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13.アベルくんと魔素溜まり。

13.アベルくんと魔素溜まり。




 俺はマリアさんの胸から口を外し、授乳終了を告げる。

 ふう、お腹いっぱいだ。

 するとマリアさんは手のひらを使って、トントンと優しく背中を叩く。

 うん、出そうだ…

 「けふっ。」

 と、俺は新生児らしい可愛いゲップをする。

 まぁ、これはルーティーンだね。


 今度は優しく抱き上げられ、ベビーベッドの上にまた寝かされるわけだ。

 そして起きてスタンバってるアンネローゼの授乳の番になる。


 アンネローゼはあまり泣かない。泣くのはオムツの時くらいかな。

 夜も夜泣きもせずにずっと大人しく寝てるし。


 授乳の催促でも泣かないどころか、俺が飲み終わるまで起きて待っているって感じ。

 このませた新生児も転生者じゃあるまいな。


 などと考えていると、まだレッスンを続けているらしいアリアンナ母さんの声が聞こえてくる。

 「胸いっぱいに魔素が溜まった感じがする?溜まると不思議なことが起きるわよ。」

と、アリアンナ母さんがロッティーに言った。


 「何が起こるの?」

 興味津々にロッティーが聞く。


 「深呼吸を続けて、そうすればすぐわかるわ。」

 母さんはロッティーを見つめながら諭すように言う。


 「わかった。すぅーーー、はぁーーー」

 と、深呼吸をしている音が聞こえる。


 不思議なことか。丹田に溜まることかな。

 と、考えていると、「母様!魔素がお腹の方に流れてく!」とロッティーが叫ぶ。


 「肺に十分溜まったのね。それでいいのよ。魔素が自然とお腹の魔素溜りに溜まっていくの。」

 と、アリアンナ母さんは優しく説明する。


 魔素溜まり!

 まんま過ぎてその名称はなんか嫌なんだが!

 まあ、でも仕方ないか。郷に入れば郷に従えってね。

 で、魔素溜まりに溜まったあと、どうなんの?アリアンナ母さん、はよ。


 「魔素はね、肺に溜まっただけだと霧散しちゃうのよ。魔素を意識して、魔素溜まりに入れる事が出来ると魔素の維持ができるの。ここからが魔法使いの始まりね。魔法が使えない人は、魔素を意識できない人ってことになるかしらね。」

 アリアンナ母さんはしゃがんでロッティーの肺からへそのちょっと下まで指をなぞる。


 「では、剣士である父様は魔素を意識できないの?」

 と、ロッティーは至極真っ当なことを聞く。


 アリアンナ母さんは

 「あら、ローランドは魔法を使えるわよ。イメージが雑だから、上手く事象に昇華できないだけ。魔力を目に集めて遠くを見れる、「遠視」って基本的な魔法があるんだけど、それくらいなら難なく出来るわ。後はバフね。身体強化とか。」

 両腕を曲げ、力こぶを作る真似をする母さん。


 ロッティーと俺(心の中で)は同時に「へぇ~」と驚く。


 「身体強化とかの基本的なバフを自分で掛けられなきゃ、A級冒険者どころか、C級も無理ね。ああ、モンスター相手なら身体能力だけでもなんとか戦える場合はあるわね。でも対人戦だと不利になる。それだと一流にはなれないわ。だから、剣士で一流のエドワードお爺様や、チャールズ騎士団長もバフなどの基本的な魔法を使えるのよ。なぜそうなるかはよくわかっていないんだけど、近接戦闘重視の人は何故かバフ以外の魔法が上手じゃないのよね。さっきも言ったけど、イメージが雑になる傾向があるみたい。」

 と、アリアンナ母さんは説明を続けた。


 攻撃魔法と剣術が両立しないのか。

 攻撃魔法をイメージするためのリソースが、接近戦をするための何かにリソースを食われてしまうのかな?

 接近戦が得意なだけなんでしょ。

 それでイメージが雑になるって…わかんないね。

 今の身体じゃ剣術は出来ないし、実験できんわな。


 「だから魔法の使えない剣士は何度も言うようだけど、一流になれないってレッテルを貼られちゃうわ。どんなに力が強くても、どんなにスピードが早くても、身体強化された剣士に跳ね返されちゃうのよ。」

 母さんは盾を持つアクションをしながら話をする。


 「多くの貴族の子弟は、この事実があるために、必ず魔法使いの家庭教師を招くの。そして何としてでも魔素を意識できるようにする。じゃないと、一流の剣士にも魔法使いにも道がひらけないのよ。

市井の子が騎士学校に入ってきたら、まずこの問題にぶつかるわ。学校に入るまでその事実を知らないのよね。けど、年齢が上がっちゃうと魔素を意識でき難くなっちゃうみたいなの。それで騎士になる夢に敗れる 子が多くいるわ。切ないわよね。」

 と、話をしているアリアンナ母さんも切なそうだ。


 誰か知り合いにでもそんな人が居たのかな?

 居たのかもね。


 「あれね、剣士の暗い話ばかりしててもあれよね。ロッティー、魔素溜まりには溜まったかしら?」

 あれって何だよと思うが、精いっぱい明るい声を出してアリアンナ母さんがロッティーに聞いてきた。


 「もうずいぶん溜まったみたい。」

 と、ロッティーが小首を捻りながら言うと

 「じゃあ、魔法を使ってみる?」

 悪戯っぽくアリアンナ母さんがロッティーに聞いた。


 「使えるの!?」ロッティーは興奮気味に聞き返す。

 アリアンナ母さんは

 「使えるわよ、後は魔力変換と事象への昇華だもの。」

 と言うと


 ロッティーは食い気味に「魔法やりたい!」

 と、飛び上がって大興奮だ。


 ロッティーの興奮が伝播したように

 「じゃあ、やってみよう!」

 と、アリアンナ母さんは高らかに宣言するのだった。



ここまで読んでいただき、有難うございます。

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