デートの裏側では……
柊がベッドの中でむくれているのをフエは困ってみていた。
自分以外とデートしたからと言う柊に、フエは──
「……」
「柊さん、何でそんなにむくれてるのー?」
ベッド上で毛布にくるまっている柊に、フエが声をかける。
「何で私以外の奴とデートしたんだ?」
「誰が言ったのそれ?」
「慎次」
「慎次ェ……」
柊の答えに、フエは頭を抱えた。
慎次の信用度は柊の中では高い方だ、何せ異形性の発露以外でやったことを報告してくれる相手だからだ。
慎次からすると、フエは少し痛い目を見た方がいいという考えでやってるので柊を信用して行っているというよりも、柊に言った方がフエに痛い目を見せられると言うことが分かっているからだ。
フエはしばし悩む。
「デートじゃない、二人っきりで行ってないから」
「だが慎次は『俺はオマケ』と言ってたぞ」
「あー……」
フエはまた悩んだ。
否定できないからだ。
零と一緒に行くのが目的だが、自分一人だとデート扱いされる為、慎次を連れていったのが裏目に出たようだ。
慎次はフエの考えをお見通しのようだった。
「慎次がそう思ってるだけよ、彼奴零さん居ないと安定しないし」
「本当か?」
「今回は本当よ、だからさ」
フエは毛布をめくる。
柊の顔が見えた。
「だからさ、一緒にデートしよう?」
「する!」
毛布を脱ぎ捨てて柊が言うと、フエはくすりと笑った。
あまりにも純朴で、愛おしかったから。
「と言うわけでフエがデート中だから私が変わりに見に来た」
「そうか……」
紅が零達の前に姿を現し、そう言った。
「フエの奴上手く言いくるめたな」
慎次が呆れたように言う。
「慎次、あまり告げ口はするなよ、フエもフエで苦労しているんだ」
「どうだかな」
「それはともかく、紅大丈夫か?」
「何がだ?」
「仕事がだ」
「安心しろ、全部終わらせて向こうの反応待ちだ」
「そうか……では私達も見廻りに行くか」
「ああ」
「分かった」
見廻りに三人は出かけてた。
その日は夜まで見廻りをし、海沿いの倉庫が並んでいる場所を歩いていた。
「ここか?」
「ここらしい」
「魚のような姿をした生き物を見かけたと報告があったからな」
「……いたぞ」
零はハンカチで口を押さえながら行った。
酷い魚の腐敗臭がそこら中に漂っていたからだ。
魚のような顔をした異形達がこちらを向いた。
紅に向かって襲ってきた。
「どうやら女を求めているらしいな、目撃者が男だったから無視していたのだろう」
「子を作る為か」
「だが無計画に突っ込んできたのは失敗だったな」
慎次がそう言うと闇から無数の黒い手が現れ、異形達を包み込み、押しつぶすように闇の中に取り込んでいった。
「これで終わりか?」
「いやまだだ、海の中にいる」
「しかし海に入ったらこちらが──」
「入らなければいいだけだ」
紅はそう言うと、歯をガチっと鳴らした。
何度かガチガチとならし終えると、ふぅと息を吐いた。
「不味い、魚だから美味いかと思ったが不味い」
「感想言うなよ……」
「こいつらがあがめる異形は封印されてるが、念のためフエに後でその異形を殺してもらおうか」
「そうだな、デートも終わってる頃だろうし」
「では帰るか」
「ああ」
「そうだな」
そう言って零は紅と慎次と共にその場を後にした──
後日「やってらんねー!」と叫ぶフエが住処で地団駄踏んでいたが、紅に「良いから早く行ってこい」と追い出されたそうだ。
戻って来たフエは「あんな異形相手するのも面倒だよ」と疲れ切った表情でいい、柊に癒やしを求めた。
癒やしを求められた柊は、フエを抱きしめ、部屋で二人っきりでいちゃついたそうだ──
フエのデートの裏で紅がフエの代わりを果たしているというものです。
その代わり、厄介なのはフエに任せたて、フエはやってらんねぇとなりましたがお仕事なのでこなします。
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