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117.アベルくんと馬車と婆ちゃん。

117.アベルくんと馬車と婆ちゃん。




 馬車に乗って商業地区に向かっている。

 今日はそろそろヴァレンタイン領に帰る準備に入るので、お土産やらなんやら買い物だ。


 お土産?

 母さんたちの欲しいものを買うだけではないのか?

 

 と、言うわけで今回のメンツは、父さん、母さん、クリス婆ちゃん、ロッティー、で、俺だ。

 護衛とメイド勢も含む。

 だから馬車2台だ。


 馬車2台も出してどんな買い物だ?と、元庶民の俺なんかは考えちゃうだけど、まあ、首都の思い出は、割とろくでもないものばかりだったからね。

 父さんたちが、万全を期すのも仕方ないんだろう。

 今回のメイド勢は、別邸組になっている。セイナリアの商店は別邸組の方が詳しいからね。


 「アベル、シャーロット。セイナリアはどうだった?」

 社内で正面に座るクリス婆ちゃんが俺たちに話しかける。


 「楽しかったよ。首都に居なければ合わないトラブルばかりで。」

 俺がそう言うと、恐ろしい蛇のように絡みつくオーラが俺に向かってくる。


 母さんだ。


 「アベル、人の故郷を怖い場所のように言わないでほしいわね。」

母さんの顔は穏やかだ、が、 しかしその目の中は笑っていない。


 「それは私の注意の足りないところでした、これからは善処いたします。」

俺は即座に謝罪をする。


「よろしい。」

母さんは満足そうに頷いだ。


「アリアンナ、あなた子供たちにそんな物騒な気配をぶつけて、いつもなの?」


「婆ちゃん、大丈夫、たまにだよ。」

おれは母さんのフォローをする。


「アベル!」

また母さんの圧力が高まった。

どうやらフォローになっていなかったらしい。


 テヘッ


「アリアンナ!」

婆ちゃんが母さんを一喝する。


「ごめんなさい。」

珍しく母さんが小さくなった。


やはり自分の母親には敵わないらしい。

そんな母さんも可愛いね。


「でもね、母様、こうでもしないとアベルはどこへでも飛んでいくのよ。」


 母さんが婆ちゃんに俺の自由さを話すが釈然としない。


 でも、俺は、ヴァレンタイン辺境伯領を捨てるつもりはないよ。

 

「そうね、この子は私たちとちょっと違うわ。でも、押さえつけては良くないのよ。自分の頃と比べてみなさい。」


まあねぇ、12歳の女の子が腕試しに冒険者になるって言って出奔したという暴挙を成し遂げたのだから、そう言われると母さんは弱いよね。


「分かっているわよ。」

母さんは昔のことを言われてちょっとむくれた。


「ならば良いわ。もうこの話はおしまい。いいわね?」

 婆ちゃん、案外剛腕だね。



お淑やかな大貴族の御婦人って感じなのに。

まあ、だからこそなのかもしれない、伊達に宰相婦人は務めていないか。

御婦人達の派閥なんかも有るだろうし。

 

 ご婦人達ってだけでもアレなのに、されに政治が絡むとか、怖い、怖い。


「僕は大人に従うよ。これからもね。」


「こら、アベル、今のはちょっと生意気がすぎるぞ。」


父さんが珍しく口を挟む。


女性の会話には口を挟まない父さんも、ちょっと見過ごせなかったか。

「はい、父さん。ゴメンね、婆ちゃん。」



「ローランド卿、いいのよ。この子は5歳にして大人の会話を分かるし出来る。王族、貴族とも渡り合えるわ。特別なのよ。シャーロットとアベルは本当に特別な子供たち。ある意味あなた達はその特別さに慣れすぎたのね。」



「そうかしら?確かにロッティーもアベルも勉強はできるし魔法の才能もある。修練を見ている限りでは、剣術に行っても頭角を表しそうだわ。でも、まだ10歳と5歳の子供なのよ。」


「でも、あなたは間近でアベルと陛下の議論を見たわ。」


「そうね、見たわ。」


「パーシー公とその取り巻きの話を5歳の子供が陛下と議論する。陛下との議論なんてそこら辺の男爵、子爵なら逃げ出すわよ?」


婆ちゃんの言葉を聞いて母さんが途端に辛そうな顔する。 


 「母様、子供たちを私から取り上げないで。」


 「アリアンナ、私はそこまで言っていないの。ただ、この子たちの特別さに目を瞑り、ただの子供として扱ってはあなた達のためにもならないのよ。」


「お祖母様、私はそんな特別ではないわ。人よりちょっと記憶力が良くて、魔法の制御が得意なだけ。」


「シャーロット、あなたは十分特別よ。ノヴァリス王国大事典を全巻諳んじられるあなたが特別じゃないなんて言ったら、世界の学者たちは筆を置くわね。魔法もそうよ。アリアンナの手紙では魔力制御で言えばアリアンナと同等って話でしょ。」


「でも私はアベルの様に自分で魔法も作れない、制度の改革も思いつかない。アベルほどの特別じゃないのよ?」


 「だからね、アベルを基準にしてはいけないの。アベルは本当に特別な子供なのよ。そんな子供を基準にして、見慣れたの。あなた方は慣れすぎているのよ。」


 「黙って聞いてれば僕を化け物みたいに言わないでよ、婆ちゃん。」


 「あなたは化け物よ。十分人と違う。」


 「うん、そうだね。それは分かっているよ。」


 「そう、今の一言でもわかる。自分の特別さを分かっているのに、アベル、あなたは自然に振る舞っている。天狗にもならない。それは十分化け物と言っていいでしょう。それを分かるあなたはもう違う。あなたは納得づくでこの家族の一員をしている。」


 「自然にしているだけだよ?」


 「そうね。だからずっとローランド卿とアリアンナ、シャーロットを大事にしてあげて。」


 

 


 「当然だよ、大事な家族だもん。婆ちゃんと爺ちゃんもね。」


 「うふ、嬉しいわ。」



そして馬車はとある高級店の前に到着し停車した。


ここまで読んでいただき、有難うございます。

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