前を見る為に
フエは会議室で零のメンタルがピンチな状態であることを伝える。
どうするかと話合い──
「零さんのメンタルがピンチだ」
会議室で、同じ異形の子等にフエはそう伝えた。
「前回の異形案件を相当引きずっている」
「犠牲者出てしまってたもんね……」
「それな」
蓮の言葉にフエは同意する。
「このままだと自暴自棄になりかねない」
「どうする?」
「似た案件を探す」
「似た案件?」
「そしてそれの異形を零さんに倒して貰う」
「と言うことは……」
ロナクの頬が引きつる。
「草の根運動よー! その間に見つけた異形は殺していい!」
「マジかー!」
異形の子総出で、異形探しが始まったのだ。
「……」
「零そんなに酒を飲むと体に悪いぞ」
「五月蠅い」
酒に走り出した零から、酒を取り上げて慎次はしまう。
零はテーブルに突っ伏して、何も言わない。
そんな零に慎次がため息をつく。
「零さーん!」
そこへフエが飛び込んできた。
「……何だ」
「うわ、お酒臭い! じゃなくて、ちょっと困ってるんだってば!」
「?」
フエが困っているという話に零は漸く反応した。
「前回みたいな奴が出たんだけど被害者は今のところ出さないように私達が手を回してるんだけど、こいつが逃げ足速くて捕まえられないの!」
「!」
零の目が見開かれる。
「場所は何処だ!」
「案内する、来て!」
零はフエの手を取り姿を消した、慎次も慌てて後を追う。
数十キロ離れた都市だった。
「手っ取り早く行くぞ」
零はそう言うとペンダントを外した。
零が地面に飲み込まれていく。
慎次とフエがその手を掴み、地面の中に消えていった。
広大な地下空間にたどりつくと、フエと慎次は前回見た異形とよく似た異形いることを視認する。
零は銃に弾丸を込めて撃ち込んだ。
当たったが、あまり効果が無いようだった。
「ここからは私に任せて」
フエが前に出る。
黒い肉癖が異形の周囲を包み込み、捕食し始める。
耳障りな音が響くが誰も動じない。
かけらも残さず捕食されると、フエがぺっぺとつばを吐く。
「まっず!」
「零どうだ?」
「少しだけ……気が晴れた……感謝する」
零が声を絞り出すようにして言うと、フエを慎次は肩をすくめて、零と共にその場から脱出する。
後日、前の事件の被害者の墓参りをした零は、いつものように仕事に戻って行った。
異形による犠牲者を減らす為に──
零は漸く前を向いて歩けるようになりました。
それもフエ達のおかげだと本人は自覚しています。
ここまで読んでくださり有り難うございました。
次回も読んでくださると嬉しいです。