第五章(2) 不思議なお客様
お店はリンゼイさんのお陰か、女性客が増えました。女性客への接客はリンゼイさんが全て引き受けてくれているので、私はめったに女性客の接客をすることはありません。
けれど、この一週間は、ケーキを買うだけの女性の方が私をじーっと見ているのです。流石に気になってしまった私は、彼女の接客をすることにしました。
「ご注文はお決まりでしょうか?」
「・・・・なるほどね」
彼女はそうつぶやくと、何も注文すること無くお店を出ていってしまいました。
「あのお客さん、ずっとメイさんを見てるから気にはなってたんだけどね・・・・」
一日のお仕事が終わって、帰る支度をしている時、店長さんにそう声をかけられました。
「メイちゃん!何か被害は受けてない?」
「何もされていません。大丈夫です」
「それは当たり前なのよ!」
何もされないのが当たり前。そうであってほしい。私だって、本当は怖いから。
「お父さん!メイちゃん、心配だよ〜」
「そうだけど、メイさんに休暇を与えるわけにはいかないんだよ。メイさんが生きていくためだからね・・・・」
そう。何があったとしても、私はここに働きに来ないといけない。お二人に、心配をかけてしまうから。いつか、そんな日が来てしまうとしても、それは決して今ではないから。
「何かあったら、すぐに言うんだよ?」
「もちろんです!」
お二人の心配が、とても嬉しくて、同時に、お二人を騙していることが後ろめたくなるのでした。




