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第ニ章(1) 熱意を伝えます

「この店で働きたい?」

「はい!」

「本気か、嬢ちゃん」

「もちろんです」

「けどな、今人を雇う金は無いんだよ」

朝からカミラの手を借りて屋敷を抜け出し、一人でお店に来た私は、店長さんの言葉に頭を悩ませました。

「・・・・とりあえず、身分証と履歴書、見せてみな」

そういう店長さんに私は昨日準備した書類と今朝カミラから受け取ったカードを渡しました。

「・・・・嬢ちゃん。悪いことは言わない。もっと給料良いとこ紹介するから、そっち行きな」

「い、嫌です!」

「ここじゃあ、主人に満足な金なんて渡せない。嬢ちゃん、死ぬぞ?」

この人たちは、奴隷の運命を知っている・・・・奴隷が働いていることは当たり前の事なのね。

そして、優しく教えてくれている。

給料が良い所で働いて主人に渡すのが仕事の、働ける奴隷の、役割だと。それが当たり前で、その役割を全うしようとするのが当然だと。

だけど、私は違う。


「私、働くならここしか嫌です」

「何で・・・・」

自分の命より大事な理由なんて無い、そう言いたいのだろう。

だけど・・・・。

「母との思い出のお店なんです!母が死ぬ数日前に一緒にここでケーキを食べて、その後母は病に倒れてすぐ亡くなりました。私が見た母の笑顔は、ここで見たものが最後でした」

「そ、そんなこと言われてもな・・・・」

こんな話を一方的に言われても、店長さんはどうすることもできないでしょう。

「嬢ちゃん死んだら、その人も悲しんじゃうぞ?」

「・・・・皆、いなくなりました。先輩達がいなくなって、今では私が一番先輩なんです。御主人様にいなくなった人の事を聞くことはできません。でも、私ももうすぐいなくなるんじゃないかって感じてます。だから、最後にここで働きたいんです!『私の幸せ』があった場所で少しだけでも働けたのなら、いなくなる時に『幸せ』を感じられる気がするんです」

身分証の本来の持ち主は、母を亡くし孤児院に捨てられた女の子だった。昨日カミラに聞いた持ち主の話と私の生い立ちを話すと、ぴったり動機ができてしまったのだった。

そう、これは私の話。殺される時に私の一番幸せだった時の事を思い出せるように。死後の世界で母に、あのお店で働いたよ!って言えるように。

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