インターリュード Ⅱ
インターリュード Ⅱ
「―――これでその夜の話は終わりです。コンビニで朝食を食べた後はアパートに戻って二人とも昼まで眠っていました」
斜め向かいに座る白瀬先生は僕の話に相槌を打ちながら手元のキーボードで入力している。
先生は話を聴くときじっと目を見つめるが、こっちが少し落ち着かなくなる頃合いに視線を外す。大体3秒見つめては2秒、PCの画面を見るの繰り返しだ。
その2秒が終わった後、僕は言った。
「僕の話を信じてくれますか?」
「信じるわ」
先生は優しく微笑むとまた3秒間見つめた後、PC画面に目を移した。
「君が見たもの、ええっと永井かふかさんも同じものが見えるんだっけ? それらはきっと本当のことだし、きっと意味があることなのよ」
「妄想かもしれませんよ」
「妄想なんてものはこの世にはないわ。虚構もね。人が視えるものには必ず因果関係がある。それは自然法則で説明できるものもあれば、医学や心理学で説明できるものかもしれない。いずれにせよ、人間は自分と全く関係ないものを一から想像することなんて不可能なの。神様じゃないんだから」
思ってもみなかった理論武装に僕の方が頷くしかなかった。確かにその理屈なら僕が何を言ったところでそれは先生にとって真実なのだろう。
「でも、あの女の子の件に僕たちが関わっていたことは秘密でお願いします。その、母さんをあまり刺激したくないので―――」
「しないわよー。クライエントの秘密をちゃーんと守りますので。まあ話を聞く限りではいくつか法を犯しているみたいだけど民法の範囲内だし、通報義務はないっしょ」
だから、私には関係ありません♪ と形のいいバストを張る先生。
本当に大丈夫なのか、この人!?
そんなことを思っていると先生はヤフーニュースを開いていた。数日を経ているのでさすがにトップ画面にはないものの、それでも何回かクリックすればモール型ショッピングモールで行方不明だった女児が3日ぶりに近所のコンビニで発見された記事は見つかる。先生は少しの間無言でその記事を読んでいたが、ふう、とため息をつくと無意識にこんなことを独りごちた。
「結局、犯人は誰なんだろうねえ」
「…………」
チョコレート色のショートボブがふわりと揺れると僕を見つめる。
「ねえ、×××ちゃんから犯人のこと聞いていないの?」
1、2、3、4、5…………、
先生はまだ僕の瞳を見つめ続けている。




