異形の子等の一日~異形の子等はそれでも~
異形の子達のとある一日。
幼い異形少女達と銀と名付けられた青年は人形遊びをしていて、それを周囲がみつめていた──
「おにんぎょあそびしよ」
「うん」
「うん」
「銀おにいちゃんもいっしょでいい?」
「うん」
「うん」
リラとエルとマヨイは、リラの用意した人形で人形遊びを始めた。
それに混ざって虚ろな目をしている銀。
しかし、それが当たり前のように人形遊びは行われていた。
「……」
「……」
それを複雑そうな表情で見つめる隼斗と、微笑ましそうに見つめるジン。
「何をそんなに複雑そうな顔をしてるのですか?」
「そんなにしているか?」
「ええ」
「……」
ジンに言われ、隼斗は自分の体を抱きしめた。
「怖いんだ、マヨイが他の者の所にいるのが」
「怖い、ですか」
ジンはその言葉を考えて口にした。
「その感情は理解はできます、ですが私はエル様の幸せが第一ですので」
「……」
「エル様が私を食べたいと言ったら喜んでこの身を捧げましょう」
「……お前も相当だな」
「二人とも相当だけど?」
「「⁈」」
フエが天井からぶらんと頭を下にしてぶらんとぶらさがって現れた。
そして回転しすとんと着地する。
「フエ……」
「フエ様……」
「隼斗さんはマヨイに見捨てられるのが怖い、ジンさんはエルと引き離されるのが怖い」
「「……」」
心の内を指摘されて二人は黙り込む。
「あの子らは子どもだもの、多分一生」
「何故そう言える?」
「エルは分からないけれど、マヨイに至っては半世紀以上ずっとあんな調子なのよ、リラも、急に大人になるなんて想像つかないわ」
「半世紀、以上」
「自分より幼いと思ってたでしょう? でも残念貴方よりマヨイの方がずっと年上よ」
「だから戦争が起きた時、マヨイは引きこもった、マヨヒガの社の里の人間は口を閉ざした」
「マヨイは本来争いが嫌いなのよ」
そう言ってから隼斗を見る。
「今、エルが戦いに出ているのは隼斗さん、貴方が傷つかないようにする為なの」
隼斗の目が見開かれる。
「わかった、私が度々貴方を怒ってなんかする理由? 貴方が変な事している間、マヨイは嫌いな戦いをしてるからだってこと」
「戦うのが嫌なら、側に居て欲しい」
「ならマヨイに言ってみればいいでしょう?」
「わかった」
「ただ、遊びが終わってからね」
「ぐむ」
隼斗は立ち上がろうとしたがすぐに椅子に座り直した。
向こうでは未だリラやマヨイ、エル、銀が人形遊びをしている。
「エル様は……どうなのです?」
「エルに取って異形との戦いはどうでもいいのよ、どちらかと言えば信者を捕食する方が重要」
「エル様は悪人の肉を食わねばなりませんからね」
「そう」
ジンの言葉にフエは頷く。
「でも、ジン貴方の肉は食わなさそうよ」
「そうですか」
「美味しい匂いはするけど、食指が動かないみたいな事言ってたし」
「そうですか……」
「食べてもらえないのでしょげないでよ」
ジンにフエが呆れる。
「ジンお兄ちゃんの料理をずっと食べてたいって言ってるんだけど?」
「ずっと料理を作ります」
「即答」
フエは呆れの声を出す。
「私はそろそろ帰るから、んじゃあね」
フエはそう言ってスキップしながらその場から姿を消した。
人形遊びが終わり、マヨイが自室に隼斗と戻ると、隼斗はマヨイにすがりつくように抱きついた。
「マヨイ、もう戦いになんていかないでくれ、俺の側にいてくれ……」
そう言われたマヨイは困った表情を浮かべる。
「それはできないよ、だってわるいことするいぎょうをたおさないとはやとさんみたいなひとがたくさんフエちゃう」
「……」
「それはだめなこと、だからわたしはたたかうの」
「……そうか」
そう言われた隼斗はそれ以上言うことができなかった。
「おにいちゃん、きょうのごはんもおいしいねぇ」
「有り難うございます」
「おにくもおいしい」
エルは肉を頬張る。
ミディアムレアに焼かれた肉を。
「まよいおねえちゃんのおやさいもおいしい」
そう言ってやさいをくちにする。
「デザートはイチゴのゼリーです」
「いちご! いちごすき!」
「デザートですので、ご飯を全てたべてからですよ」
「うん」
エルはぱくぱくとご飯を食べていく。
肉を、野菜を。
悪意に染まった人間の肉を食っている。
「食べたよ!」
「はい、どうぞ」
「んー! イチゴゼリー美味しい」
そう言いながらイチゴのゼリーを食べる。
イチゴと悪意に染まった人間の血を混ぜたゼリーを食べている。
ジンは味見はしない、最初の頃エルに味見をして貰いながら作り今では問題なく作れるようになった。
「わたし、おにいちゃんのごはんずっとずっとたべたい!」
「私もずっとお料理をお出ししたいです」
ジンは微笑んだ。
「エルもマヨイも大変ねぇ」
「……『妹』を構うのは良いが、私を構って欲しい」
「ごめんねー柊さん」
そう言ってフエは柊にキスをした。
柊は幸せそうに目をつぶった。
「私は、みんなのお姉さんだからね」
フエはそう言って静かに目を閉じた。
異形の子等は互いを思いやる。
それが番いを不安にさせることもある。
異形の子らは、やることがたくさん。
それでも、異形の子はそれを良しとする──
異形の子等、番いを持っている子達はやることがたくさん。
でもそれに文句を言う子はあまり居ません、あまり。
ここまで読んでくださり有り難うございました。
次回も読んでくださると嬉しいです。




