ニルスとの出会い~愉快犯を籠に入れる為に~
食事中の零に、慎次は声をかける。
いつニルスに出会ったのかを──
「おい、所長」
「何だ荒井」
食事中の零に荒井が声をかけて来た。
「ニルスの野郎と出会ったって一体何処で出会ったんだ」
「……」
零は食事を一通り食べ終えてから口を開いた。
「奴が人を異形にしようとしていた遊びの最中に出会ったよ」
「んだと?」
「──話をしよう」
零は語り始めた。
「骨董品が不気味?」
「はい、主人の買った骨董品がどうも不気味で……今船に積んであるんですが、その船でお披露目会をやるのをどうか止めてほしいんです」
「わかりました、瑞穂留守を──」
「私も行きます! 零さんだけだと不安ですから!」
「……くれぐれも無茶はするなよ」
「はい!」
「ではご夫人、案内を」
「はい」
身なりの良い婦人は零と瑞穂と共に船のある場所へと車で向かった。
「この船の中にですか?」
「はい、今は鍵のかかった部屋に保管されているそうですが……」
「おお、我が妻よ! どうした? は、もしや骨董品を見たいという御方ですかな?」
どこか目がぎょろりとした身なりのよい男が現れてそう言った。
「ええ、気になりまして」
「今はお見せできませんが、明後日の夜に海の上でお披露目を致します!」
「そうですか」
「では、船へどうぞ、客室は幸い空いておりますので」
零は男が背を向けたのをみて眉を潜めた。
「奥様、旦那様はもう骨董品に魅了、いや、洗脳されております」
「なっ……」
「機会を見て骨董品をどうにかします、それと同時に旦那様も」
「……お願いします」
夫人と別れ、零達は船に乗り込んだ。
船には複数の若い男達が乗っていた。
「瑞穂、私から離れないように」
「はい」
そう言って忠告してから、零は目を見開いた。
黒い髪に赤い目浅黒い肌の黒いスーツの男がこちらをみてにたりと笑ったのだ。
「……確実にヤバい案件だな、君を置いてきた方がよかったかもしれん」
「え?」
そう言った直後悲鳴が聞こえた。
「だ、誰かきてくれー! 亮二が死んでる!」
「‼」
現場に向かうとワインの瓶が置かれたテーブルに突っ伏すように男が死んでいた。
不気味な男も着いてきた。
零は死んだ男の体を見ると体に鱗のようなものができているのに気づいた。
不気味な男はワインを調べてにたりと笑った。
「毒が入ってますね、このワイン。このワインを飲んで死んだのでしょう」
「お前、何者だ?」
「ニルス、探偵ですよ?」
「奇遇だな、私も探偵だ」
「平坂零さん、でしたね。この界隈では有名ですよ」
男──ニルスはにたりとわらった。
零は男の様子で、彼が実際は探偵などではないことを見抜いていた。
が、あえて言わなかった。
そしてその夜──
船の上部が騒がしいと、寝ている瑞穂を起こさず、一人ベッドから出た。
すると海へと落ちようとする複数の若者がいた。
「何をしている⁈」
零は若者達の服を掴み止める。
「止めないでくれ、このまま化け物になるくらいなら死んだ方がマシだ!」
「いやだ、化け物にはなりたくない!」
「なんでこんなことに!」
若者達は目がぎょろりとなっており、皮膚はうろこ状になっていた。
「マヨイ! フエ!」
「う!」
「呼ばれて来ました、イエーイ!」
「ふざけてないでどうにかしろ!」
ふざけモードのフエに怒鳴ると、フエは肩をすくめてその場から居なくなった。
マヨイは若者達を触手で包み込み「治療」を開始した。
「零さん、件の骨董品破壊しようとしたら、おじ様が邪魔だったからマヨイの使い魔に包ませてから壊して消滅させたよ」
「よくやった、どんな物だったんだ?」
「んー簡単に言えば、海の上で見ると、見た人達を半魚人に変貌させる異形が作ったものだね、おじ様は魅入られてたけど、骨董品こわしたし、マヨイの治療もあるから大丈夫だと思う」
「そうか」
「それより」
フエはぎろりと暗闇の中に居た男を睨み付けた。
「ニルス、アンタだね、焚き付けたのは」
「好奇心旺盛な彼らの好奇心を止めなかっただけですよ、我が主」
「二度とすんな」
フエは吐き捨てるように言った。
そして少し考える仕草をフエはして──
「ニルス、今度からアンタは零さんの探偵事務所で働け」
「主が言うならば……」
ニルスはにたりと笑って頭を下げた。
「フエ⁈」
零は驚愕の声を上げる。
「大丈夫、こっちからも派遣するから」
「なら、いいが……」
零は不安そうにいった──
「──と言うのがニルスがこの探偵事務所にいる経緯だ」
「おい、フエ何してんだよ。あんな爆弾ここにいさせるとか」
「失礼だなーこれでも考えたんだよ、ニルスの被害者を減らす為に」
フエが天井からぶらんといつもの如くぶら下がって出現した。
「第一その後すぐレオンを派遣したし」
「そうなのか?」
「ああ、事務所の前に立っていてフエから派遣されたと名乗ったよ」
「疑わなかったのか」
「ああ」
そう言うと、荒井は額を抑えた。
「どうした?」
「お前の危機管理能力が怖いんだよ」
「……」
「フエの名前で通したら、ヤバい異形でした、なんて事案あったんじゃねぇの?」
「いや、それはない」
「異形連中は私の名前を呼べないからね、ニルス以外」
フエは着地し肩をすくめる。
「俺が守るしかねぇか……」
「どうした?」
「何でも無い、さっさと歯磨きしてこい」
「? 分かった」
歯を磨きに行く零を見つめる荒井を見て、フエは肩をすくめた。
「面倒くさい男だねぇ、慎次は」
「うるせぇ」
フエに慎次は悪態を吐いた──
ろくでもないですね、ニルス。
なので零さんとフエが手綱握っている状況です。
それ以前はフエも関わりたくない案件の相手だったのですが、そういう状況ではないので。
ここまで読んでくださり有り難うございました。
次回も読んでくださると嬉しいです。




