第四章(3) メイさんのために By リンゼイ
「ねえ、君が噂のメイちゃん?」
今日も今日とて、いかにもな御貴族様がメイさんに話しかけています。
「私はメイですが、何か御用でしょうか?」
「君、僕と一緒に食事しよ」
そのお客様はメイさんの腕を掴んで自分の隣に座らせました。
「そ、それは・・・・」
「お客様、メイさんは仕事中でございます。何卒、ご理解を」
「そう。メイちゃん、君の御主人様にこれを渡しておいて」
お客様は今日は諦める、というようにメイさんに名刺を渡していました。
「あ〜、もう!どうしてああゆう客しか来ないのよ!」
「も、申し訳ございません」
閉店後、ついつい漏れてしまった本音がメイさんに聞かれてしまった。
「メイさんは何も悪くない!父のお店を立て直してくれた貴方には感謝しかないわ!」
私は思っていることをそのまま彼女に伝えた。
「ですが、私の身分のせいで、あのようなお客様しかいらっしゃらないのは事実ですから」
私だって、はじめは警戒していた。経営の苦しかった父のお店を立て直してくれた人が奴隷だと聞いた時は、父に何度も説明を求めた。だけど、そんな気持ちも、彼女の働く姿を見て消えてしまった。明日の自分の命があるかですら分からないことはさぞ不安だろう。もし自分が同じ立場なら、まともに働ける気がしない。働かなくて命を落としてしまったとしても、その方が楽だとすら思ってしまいそうだった。なのに、彼女はいつも笑顔だった。お店に来てから帰るまで、一生懸命働いてくれている。その姿に私は胸を打たれた。
「身分なんて私は気にしてない!私はメイさんを身分で見ているようなお客様には一切容赦しませんから!」
身分意識は勿論大切だけど、彼女を商品として見る人を黙って見ていられない!
「リンゼイさん・・・・。ありがとうございます」
彼女が明日も生きる為には安定した給料を払う必要がある。そのためにも、どうにかして普通のお客様を増やさなければ!
父と毎日のように相談を重ねる私なのだった。




