救えたかもしれない命
零が姿を消したと聞き急ぎ向かうフエ。
其処には小さな穴があり──
「零が消えた」
見廻り中、慎次はフエにそう念話で伝えた。
フエは大急ぎで行く。
「……小さな穴がある」
フエは到着すると、足下の穴に着目した。
「穴を通って行くよ」
「分かった」
そう言って二人は姿を消した。
穴の広間に着地すると、女性の干からびたような死体が転がっていた。
目の前には蟻地獄のような巨大な異形。
それに引っかかってる零。
「血を吸われたか⁈」
「吸って花嫁だと分かって辞めたみたい」
「後でクラルに増血してもらわんとな!」
「その通りよ!」
フエはそう言って、異形のとがった口をへし折りに行った。
異形はおられた所を触ると襲いかかってきた。
慎次の影が異形の動きを封じる。
その隙にフエが異形の頭をかかと落としでたたき割り、同時に零を救出する。
零は意識を失っていた。
「慎次、やっちまえ!」
「おう」
慎次の影が異形を喰らっていく、異形はもだえながら捕食されていった。
「不味いな」
「でしょうね」
「で、この死体達どうする?」
「まずは零さんを──」
「呼んだか」
「クラル!」
呼び出していないのにクラルが着てフエは驚いた。
「何で?」
「呼ばれたような気がしてな」
「クラル、零の血を増血してくれ」
「分かった」
クラルが処置すると、零の顔色に赤みが戻り、零は目を開けた。
「ここは……地下、か?」
「そうよ」
零は慎次に支えられながら起き上がる。
そして骸となっている女性達を見て唇を噛みしめる。
「すまない、助けられたかもしれないのに」
「零さん、それ悪い癖よ」
フエはため息をついて行った。
「死体は私とクラルと慎次で運ぶから、零さんは警察に説明して」
「分かった、それくらいしかできないが、やろう」
四人は地下空洞を脱出すると、警察に行き、地下に沈み込まれた女性達の骸とその説明をしていた。
説明が終わると、警察は死体を鑑識に回すといい、受け取った。
連絡があったら寄越すといわれた。
「……」
それから一週間後、死体は行方不明の女性達の者だとわかり、遺族に返された。
そして葬儀がされたそうだ。
零はその葬儀に出ることはしなかった。
見つけたのは零だが、それを公にしてはいけないからだ。
「……」
「零、紅茶だ、ミルクと砂糖入りの」
「すまない」
慎次からミルクティーを受け取り、零は息をつく。
「……」
「どうした?」
「もっと早く私が捕まっていたら犠牲者は少なくてすんだろうと」
「だからその話は止めろ、お前も命が危うかったんだからな」
「……」
何か言いたげな零の顔にタオルを慎次はかぶせた。
「何だ?」
「俺は音楽聴いてるから、好きなだけ泣け」
そう言ってイヤホンを耳につけた。
「……すまない」
零のすすり泣く声が探偵事務所に響いた──
命を救えなかった時零は酷くショックを受けます。
だから必死になって自分を犠牲にしてまで異形退治を続けるんです。
ここまで読んでくださり有り難うございました。
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