第ニ章(6) 譲りたくない By ハロルド・レイルズ
「ハルの奥さん、僕に譲って?」
「・・・・は、はぁ?!」
こ、こいつ、急に何を言い出すんだ?頭でもおかしくなったのか?一度病院にでも連れて行くべきか・・・・。
スタンの言葉を理解した俺が一番に思ったことはこれだった。
「いいじゃん。譲って」
「駄目だ。絶対お前には譲らん」
「僕以外には譲るの?」
「・・・・なぜそうなる?」
「僕だって、公爵の地位があって、騎士団副団長。それに、ハルよりは妻を一生大事にする自信ある」
確かにこいつの令嬢人気は絶大だ。高スペックなのに未だに未婚ということで沢山の令嬢から縁談の話が来るとのこと。
「譲らない」
「じゃあ、お金払ったら譲る?」
「・・・・お前、殴っていい?」
仕事とか、考えられなくなっていた。こうなっているのは全てこいつの変な質問のせいだ。
「十倍出したら?」
「・・・・今から騎士団にお前の悪事をバラしてくる」
「ねぇ、そんなに大事なら何で会わないんだよぉ・・・・」
大事、ねぇ・・・・。
「彼女には、彼女の良いように生活してほしいんだよ」
「え?」
「そこに、僕の場所は無いんだ」
例え、前に自分をいい男だと思って欲しいと、思っていたとしても、今はそうは思わない。ただ、彼女の様子が知れるのなら。
「あっそ」
さすがのスタンも僕に呆れたようだ。
はぁ、やっと仕事が出来る。
「けど、ずっとここに寝泊まりしてたら駄目だ。わかったな?」
あいつはそれだけ言うと、出ていった。
スタンの言いたいことも分からないことは無い。結婚して約一年、ずっとほったらかしている。思い出したが、最後に会ったのは結婚式の日だ。彼女に触れたのは結婚式でのキスが最後。どれだけ大事に思っていようが、自分の場所を勝手に僕が無いと思っていようが、僕が彼女を避けていることに変わりはない。そこまでわかっておきながら、全く行動を変えることが出来ない。
結局、いつもドレスを贈る。
少しばかりの謝罪と想いを込めて、今日もドレスを注文した。




