第三章(8) ドレスの考え直し By ハロルド・レイルズ
「自分の贈ったドレスが着てもらえていないことに傷ついた?」
そうスタンに言われて、俺はスタンを睨んだ。
図星だったからだ。
女はパーティ用のドレスを好むと思っていた。彼女も喜んでくれていると思っていた。だけど、昨日彼女が着ていたドレスは、パーティ用の派手なものではなく、どちらかといえば質素なドレスだった。そして、パーティ用のドレスはリメイクされ、孤児院に寄贈されていた。そのことに、自分でもよくわからない程に傷ついていた。
「しょうがないじゃん。ハルが今まで奥さんのことを知ろうとしなかったからだろう?」
そう。今まで、知ろうとしなかったから・・・・いや、違う。知りたくても知ることを怖がったのだ。
「次贈るドレスを考え直すとかさ、落ち込んでる暇があるんだったらなんかしたら?」
そうだ。今回、俺は少しだけだが彼女のことを知れた。
考える。何が彼女が着るドレスは落ち着いた色の、どちらかと言うと質素なもの。
「やっぱり、ドレスを一着増やそう!」
「は?」
「着るドレスは自分で選べばいい。着ないドレスだからと言っても、孤児院の子供達が楽しみにしている以上、贈らないわけにもいかないだろ」
昨日、軽く断られたような気がするが、そんなことは一旦忘れることにした。
それに、たとえ彼女が質素なドレスが好きだと言っても、そのドレスで公の場に出ていくことは出来ない。いつ公の場に連れて行ってもいいように、ある程度のドレスは持っていてほしかった。
「ま、まあ、好きにしたら?」
そういうスタンは少し変な顔をしていたが、反論してこなかったので俺は何も気に留めなかった。
そして、この時、彼は忘れていたのだ。
自分が過去に公の場に出る必要はないと妻に言っていたことを。




