第三章(1) 増えるお客様、帰るお客様
私がお店で働きだしてから早数日が経過しました。お客様は日に日に増えていました。
「お嬢さん、バイト?」
「はい」
「何かご馳走してあげよう。何がいい?」
お年を召されているお客様はよく、私にご馳走してくださろうとなさいます。
「お気持ちはありがたいのですが、主様にお許しを頂けません。お気持ちだけ、受け取らせて頂きます」
「主様、ね。明日もお嬢さんに会うために、ご馳走するのは辞めておこうかね」
「あ、ありがとうございます」
「その代わり、明日も何事もなかったら、ここで働いていておくれ。明日も必ず来るから」
「はい。お待ちしております」
こんな会話であれば、カフェで働くというのも楽しいだけだと思うのだけど、もちろん、そんなはずもなく、私が接客をしようとすると怒って帰られる女性客も多いのです。
それを見ていると、申し訳ない気持ちで一杯になります。
「メイさんのお陰でリピート客が増えて、本当に助かってるよ」
「で、ですが・・・・」
「お客さん帰っちゃうこと、気にしてる?」
帰られるお客様もいらっしゃって、と私が言う前に店長さんにそう言われてしまいました。
「は、はい。私を見て、帰られる方が多いと感じましたので。大変申し訳なく思っております」
やっぱり気にしてたか〜、と店長さんはあまり気にしていないかのように言いました。
「あの手のお客さんはみんな、プライドが高いんだよ」
「プ、プライド、ですか?」
「そう。だから、バイトの売っている物が買えない人もいるんだよ」
それは、私のような身分の人が偏見から思ってしまったり、生まれた時から教えられた身分意識であって・・・・
「身分意識と言われればそれまでなんだけどね。僕は別に、買いたくないのなら買わなくていいと思っているんだ。買っても食べてもらえないのなら、喜んで食べてくれる人に買ってほしいから」
その言葉を聞いて、店長さんは本当にいい人だなぁと思いました。店長さんのお料理は、店長さんが作るからこそ、美味しいのではないかと、私は思ってしまったのでした。




