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96.アベルくんとローズと諍い。

96.アベルくんとローズと諍い。




 王城の呪術騒ぎから帰って疲れた俺の幼少の身体は、ローズに清拭してもらっている最中に眠ってしまった。


 風呂に入りたかったんだけど、母さんが先に入っちゃったから入れなかったんだよ。

 うちの女性陣の風呂は長いからね。


 一緒に入ろうとは言われるけれど、もう一人で入れる歳だし。

 身内の裸と言っても、俺の精神が大人で他人だから、あれがアレになってしまう場合があるのでね。

 5歳の身体と言えどちゃんと反応するのだ。


 それも気まずいでしょ。

 って言いながら、ローズに清拭頼んでいる俺はいったいなんだって話だね。


 朝起きて枕に目を移すと、リーサが相変わらず薄いワンピース姿でおっぴろげて寝ていた。

 神として寝巻用のワンピースを着ている姿は、まだマシなのかもしれない。


 デフォで全裸ってイメージがするもんね。

 つか、神が寝るって状況も笑えるが。


 事細かく観察したわけではないが、リーサの身体は胸に確かな双丘は適度に盛り上がっているし、股には茂みが生えている。

 それがおっぴろげているんだから、とある器官も見えるわけだ。

 神だから、ふt…いや、両性具有かと思えば、やはり女神というだけあって女性のそれだけだ。


 この世界の女性は、体毛の処理はあまりしないから、脇もかすかに生えている。

 造形としては、まさに神なんだから、完璧そのものなのではないだろうか。


 その身体が普通の人間サイズなら、俺の通算39歳としての大人の意識は興奮も覚えよう。

 しかし、リ〇ちゃん人形サイズだからね。

 何が見えようと興奮は覚えないのだ。


 覚えないのだ!!

 

 長々とリーサの肉体観察に時間を取ってしまった。

 などと思っていると、ノックの音とともにローズが入って来た。

 

 「おはようございます、アベル様。」

 ローズは俺の着替えを手に、俺に微笑みかけ、お辞儀をする。

 

 「やあ、おはよう、ローズ。」

 俺は伸びをして、あくび交じりに挨拶をした


 俺の衣服をベッドに置こうとしてのだろうローズは、ベッド上のリーサを確認し急に興奮しはじめた。

 「あ!リーサちゃんたらそんな恰好で寝て!アベル様見ました!?見たんですね!」

 とまくしたてる。


 「そりゃ見るよ。見えるんだもの。」

 俺は冷静にローズに答えた。


 「女の子の大事なところを見るなんて!何とも思わないんですか!?」

 ローズは更にヒートアップする。

 「思わないよ。女性はみんな付いてんだろ。」

 俺は食って掛かるローズにあくまで大人の対応だ。

 5歳だけど。


 「うるさいわね~、なに~」

 寝ぼけた声でリーサが起きだした。


 「お前がそんな恰好で寝ているから、俺がローズに怒られてんだよ。」

 「そんな恰好って何?」

 そう言ってスカートがまくりあがり、自分がおっぴろげていた下半身を凝視するリーサ。


 「あら、おほほほ」

 リーサはスカートを下げながら、取り繕うとする。


 「リーサちゃん、そんな恰好でアベル様のベッドで寝ないで!もう!!」

 いつになくローズはかんしゃくを起こす。

 気持ちはわからんでもないから、俺はそっと放っておいた。

 

 「ローズ、大丈夫よ。私のこの身体とまだ5歳のアベルじゃ何も起きっこないもの。ね、アベル。」

 「まーねー。」

 俺がこうリーサに返事をしたら


 「もう、信じらんない!!」

 そう言って俺の着替えをベッドに放り出し、ローズは部屋から出って言ってしまった。


 「あーあ、アベルが怒らせた。」

 「もとはと言えば、お前が悪いんだろ?まあ、仕方がない、早く着替えて食堂に行こう。また母さんに叱られる。」


 リーサは肩をすくめ、いつもの指パッチンで着替えた。

 「ま、確かにアリアンナは怒らせたくないものね。」

 リーサは一言付け加え、俺とともに部屋を出た。


 食堂に入ると、父さんとロッティーは居るのに母さんが居なかった。

 はて、どうしたんだろう?

 などと思っていると、食堂のドアが


 「バタン!!」

 

 と、派手な音を立てて開き、鬼の形相の母さんが入って来た。


 なんぞ?

 俺は無暗に殺気を向ける母さんに、おびえていると


 「アベル!ローズに何したの!?泣いているわよ!」

 あちゃー、泣いちゃったか。

 

 怒っただけかと思ったが、感情が高ぶり過ぎたか。

 まあ、ローズもたかだか10歳の女の子だ。

 そういう事もあるさ。


 「なんとか言いなさい!アベル!」

 おっと、こちらの対処の方が先だった。


 「母さん、事の顛末を言うとね。」

 俺はそう導入を付けて、さっき有った事をそのまま母さんに報告する。


 「もっと、女の子に言い方ってモノがあるでしょ?あんたはどこかで達観してると言うか、擦れているんだから、まったく。」

 俺の話を聞いて落ち着いたのか、母さんは俺に嫌味を一言言うと、パンを取ってむしゃむしゃ食べ始めた。


 母さんはエレナが用意した水の入ったコップをワシっと掴み、ぐいっと一気に全部煽ると

 「リーサちゃんも悪いわよ。子供の部屋とはいえ、薄着のワンピース一枚でベッドにもぐりこむとか。」


 「大丈夫よ、アリアンナ。私とアベルに何か起こることなんてないってば。」

 呑気にリーサが言った。


 「そうじゃ無いの、違うのよ。アベルが家族以外の裸を見るのがダメって事よ。わかる?大人になって、変な癖が付いたら困るでしょ?」


 「ブーーーーーーッ!」


 母さんの言葉を聞いた俺は、含んでいたお茶を盛大に噴出した。

 上座の方で、父さんもゲホゲホやっている。


 隣に座っていたロッティーが

 「嫌だ、アベル汚い!もう!着替えなきゃ。」

 そう言ってそそくさと出て行った。


 あれは今の話が恥ずかしくて出て行ったのだろう。

 俺にはわかる。


 エレナとミーが懸命にテーブルの上を拭き始める。

 「ごめんね、二人とも。母さんが突飛な事言うから吹き出してしまった。」

 

 「なによ、突飛な事って。あんたのためを思って言ったのよ。」


 俺を呼ぶときにあんたになっているのは、貴族のアリアンナ・ヴァレンタインじゃないく、冒険者のアリアンナ・ヴァレンタインの時だ。


 「分かったわよ、アリアンナ、パンツぐらい履くわ。」


 「そこじゃない!」

 俺と母さんが同時に突っ込む。


 「なによ、二人で。じゃどうすればいいの?」

 リーサは膨れて抗議をする。


 「母さん、リーサ頼むよ、俺はローズの様子を見てくるから。」

 「ちゃんと謝んのよ!」


 何をだよ。


 内心はそう思いながら


 「はい、そうするよ。」



 そう言って俺は食堂を出た。


ここまで読んでいただき、有難うございます。

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