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11.アベルくんとエルフの執事。

11.アベルくんとエルフの執事。




 「どなた?」

 と、ロッティーが可愛く尋ねる。


 「ヨハンでございます。中に入ってもよろしいでしょうか?」


 それを聞くとローランド父さんが

 「まずい、もう来ちゃったのか。」

 と何か慌てた風につぶやく、


 それを見たアリアンナ母さんは苦笑いしながら

 「お入りなさい。」

 と、穏やかに言った。


 「では失礼して。」

 と、扉を開けたその前に、背が高く、細身で渋くどこか陰のある顔をした耳の長いエルフが立っていた。


 ヴァレンタイン家執事のヨハンだ。何でも320歳で、100年前からヴァレンタイン家に仕えているんだと。凄いね。

 でも、ノヴァリス王国が建国した1500年以前から大長老は生きているんだから、エルフにとってヨハンはまだ青二才なのかもしれない。


 そんなヨハンは、家事でも戦闘でも帳簿でもなんでもござれという、万能執事なんだそうだ。

 まさに一家に一台だね。



 彼はその立場上そんなに笑顔を見せないが、俺はそんなヨハンの笑顔を見たことがあるんだ。

ある時、ローランド父さんを探しに来たんだろうヨハンは、俺とアンネローゼしか居ない子供部屋に現れた。

 ローランド父さんが居なくて空振りだったんだろうね。


 そんなヨハンは俺たちのいるベビーベッドにツカツカと近づいてきて、ベビーベッドの上から俺たち二人を覗き込むと、陰のある渋い顔からは想像もできないほどの笑顔を見せたんだ。

 相好を崩すとはこういうことを言うんだなと思ったね。


 抱き上げるでも、頬を突くでもなく、ただひたすらに俺たちを笑顔で眺めていた。

 俺はサービスして手を伸ばしてみた。ヨハンはそこに人差し指を差し出してきたので、しっかり握ってやったよ。


 俺に掴まれてヨハンはスゲー喜んでんの。可愛い奴め。


 そして彼はひとしきり俺とアンネローゼをにこやかに眺めると、スッと姿勢を正し、いつもの渋い顔に戻って子供部屋から出て行った。


 あいつは極度の子供好きなのかもしれないな。

 結婚して家族を作りゃいいのに。



 そんなヨハンはローランド父さんに切れ長の目を向けるとこう言った。

 「ご家族とのご歓談中失礼いたします。御領主様、公務が滞っております。」


 ローランド父さんめ、公務をサボりおったな。たまにサボっては役人を困らせているらしい。

 子供部屋に来たエドワード爺ちゃんが、アリアンナ母さんに愚痴ってた。

 アリアンナ母さんは愚痴を聞きながら笑っていただけだったけどね。


 そのローランド父さんは若干苦虫を噛みつぶしたような顔をしてる。


 続けてヨハンはこう言った。

 「それと商業ギルドのギルド長と冒険者ギルドのギルド長も見えていますが。」


 ん?とローランド父さんは一瞬首をかしげて

 「ギルド長が二人そろって登城とは、まったくもって痛み入るね。今度は何の要求だい?予定にはなかったはずだが。」

 ローランド父さんを探しに来たヨハンに悪びれるでもなく答える。


 「彼らが来た内容については存じ上げません。でも二人で来るということは、何か大きな事柄なのでしょう。慌てている感じでしたが。」

 と、業務的にヨハンが答える。


 「うん?あの二人が慌てていたか。あまりいい話じゃなさそうだけど、こちらも急いで執務室に行ってみようかな。ヨハンは二人を通しておいてくれ。あと念の為、ネスとチャールズ騎士団長も呼んだほうがいいな。そうだな、知恵を借りるかもしれないから、一応親父も呼んでくれ。」

 ローランド父さんは姿勢を正し、ヨハンに指示を出す。



 ネスはこの城の文官だ。優秀らしいがローランド父さんが時々サボるので、まあ苦労が絶えないらしい。

 あと口調が文官らしくなく砕けた感じだ。俺はそういうの嫌いじゃないよ。


 チャールズ騎士団長は、ヴァレンタイン辺境伯領騎士団(ヴァレンティア騎士団)の団長だ。

 武芸に達者で剣と槍に秀でているとの噂だ。まあ俺は見たことないんだけどね。

 ただ剣の腕はローランド父さんとエドワード爺ちゃんにかなわないらしい。



 ちなみに、ローランド父さんは辺境伯を継ぐまで、A級冒険者だったそうだ。

 A級冒険者がどれだけすごいのか俺にはよくわかんないけど、ノヴァリス王国内に10人いるかいないかって話だね。

 そのA級冒険者に剣一本で成りあがったと言うことらしい。凄いことなんだろうね。


 ロッティーが生まれて、エドワード爺ちゃんも辺境伯の爵位をローランド父さんに譲ったから、冒険者家業を廃業したんだってさ。


 そして、アリアンナ母さんもA級冒険者だ。こちらは超一流の魔法使い。

 うん、二人の馴れ初めがなんとなくわかるね。

 どうせ一緒のパーティーでイチャコラしてたんだろ。

 俺にはわかるぜ、ふん!


 エドワード爺ちゃんは曽爺さんが辺境伯の爵位を譲るまで、王室近衛騎士団の団長だったそうだ。

 剣では敵無しって、国中の評判だったみたいよ。よくわかんないけどすごいね。



 「承知いたしました。では皆様、失礼いたしました。」

 と、ヨハンは深々とお辞儀をし、扉の方へ踵を返す。


 「また忙しくなりそうだね、夕食までに終わるよう頑張るよ。シャーロットも頑張って。」

 と、言ってアリアンナ母さんを抱き寄せ軽くキスをしてから、ヨハンとともに出て行った。

 な、こういうことを自然にできるんだよ。まったくもってキザな男だ。チクショーメー。


 ローランド父さんたちが出て行って、ポッカリと間が空いたが、すぐアリアンナ母さんは

 「さあ、練習の続きよ。夕食まで頑張ってみましょう。」

 ロッティーを鼓舞する母さん。


 「うん、父様に言われたのですもの、頑張るわ。」

 そうロッティーは返した。


 俺はというと

 「アベル様。ちょっと早いですけどアベル様はご飯にしましょうね。」

 と、マリアさんは俺を抱き上げると、自らの服をはだけさせ、その薄い胸に俺を押し付けた。


 うん、まあ、これはこれで。

 美人さんの胸だしね。



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