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114.アベルくんと頭痛。

114.アベルくんと頭痛。




 「ぐぁ!」

 俺が目を覚ますとうめき声を出すほどの強烈な頭痛に見舞われた。

 頭痛を我慢しながら、あたりを見回してみる。

 なんだ、しんと静まり返った自分の部屋だ。

 常夜灯の魔道具がぼんやり付いている。


 ふとベッドサイドを見てみると、ローズとロッティーが並んで顔を伏せて寝息を立てていた。


 「イテテテテ、つー、頭痛い。夜か。」

 俺がそう呟くと、ローズが顔を上げた。


 「アベル様!大丈夫ですか!?」

 彼女は思わず叫ぶ。

 また心配を掛けさせたんだろうか?


 「うん、頭が痛いけどね。」

 俺がそう言うと

 「お水飲みますか?」

 ローズが聞いてきた。


 「そうだね、一杯いただこうかな。そう言えば喉が渇いたよ。」

 俺とローズが話していると


 「うーん。」

 と、いう声とともにロッティーも目を覚ました。


 「アベル大丈夫?」

 寝ぼけ眼で俺に聞くロッティーに

 「大丈夫だよ。ちょっと頭が痛いだけ。」

 と、だけ言った。


 そんな短いやり取りをしていたら、ベッドサイドの水差しからコップに水を継いだローズがそれを差し出す。

 「アベル様、はい、お水です。」


 「うん、ありがとう。」

 俺はそう言ってローズからコップを受け取り水を飲むが、一口喉を通るたびに頭に響き、やけに痛む。

 俺が顔をしかめていると、ローズとロッティーが心配そうに覗き込む。


 俺はその二人の様子を見ながら

 「大丈夫だよ。二人とも、もう自分の部屋に戻って休みな。風邪ひいちゃう。」

 そう言って俺は二人を追い出そうとするが


 「だめよ!「です!」」

 と、跳ね返される。


 その時、二人の声に呼応するように俺の部屋の扉が開いた。

 「三人とも、早く寝なさい。」

 母さんだった。


 「ほら、ロッティーもローズも部屋に戻って。あなたたちが居ると、アベルが気を遣って眠れないでしょ。」

 そう言って二人を追い立てる。


 二人は不満そうだが、母さんには逆らえないので仕方なく


 「おやすみ。「なさい。」」


 と、言って出て行った。

 あの二人は、なんだかんだ言って仲がいい。

 同い年の女の子が良いのは良い事だ

 二人は4歳からの仲だから、もう6年か。

 そう言えば俺には男の友達がいない。

 まあ、いらないが。


 そんなことを考えていたら、ベッドサイドに母さんが座る。


 「アベル、大丈夫?」

 おや?“あなた”じゃない。

 珍しいね。

 こっちもやっぱり心配を掛けさせてしまったか。


 「うん、頭がちょっと痛いだけで平気だよ。」

 「そう、良かった。」

 そう言った母さんが涙ぐむ。

 

 俺はあわてて

 「大丈夫、本当に大丈夫だよ。」

 そう言いながら、母さんの腕をつかむ。

 すると、いきなり抱き寄せられた。


 そう、これこそが俺にとっての原初の安心。

 生まれたての俺が、乳首を含ませられた時の言いようのない安心。


 そして母さんにとっては、俺をカインに殺されたトラウマがまだ残っている心配。

 首都に来る途中で、5歳の俺に魔法で盗賊を撃退させてしまった心配。


 母さんは何も言わず、只々抱きしめる。


 母さんの鼓動の音が聞こえるだけの、静かな時間が過ぎて行く。





 「かあさん。」

 「なに?」

 「生んでくれてありがとう。」

 「うん、生まれてくれてありがとうね。アベル。」



ここまで読んでいただき、有難うございます。

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