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110.アベルくんとリーサさん。

110.アベルくんとリーサさん。




 「あんた、まだ落ち込んでんの?」


 リーサが俺の頭上で情けなさそうに声を掛けてきた。

 お前、そこにいるとノーパンのスカートの中身が丸見えだ。


 父さんとの修練から二日、俺は自室に引きこもるようになった。

 みんな心配してくれるが、かえってそれが重荷になる

 トラウマは自分で乗り越えるしかない、それが自分で分かっているからなおのことだ。


 「前世でどんだけ酷い目に逢ったのよ、まったく。」


 リーサはぶっきらぼうに俺に聞いてくる。


 「クソ酷い目だよ。」


 「見ていい?」


 「いつも勝手にのぞいているだろ。」


 「前世までは見ていないわよ。」

 

 「見るなと言っても見ようと思えばお前は見ることが出来るんだろうから、勝手にすればいい。」


 「うん、わかった。勝手にするわよ。」

 そう言うと急に黙り込むリーサ。


 そして、俺の頬に抱き着いたかと思うと急に嗚咽した。


 「ああ、もう、俺の前世の生活を見て何泣いてんだよ。」


 「あんたの…前世の…生活を見たからよ…。」


 「俺の前世じゃ、俺みたいなやつはたくさんいたんだ。でもここのスラムほどじゃない。死ぬレベルにはいかないからな。中には居たが。」


  「ここのヒューマンたちは生きるためよ。生きるために必死なのよ。でもあんたの前世は違う。あんたの前世の人間たちは、楽しむためにあんたを傷つけた。」


 「そうだな、俺はおもちゃであり、金づるだった。」

 「なんであんたそんなに強いのよ?」


 「強くないさ。強けりゃこんなトラウマが心にないはずだ。」


 「強いわよ、こっちで転生して生きているもの。」

 「それはさ、ローランドをはじめ、アリアンナ、エドワード達がみんな俺を大事にしてくれるからさ。」


 「そうね、ヴァレンタイン家の皆は家族として、また領主家としてみんなに優しい。」

 「俺は、彼らの愛情を受けて、初めて人間の優しさを知ったんだよ。前世では欲しくても絶対に手に入れられないものだった。だからここの人が大好きだし、何よりも大事だ。リーサ、お前もな。」


 「私もよ。こんなに人間に執着したのは初めて。あんたは不思議な存在よね。」

 「なんだよ、俺はヒューマンじゃないんだな、人間なのか。」


 「そうね、根本がこっちのヒューマンと違うのよね。」


 「そんなもんかね。」

 「でもあんたの本質を知っているものが他にもいるわ。」


 「へー、誰?」

 「アリアンナ。母親だからね。おかしな子供と思うだけじゃなく、あんたの別の人生の遍歴も気が付いている感じがする。頭は覗いていないけど」

 「アリアンナね。母さんはそうだろうな。3歳くらいからぼんやり気付いていたらしい言動はあった。」

 「その次がハーフエルフの大年増のリラね。あれは長く生きているからね。普通の人間と違うことをいちはやく察知したんでしょうね。」

 「リラねぇ。あれの執着も異常だもんな。3歳児の俺を男、男性として見ていた。びっくりだよ。」

 「でもあんただって惹かれているんでしょ。」


 「そうだな、あいつは母さんと違う包容力を感じるんだよ。」


 「ふん、まあいいわ。あとはヨハンね。」

 「ヨハンは俺のことを老成してるとしょっちゅうからかっているからな。何かしら感じているのみ納得はいく。」

 「ヨハンもエルフよね。エルフは何かしらそう言ったものに敏感なのかもしれないわ。」


 「そうするとマリアもか。」

 「そうね、あの子はハーフエルフだし、ある意味アリアンよりもあんたと一番一緒に居たから、何かしらに気づいていない方がおかしいわね。あとはアルケイオン。ヴァレンタイン家の氏神だし当たり前よね。」


 「アルケイオン様は分かっているだろうな。ヴァレンティア城をずっと守護してきたわけだし。」

 「あれもあんたに執着してるわよ?」


 「なんでなんだろうな?俺は神気を纏えるわけでもないのに。」

 「あんたの前世の魂の異質さなのかもしれないわね。あんたに神として祈ってほしい、敬ってほしいとか思わないわ。私もそうだもの。」


 「それが俺のことをヒューマンじゃなく人間と呼ぶ所以かもしれないな。」

 「そうね、感覚として別の者って捉えているのかもしれない。」


 「でもカインに一度殺されたように、俺は普通の生物だぞ。」

 「肉体的にはね、魂の方よ。」

 「魂ねぇ、Youちゃんにこの身体へ入れられた以外は、虐待を受けていた、普通の人間なんだがな。」


 「でも、それでいいじゃない。あんたはのびのび育って、その姿を周りの皆は愛でているわ。あんたもそれが一番の心の癒しになっているんでしょ。このまま癒されていれば、トラウマも治るかもしれないわよ。」


 「そんな簡単な問題かね。悠長にやってられないんだが。剣の修行も出来ないし。」

 「やろうと思えば、あんたの虐待の記憶を消すこともできるわよ。でもそれでは、あんたがあんたじゃなくなる恐れがあるわ。」


 「だろうな、人格が変わっちまいそうだ。」

 「だとすれば、ローランドに頼んで荒療治しかないんじゃない?」




 「やっぱりそれか。」

 「それよね。」



ここまで読んでいただき、有難うございます。

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