98.ローズちゃんとアベルとデート。
98.ローズちゃんとアベルとデート。
ドキドキする。
アベル様からデートに誘われた。
泣いてグズグズしていた私を叱らなかった。
むしろ優しくしてくれた。
どうしよう。
あ!顔を洗わなきゃ。
目の周りも鼻も頬っぺたさえもグシャグシャだ。
思えば、アベル様のジャケットに、私の涙と鼻水がたくさんついたに違いない。
ごめんなさい。
私は急いで洗面台へ向かう。
その途中で、ミー姉ちゃんと会った。
「ローズ、泣きにゃんだ?」
ミー姉ちゃんの言葉は時々聞き取りにくいけど、なんとなく分かる。
「うん、みんなが居たのにごめんね、ミー姉ちゃん。」
控室にはエレナ姉をはじめ、ヴァレンティア組のメイドも、別邸組のメイドも、みんな居たのに私が泣いたおかげで、混乱させてしまった。
おまけに騒ぎを聞きつけたアリアンナ奥様まで巻き込んでしまった。
うー、どうしよう。
「どこいくにょ?」
「うん、洗面所に顔を洗いに。ミー姉ちゃん、どうしよう、アベル様からデートに誘われた!」
ミー姉ちゃんはハッ!とした顔をして
「それは大変にゃ!支度しにゃきゃ。」
「うん、そうなんだけど、アベル様は時間を掛けてもいいから、ちゃんと支度しなさいって。」
「そうにゃの?アベル様は優しいにぇ。」
ミー姉ちゃんはそう言って微笑んでくれた。
「でも早く顔を洗わなにゃきゃ。そんにゃ腫れた目をしていたら、アベル様に笑われる。」
ミー姉ちゃんに言われて、私の目の周りが腫れぼったいことに気がついた。
「あー!どうしよう!!」
「水でしっかり冷やせばいいにょ。焦らにゃいで、私が付いててやるにゃ。」
ミー姉ちゃんは優しく言ってくれる。
「ホント!?ありがとう!よそ行きの服も着てきなさいって言われてて、ミー姉ちゃん、手伝ってくれる?」
その時ミー姉ちゃんはニヤッて笑い
「いいにょ、メイクもしようにぇ。」
そう言って、ミー姉ちゃんは私の手を引っ張り、洗面所で冷たい水を存分に私の顔に掛けて冷やしてから洗う。
そうやって、なすがままになっていた私を自分の部屋へ私を引っ張り込んだ。
「さあ、座りにゃさい。」
そう言って私をドレッサーの前に座らせる。
「ローズは元がいいから、そんにゃにいじらなくてもいいにぇ。ふふ、腕が鳴るにゃ。」
訳が分からないうちに、しているかしていないのか分からないほどの薄い化粧を施して、確実にすっぴんより可愛くなったメイクが完成した。
ミー姉ちゃん、凄い!
感動が追い付く間もなく、今度は自分の部屋へ直行した。
服はメイド服が三着、あと、アリアンナ様がセイナリアに来たら休暇をあげるから、ちゃんとしたお洋服を買いなさいと、御給金に上乗せしていただき、はじめて仕立ててもらった服がある。
「あら、可愛い上下とブラウスにぇ。」
淡い空色をのジャケットと、白いブラウス、スカートは色をジャケットに合わせたフレアスカート。
私は合わせてみた服をミー姉ちゃんに見せながら聞いてみた。
「ミー姉ちゃん、どう?おかしくない?」
「その服は大人っぽいにぇ、おにぇえさんのローズにアベル様もメロメロにゃ。」
ミー姉ちゃんの言葉を聞いて、私の心は晴れやかになり、思わず笑みが零れた。
「その顔でずっといるのにぇ、きっとアベル様は今のローズを気にぇいってくれるにゃ。」
「うん!」
私は思い切り頷いた。
私とミー姉ちゃんは一緒に玄関ホールに向かう。
そこには、アリアンナ奥様、シャーロット様、リーサちゃん、エレナ姉、リサ、そしてアベル様が居た。
みんなが居る!!!
私は緊張しながらも
「遅くなりました。」
と、言った。
「まぁ、可愛いわね。ローズ。ミーからメイクもしてもらったの?この服はあの時のお金で買ったのかしら?やっぱりボーナスをあげて正解だったわね。」
そう言ってアリアンナ奥様は私服の私を見て喜んでくれる。
「ローズ、今日はアベルを貸してあげるわ。その次は私だわ。わかった!?」
シャーロット様の目つきが厳しい。
シャーロット様が弟君のアベル様を、とても大事に思っているのは知っている。
だから私は
「大事にお借りします。」
と、言った。
そこへ
「おい!お前ら、俺はモノじゃないよ。なに言ってんの?」
アベル様の突込みが飛んできた。
「まあ、まあ、アベル様落ち着いて、初デートでテンションが上がっているのはわかりますから。」
アベル様を諫めるようでいて、からかっているのはエレナ姉。
アベル様は言い返す気力もなく
「はぁ?」
とだけ言ってプイっとそっぽを向いた。
「ローズ、私が付いていくわよ。」
エレナ姉が妙なことを言い出す。
私とアベル様のデートなのに。
「あんた今、私を馬鹿たと思ったでしょ。5歳の辺境伯御子息と10歳の女の子だけで、外に出せるわけないでしょ。お財布どうすんのよ。お貴族様のアベル様にお財布出させるわけにはいかないじゃない。」
あ!そうだった。と思い、反省の色を見せようとする私に、追い打ちをエレナ姉が掛ける。
「まったく、今日のあんたはアベル様のお付きメイドじゃなくて、デートの相手なんでしょ、私がサポートしてあげるわよ。」
えへへ、私がアベル様のデートのお相手?
えへへ。
「大丈夫?この子、頭の中がどこかへ行ったわよ。」
リーサちゃんが酷いことを言った!
「大丈夫よ!リーサちゃん。どこにも行ってません!」
「あら、そう。あれね、ローズがアベルとデートできんのも、ある意味私のおかげね。感謝しなさいよ。」
「もとはと言えば、リーサちゃんがあんな格好で寝てたからでしょ。」
「そうよ、だから私のおかげじゃないの。」
「むー!」
「こら、リーサちゃんいい加減にしなさい。もう駄目よ、アベルのところで寝るとか、裸になるとか。」
アリアンナ奥様が、リーサちゃんを諫めて下さる。
「だから分かったわよ、アリアンナ。パンツくらい履くって。」
「そこじゃない!!」
私と、アベル様と、アリアンナ奥様が思わず突っ込む。
「じゃ、行こうか。」
アベル様が私を促してくださった。
「はい!」
アベル様の横に並び玄関を出ようとしたとき、リサが目に入いった。
リサはニッコリ笑って、小さく手を振ってくれた。
私も手を振る。
アベル様もそれを見ていたんだろう。
「リサに感謝しろよ。あいつがお前の気持ちを代弁してくれたんだ。」
その言葉の意味を考えながら、私たちは馬車に乗り込んだ。
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