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第四章(9) ケーキに泣くハルの奥さんの話 By スタンリー・エリオット

「あのケーキ、泣くほど美味しいと思うか?」

乗っている馬車が屋敷の敷地内から出た時、ハルが僕に話しかけてきた。

「え、何の話?」

「ケーキの話だ。美味いと思うか?」

いや、僕食べてないんだけど・・・・?

あ、いや、そんなことよりも!

「ハルが美味しいと思ったから買ったんでしょ?」

ケーキは食べていないから美味しいかどうかわからないけれど、あのカフェの料理はとても美味しかった。

だから、ハルは奥さんにケーキを買ったんだと思っていたけどな・・・・

「実際、美味かった」

「なら良かったじゃん!」

「だけど、泣くほど美味かったかどうかはわからん」

「え、奥さん泣いたの?」

さっきから泣くほどなのか、とか聞いてくるけど、奥さんが泣いたってこと?あのケーキで?

「ああ」


話を聞くと、あの後ケーキを奥さん自身で選んで食べることになったらしい。

「目を輝かせて、真剣に選んでいるように見えた」

「いや、そんなことはいいから。その先を教えて」

急に惚気だすから困る。

奥さんのこと、今まで放っておいたくせに、小さいことまで見ている。

もしかして、ハルは、本当は奥さんが好きなのか?


「一口食べたら泣き出した。理由を聞いたら『美味しすぎて』と言っていた」

「ハル的にはそこまで美味しかった訳ではないの?」

「まぁ、美味かったけどな。俺はそもそも料理を食べて泣く意味が分からん」

「そ、それは僕も経験したことは無いけど・・・・」


僕ら公爵家の人間は、小さい時から不味い料理で育ってきたはずもない。

こないだみたいに外出先の料理が不味くない限り、不味い料理に出会うことすらない。


奥さんは貴族令嬢なはずなのに、どうして泣けたんだ?

ただの、少しおいしいだけの、庶民のお店のケーキに。


そう思った時、僕は一つ引っかかることがあった。

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