猛毒の異形~フエにとっても毒~
見廻りで蜘蛛のような姿の異形と遭遇した零と慎次。
フエを呼ぶと──
「全く見廻りで蜘蛛の異形に遭遇するとは」
「蓮とは違うな、花嫁を確保しようと必死だ」
慎次は零を抱きかかえたまま、蜘蛛の糸から逃げていた。
「おい、フエ。見てんだろ、そろそろ出てこい」
慎次が不満そうに言うと、フエが姿を現した。
「呼ばれてじゃんじゃじゃーん!」
「ふざけるな」
元気そうなフエに慎次は呆れる。
「あ、こいつら本体の所にきたのにそっくり、つーか同じ系統だ!」
「んだと?」
フエからの情報に、慎次は目を見開く。
「つまり、相当危険という事か?」
「そゆこと」
零の問いかけにフエは頷く。
「じゃあ、私が一匹残らず食うから」
「大丈夫なのか?」
「死にゃしないよ」
蜘蛛型の異形がいるあちこちに黒い肉癖が現れ、異形を捕食していく。
「おえ……げぼ!」
フエが血を吐き出した。
「フエ!」
「近づいちゃ駄目!」
二人を静止させる。
すると、蓮が現れた。
「あの小型の蜘蛛たち、姉さんが喰らった蜘蛛よりも猛毒だから解毒剤、新しいの」
「有り難う蓮」
「いや、ついでに血が付着したアスファルトも浄化しとこう」
蓮はそう言ってじゅうじゅうと音を立てるアスファルトに液体をかけた。
フエは薬を飲み干し、ふぅと息を吐く。
「あーしんどかった」
「他に蜘蛛は居ないし、異形もこの辺にはいないからもう帰ったら良いんじゃない?」
「いや、蜘蛛に捕まった人が居るんだ」
「……あー繭があるね、包まれてる」
「本当か」
「私とフエ姉さんで対処するから帰って休んでください」
「……分かった」
零は慎次に手を引かれて帰って行った。
「何で零さん抜き?」
「部分的に異形化が始まってます、マヨイを呼んで元に戻さないと」
「なるほど」
二人は繭の群れがある場所に行き、マヨイを呼んで、繭を一個一個切り裂いて、マヨイに治療をさせ元に戻させる作業を行った。
皆、意識を取り戻すと、蓮が呼んでいた警察がやって来て、蓮が事情を話し、行方不明者達を引き渡した。
「なるほどそういう理由で」
「さすがに異形化進んでる人を見慣れているとはいえ、零さんに見せるのはどうかと思ったの」
翌日事情を全て話に蓮がやって来た。
「私の代わりに警察のも担当してくれたんだな、すまない」
「いいんですよ」
「所でフエは?」
「あー解毒剤で毒はなんとかなったんですがクソ不味くて体に悪い物体食ったのは変わらないので食あたりを……」
「マジか」
零は遠くを眺めた。
「ううう……お腹痛い」
フエはベッドの上で丸まっていた。
「フエ大丈夫か?」
「あんなクソ不味い蜘蛛二度と食いたくない」
「食べなくて良いんだよ?」
「そうもいかないのよー悲しいことに」
心配そうな顔をする柊に、フエはそういうしかできなかった──
相当厄介な毒持ちの異形だったようです。
フエや蓮、マヨイじゃなかったら多分異形の子でもヤバいレベルの毒です。
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