解毒処置~外野の会話~
毒を持つ蜘蛛の異形を喰らったフエは苦しんでいた。
柊は近づきたかったが、それを駄目だしされ──
「ぐおおお、あの蜘蛛めぇ……」
フエは苦しそうに呻いていた。
「フエ……」
柊はフエの脂汗をタオルで拭っていた。
「あんまり、近寄らない方が良い、毒がでちゃう可能性あるから……」
「でも……」
「はいはい、康陽さん、柊さん連れて適当な場所に行ってて」
「いってて」
「分かった」
突如部屋に入って来た蓮、マヨイ、康陽がフエに近づく。
康陽は柊の首根っこを掴み引きずっていく。
「離せ、私はフエと居たいんだ!」
「お前がいるとフエの治療の邪魔なんだよ、わかれ」
康陽がそういうと柊は大人しくなった。
大人しく部屋から出て行った。
「じゃあ、フエ姉さん、しんどい治療になるけど我慢してね」
「お、お手柔らかに……」
「むりー」
「うへぇ」
マヨイに「無理」と言われ、フエは遠い目をした。
「……」
大食堂で、柊は緑茶を口にしていた。
「どんな治療になるんだ?」
「そうとうキツい治療らしい、何せフエの本体に攻撃を仕掛けるような奴らだ、ロクでもない毒だろう」
康陽は紅茶を飲みながら何でも無いように答える。
「なら……」
「その治療で毒を放出したら大変だからお前を出て行かせたんだ」
「っ……」
「フエが治療で毒をゲロった時点でお前死ぬぞ、番いとはいえ死ぬときゃ死ぬんだからな、無理すりゃ」
柊は髪を掴み、テーブルに突っ伏した。
「無力さを感じるのは分かる、仕方ないさ」
「私を異形にできないのか?」
「無理だろう、フエがそれを望まない」
「……」
「俺達は俺達であるから番いなんだ、異形になったらもうそうじゃない」
「フエ……」
柊は辛そうにフエの名前を呼んだ。
「大分時間かかってるな……」
「……」
もう12時間経過していた。
半日も時間がかかっているのだ。
相当な処置をされているのだろう。
「やっほー……」
「フエ!」
「柊さん、ストップ今は抱きしめるの辛い」
顔面蒼白のフエがそこに居た。
フエは柊に静止の言葉を言う。
柊はそれを聞いて、立ち上がったがまた座った。
「うん……ありがと」
フエはそう言って柊の隣に座る、そしてテーブルに突っ伏す。
「白湯下さい」
「ほれよ」
康陽が直ぐさま作ってもってきた。
その白湯をふーふーしながらフエはちびちびと飲む。
「ど、どんな処置したんだ?」
「グロいことなってたから言わない」
「……そう、か」
げっそりとした表情でそういうフエに柊はこれ以上言うことができなかった。
「毒は全部解毒できたんだろうな?」
「それはできた、おかげで食あたり状態も良くなったけど──」
「──飯は当分胃に優しいもので、異形喰うな言われた」
フエは疲れたようにため息をついた。
「お前が異形を食えないのは痛いな」
「でしょう、少なくともここ一週間は食えない、その場合は紅姉さんが担当することなった」
「紅か……」
康陽が不安そうに言う。
「悪食なら異形も食えたらよかったのにな、エル。そうしたらごちそうにありつけるし」
「最初はうちらもそう思ったけどあの子悪人しか食わない」
「だよなー」
「慎次も食えるけど、私ほどじゃない」
「そうか」
「レオンは食えない、性質上」
「なるほど」
「ニルスは知らん」
「そうなのか?」
「多分食わないでしょう」
「そうか……」
「フエ姉さん、部屋の浄化終わったよー」
蓮がやって来た。
マヨイも一緒だ。
「おわったの」
「マヨイ有り難う」
「えへへ」
フエはマヨイの頭を撫でる。
「柊さん、一緒に寝て頂戴、今日しんどいから……」
「──勿論だとも」
柊は微笑んだ。
フエと柊は部屋に戻り、澄んだ空気を感じ取りながらベッドに潜り抱き合う。
「お休み柊さん」
「お休み、フエ」
そう言って目をつぶった。
十数分後、二人は幸せそうに眠り始めた。
「で、どうだったんだ、処置」
「もう大変よ、毒袋ぐちゃぐちゃになってるからそれの除去とかあれこれ!」
「たいへんだった」
康陽は軽く処置内容を聞くと、蓮も軽く話してくれた。
だが、それだけで大変さが伝わった。
「二人ともお疲れ様、ホットショコラでも飲むか」
「わーい飲む飲む!」
「のむー!」
康陽はホットショコラを二人分用意し、カップを出す。
「どうぞ」
「康陽さんありがとう、んー! 美味しい!」
「おいしいの!」
「そうか、二人ともお疲れ様」
そう言って、功労者をねぎらったのだ──
処置を行うのは蜘蛛の異形である蓮が主体になりましたね。
柊がどんな姿でもいいからフエの側に居たいというのが伝わるかと。
もう一人の影の功労者は康陽さん、柊の話を聞いて、疲れた蓮をねぎらう。
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