序章(1) お飾り妻の日常
私は今、カミラという一人の女中と共に自室の掃除をしていました。
なぜならそれは、不用のドレスを探すためです。私はこの公爵家に嫁いでから、いつも、不用なドレスをリメイクして孤児院に寄付していました。
私がこのレイルズ公爵家に嫁いで間もなく一年が経とうとしています。しかし、私は結婚式のその瞬間以来、夫であるレイルズ公爵に会っていません。結婚式の後すぐに公爵はお仕事に行かれたので、初夜の夫婦の時間はありませんでした。食事も寝室も別で、パーティなどへの出席もしなくていいとのこと。私はいわゆるお飾り妻になってしまったのです。
それにも関わらず、必ず月に二着、ドレスが贈られてくるのです。普段、屋敷で着れそうな物なら良かったのですが、大半がパーティ用のドレスでした。捨てることも考えましたが、キレイなドレスなので、得意な手芸でリメイクすることにしたのです。
「ふぅ、これでドレスは全て出し終えたわね。どのドレスで作品を作るか考えないといけないわね、迷うわ」
「さようでございますね」
「早く作ってしまわないとね」
「そうですね、あと半年しか生きられませんものね」
「え?」
「お忘れですか?」
急に言われたことに戸惑う私に、カミラが見せてきたのは、小箱の中の小さな瓶でした。