第四章(10) ハルの奥さんへの疑問と僕に出来ること By スタンリー・エリオット
「奥さん、貴族令嬢だよね?」
「そうだ」
貴族令嬢ならケーキの一つや二つ食べることは日常なはずだし、社交場に顔を出していたのなら、あのカフェ程度のクオリティの料理は普通に出てくるだろう。
だとしたら、何がそんなに奥さんを驚かせたんだろう?
「とりあえず、奥さんがケーキを好きなことはわかったんだよね?家の料理人に頼んで、毎日作って貰えば?」
「断られた」
「は?」
奥さんがケーキが好きになのか甘いものが好きなのかは分からないけれど、好きなものが分かって良かった。と思ったのに、それを作るとこを断られるとはどういう事だろう?
「料理人にケーキを作ってもらえるように頼んでおく、と言ったら断られたんだ」
断られたことはわかった。それにハルが傷ついたことも。
「何で断られたわけ?毎日は嫌、とか?」
好きなものでも毎日は嫌かもしれない、と僕は思った。
「特別じゃなくなるから、と」
「え、それが理由?」
「ああ」
特別。ケーキが?
え、あ、そういう事?
でも・・・・
「え、ってそんなに意外か?」
「いや、ハルが奥さんに始めて買ったケーキで、一緒に食べた特別感を忘れたくないってことなのかな〜って思ってさ!それだったらほら、普通の仲良し夫婦みたいだな〜って」
そう言うとハルは顔を真っ赤にした。
「奥さん、本当は寂しいんじゃない?少しは家に帰る機会、増やしたらどう?」
今日会ってみて分かった。
奥さんは、仕事が忙しくて家に帰って来れないっていう夫に寂しいから帰ってきてほしい、なんて言えそうな人では無いことが。
だから、僕に出来ることはハルを家に帰らせることくらいだった。
「・・・・そうする」
ハルは珍しく素直にそう言った。
僕はそのハルを見て、僕はやはり今日来て正解だったと思うのだった。




