異形の姉妹・兄弟~似てない二人~
隼斗はある日、マヨイの為の料理をしていると来訪者が訪れる。
その来訪者はペスト医師のような格好をしており──
異形の子どもたちの多くは、血のつながりはない
稀に、血のつながりのある関係の物達は存在する
けれども、血のつながりがなくとも兄弟と、姉妹と彼らは同類を扱い、親しくする
血のつながりがある場合は、また特別な親しさがそこに存在するが
隼斗が、マヨイの為に料理をつくっていると、ノック音が聞こえた。
玄関の方から聞こえたので、不本意ながら料理を中断して、扉のほうへと急いだ。
がちゃりとドアを開ける。
「はい、どちら――」
見慣れぬ人物に目を丸くした。
白い鳥のような面――ペストマスクに、真っ黒な装束、綺麗な装飾の杖。
まるでペスト医師のような格好の人物がそこにいたのだ。
その人物はカラスの羽のような羽織をわずかに揺らしながら、面の丸く黒い球体で隼斗を見据えた。
「――失礼、マヨイはどこだ?」
見知らぬ人物が、自分の最愛の少女のことを呼び捨てにしたことに、隼斗は内心腹を立てた。
「知らん、場所も知らせず出かけた」
隼斗は嘘ではないが、本当のことを言わずにいると、黒い球体の双眸が、意思をもったように隼斗を見据えた。
「?!」
脳味噌をいじくられるような痛みと、体をいじられるような寒気を感じたまらずその場にうずくまる。
酷い吐き気に、立ち上がれず、過呼吸を繰り返した。
「――そうか、マヨイは――」
「あれ、クラルさん、久しぶり……って、何やってるんですか?!」
酷い苦痛の中、聞き慣れた声の方向を見ると、蓮が驚いた表情でかけより、隼斗の背中をさすった。
「知らない人にいきなりそれはしないほうがいいって私いいましたよね!」
蓮がとがめるように言うと、黒い輝きが少しだけ揺らいだ。
「すまない、つい。マヨイのことだから」
「マヨイちゃんなら畑で作物のお世話をしてますよ、いってきたらどうです?」
「ああ、わかった」
そういうとペスト医師のような存在――クラルはその場から立ち去った。
「隼斗さん、大丈夫……じゃないですよね、よいしょっと」
「おー、どしたの蓮……って隼斗さん顔色わっるー」
クラルが去った反対側から来たフエが、二人に近づくと、蓮と一緒に隼斗を支えて部屋中へと戻し、ベッドに寝かせた。
「あ、料理作ってたのね。仕方ないから仕上げは使い魔にやらせとくわ」
キッチンの様子をみたフエは自信のいびつな肉塊の固まりたちに仕上げをやらせはじめた。
「……あれは、誰だ? マヨイの何なんだ……!!」
ベッドに寝かせられながらいらだちを隠さないように言う隼斗を見て、蓮は何ともいえない顔をして、フエはにやけた顔をした。
「聞きたい?」
「姉さん、そういうのはやめなよ」
「もう、蓮はまじめだなぁ」
フエはベッドに横たわってる隼斗を見てにっこりと笑った。
「マヨイの血のつながった兄妹。兄でもあり姉でもあるの。一応おにーちゃんって呼ばれてるけどね」
「……はぁ?!」
予想すらしなかった答えに、隼斗は思わず起きあがった。
そう、全く似てすらいないし、肉体のどこかに似た要素を備えてる風にもみえないのだ。
名前だってかすりもしてない。
「あはは、最初はそうなるよねー。蓮もはじめて見たときは同じ反応だったし」
「いや、普通そうなりますよアレは」
隼斗は呆然として二人の話を聞いていた。
「クラルはね、見ての通りお医者さんなのよ」
「医者?」
「そう、ペスト医師もクラルの姿をまねたのがきっかけなの、ぶっちゃけペスト医師の始まりはクラルね。クラルが人前に出始めたのは丁度連中が黒死病ばらまいたのがきっかけだったから」
椅子に腰をかけ、なんでもないことのように話すフエの言葉に、隼斗は思わず聞き入った。
「ただ、クラルも『マヨヒガの主』の血筋だからね、有名になったから表になかなかでなくなったのよ。最近はたまーに表に姿見せるけどね」
「クラルさんは基本優しいですが、根っこはシスコンですからね……基本いろんな場所に出て行ってても、マヨイちゃん大好きなのは代わりないですから」
「そんなクラルが、マヨイがいつの間にか番をもってたなんてしったらどうおもうかなぁ!」
「楽しげにいうのはやめてくれません?!」
波乱が起きるのを楽しみにしているフエに、蓮が嫌そうな顔でつっこみをいれた。
マヨイは広い自分の領域の畑で、色とりどりの野菜と果実を収穫していた。
「う゛――……う゛?」
聞き慣れた足音に、動作をとめ、足音のした方を向いた。
見慣れた白い顔、黒い帽子に、黒い外套、黒いブーツの存在がそこにいた。
「クラル、おにーちゃ!」
マヨイは籠を置くと、そのままその人物――クラルに抱きついた。
「マヨイ、元気にしてたようだね」
「うん! げんき、だよ! あのね、おにーちゃ」
「マヨイ、本当にあの男が番でいいのかい?」
マヨイの言葉を遮って、少しだけ不機嫌そうな声色でクラルは問いかけた。
「? 隼斗さんのこと? あったの? えへへ、うん、いいの!」
「……本当に?」
「うん! 隼斗さん、こころ、こわれちゃってるところとか、いろいろしんぱいなとこ、たくさん! でもね、マヨイのことだいすきだっていってくれるの! だからね、マヨイも隼斗さんのことだいすき!」
「……そうか」
クラルはそういうと、それ以上隼斗に関する話にはつっこまず、マヨイをだきあげると、一緒に籠も抱えた。
「じゃあ、送っていこう」
「うん! おにーちゃ、いつまでここにいるの?」
「しばらくはいるとも、私の部屋にいるから、いつでもおいで」
そして、クラルはマヨイを彼女の部屋へと運んでから、籠もその場において去っていった。
マヨイが籠を抱えて部屋に入ると、げっそりしてベッドに横になっている隼斗と、何かをべらべらと喋っているフエ、頭を抱える蓮がいるという奇妙な光景が飛び込んできた。
「……なに、あたの?」
「……クラルさんのこととか聞いて、隼斗さんが先行き不安になってげっそりしてるのを見守ってるのよ私は……」
「えー? 先行き明るいじゃない! 困ったら助けてくれるんじゃない? 嫌われてなければ」
「一言多いのよ姉さんは!」
よくわかっておらず首を傾げるマヨイに、蓮とフエは隼斗を任せて住処を出て行った。
二人がいなくなると、マヨイはベッドの上でぐったりしている隼斗の隣に寝っ転がり、抱きしめてにこにこと笑った。
「隼斗さん、だいすき」
その言葉を聞くと、隼斗は顔色を少しだけよくして嬉しそうに微笑み、マヨイの頬を撫でた。
マヨイは頬を撫でられ、うれしそうに目をほそめてから、隼斗の口元を長いしたでべろりとなめてから、深く口づけをした。
長い舌と、甘い体液が隼斗の口内に注がれ、彼の体の苦痛を和らげる。
隼斗も、その舌で、肉厚なマヨイの舌を舐めあげ、からめあい、抱き合った。
長い時間、二人の口内を互いに味わうような接吻が続く。
ようやく口づけが終わると、隼斗は安心したのか、深く眠ってしまった。
「よしよし」
眠った隼斗を見て、マヨイは彼を優しくなでるとそのまま自分も布団に入って眠ることにした。
「おやすみ、隼斗さん」
マヨイが目を瞑り、数分すると静かな寝息だけが部屋を支配するようになった。
大樹の中につくられた実験室のような、診察所のような住処で、クラルは胸元を開き、紅茶を口にしていた。
「クラルやほー」
「……ああ、フエか」
異次元の穴を開けて部屋にはいってきたフエを見て、クラルは深いため息をついた。
「知らない間に妹が旦那兼嫁をつくってた私の気持ちをこたえてくれ」
「んー『どうしてこうなった』かな」
「その通りだ」
器用にくちばしのような部分が机に当たらないように突っ伏すと、クラルは疲れたように、言った。
「妹がまさかつっこむ役になるとは思わなかった」
「そこかい」
予想外の言葉に、フエは思わず真顔でつっこみをいれた。
「まぁ、それはともかくクラルがいない間、いろいろと番ができた子が増えたよ。あの蓮も番を見つけたしね」
「ああ、蓮もか。あの子は私たちと違うから、心配していたんだ。だが、番ということは彼女の苦しみを理解してくれる人なんだろうな」
「ふふ、その通り」
フエは適当に椅子に腰をかけてにっこりと笑った。
「……ところで、クラルは番を見つけないの?」
「……そういうのがわからなくてな」
「だったら、早く見つかるといいなぁ」
「焦ることでもないだろう『花嫁』も居ることだしな」
「確かにね」
フエはくすくすと笑う、つられてクラルの面から笑い声が聞こえた。
「いつか、いい子がみつかるといいね」
「ああ、見つかれば……いいがな」
クラルは諦めたように言葉を口にすると、再度紅茶を胸元の口と、手の無数の口から飲み始めた。
異形の子の番など、早々簡単に見つかるものではない
だからこそ、姉妹を兄弟をなによりも大事にするのだ
見つかったからといっておろそかにはしないが
兄弟が番を見つけると、うれしさと同時に寂しさもあふれるのだ
そして、うらやましいという気持ちもわき上がる
それほど、見つけるのが大変なのが番だ
そして、番を見つけた姉妹、兄弟の幸福を
近しいほどに、願ってしまうのだ
血がつながっていればなおさらなほどに――
マヨイの兄/姉のクラルが登場です。
全く似てない二人ですが、共通しているのは人を癒やす治療することに長けていることです。
隼斗がちょっとアレだからマヨイの事がクラルは心配なのです。
ここまで読んでくださり有り難うございました。
次回も読んでくださると嬉しいです。




