拘束~学習しない「花嫁」~
零は拘束されていた。
拘束していたのは慎次で、何故拘束されていたのかというと──
「……」
その日零は拘束されていた。
「おい、零。基所長、なんで拘束されてんのか分かってんのか?」
額に血管を浮かばせた慎次が顔をのぞき込んで問いかけた。
「異形の被害者がいたからペンダント外して花嫁宣言した上で異形に自分から接近して弾丸ぶち込んだから?」
「分かってんならやるな!」
慎次は怒鳴り声を上げた。
「仕方ないだろう?」
「仕方ない? どの口が言う!」
零は無自覚に慎次の怒りの火に油を注いでいた。
「ペンダント外すまでは許容できる! だがそのまま突っ込んで何かあったらどうするんだ!」
「弾丸があったし……」
「弾丸が効かなかったらどうする⁈」
「それは……なるようにしかならない」
「んなわけあるかぁ‼」
慎次の怒鳴り声が再度響き渡る。
「零さーん、今回は全面的に零さんが悪いよー」
天井からフエが出現し、ふわりと着地する。
「確かに私の作った弾丸はほとんどの異形に効果があるだろうけど、一定の効果しか無い奴もたまにいる」
「ふむ」
「例えばドリームランドにいるあの王様には効かない、弾丸を夢の中に持ち込めないからね零さんは」
「あの時はすまなかった」
「ほんとよ」
フエは盛大にため息をついた。
「後は海の中で眠ってる奴とか、遠い星にいる連中とかまぁ色々!」
「ふむ、割と多いな」
「割と多いな、じゃないの!」
今度はフエが怒る。
「零さんは『花嫁』なんだよ、異形の。連中に狙われることだけはしっかり理解してよ!」
「分かった」
「分かったならいいの」
「だから拘束外してくれ、痛い」
「駄目だ、しばらく反省しろ」
「ぐむぅ」
「その通りだよ、フエさん、しばらく反省!」
そう言ってフエは姿を消した。
「私の拘束はいつ解けるんだ」
「反省したらな」
「むぅ」
「むくれても駄目だ」
慎次はそう言って、椅子に座った。
「ただいまー」
「フエ、お帰り」
「紅姉さん聞いてよ、零さん全く反省してない!」
住処に帰って来たフエは、会議室に姿を現し紅に言う。
「え、あんな危ない事したのに」
同じく会議室に居た蓮が驚きの声を上げる。
「そう、あんな危ないことしたのに、当分は拘束じゃない?」
「拘束って痛いって聞くけど大丈夫なのかな?」
「まぁ、痛い位がちょうどいいでしょう」
フエは伸びをしながら言う。
「さて、しばらくは忙しくなるよ、零さんが動けない分異形退治しなきゃならないから」
「そうだな」
「うん、分かった!」
フエは二人の返事に、にっと笑い返した──
被害者が出ないように無理する零に慎次がぷっつんしました。
当分拘束でしょう。
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