さんの魔力操作を見ると、自信が無くなるんだけどね。」

 「ロッティーは天賦の才ね。イメージの訓練は手間取ったけど、魔力操作はあっという間だった。」

 「魔法大学校の話は本当?」

 「ロッティーの?本当よ。12歳になったら大学校に入れる。あの娘はヴァレンティアに居るだけではもったいがないもの。あなたを見て魔法の開発にも興味があるみたいだし。大学校に入れた方がいいのよ。あなたと離れたくないって大騒ぎなる未来が見えるけど。」

 母さんは軽く苦笑いをする。


 「アベルもいつか学校に入るの?」

 今まで黙って聞いていたリーサが聞いてきた。


 「俺は15歳になったら騎士学校に行くんだってさ。」

 

 「騎士学校?あんたが行ったらみんな自信を無くしちゃんじゃない?誰もあんたの相手にならないでしょ。」


 「リーサちゃん、そう思う?」

 母さんが興味ありげにリーサに聞く。


 「アリアンナ、治療の時に言ったでしょ。この子はもうちょっと身体が出来てきて、筋力強化の制御がうまくなれば、単純の力試しじゃ大の大人が敵わなくなるわよ。」


 「言いたくなかったけど、多分、僕はもう剣と魔法を両立できるようになってるんだ。」



 「えっ!!」



 母さんは口に手を当て驚く。


 「もう父さんの剣をしゃがむことなく受けることもできるし、むしろその剣をガストーチ魔法で受けて切り裂くこともできるんだよ。母さん。」


 「アベル、何を言っているの?」


 「もちろん、父さんが本気を出したら大きくなっても敵わない。これは覆せない。でも、僕が剣と魔法両方使えるのも本当なんだ。」


 俺がそう言うと、リーサが追い打ちをかける。


 「信じられないかもしれないけど、アリアンナ聞いて。」


 「何?まだ驚かせるつもり?リーサちゃん。」

 「ええ、驚くわよ。今のアベルの能力は、英雄王ノヴァリスと同じものよ。」


 「やめてよ…私の子供は子供でいさせてやってよ。」

 

 糞ッ!、リーサの奴、言いやがった。

 でも俺が直接言うより良かったのかもしれない。


 母さんの目から頬を伝い、綺麗な水玉がベッドに落ちる。

 「母さん、僕は、僕が死ぬまで母さんの息子だよ。心配をまたかけるかもしれないけど。」

 「うん。」


 「こんな力は普通に生きている分には必要ないんだから。僕はたまたま持っちゃったけど、使わなきゃいいんだ。使う場面に居なければいいんだからさ。」




 そう言って俺は無事な左手を母さんの濡れた頬に当てた。




ここまで読んでいただき、有難うございます。

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