破壊と混沌の子等
会議室でフエは暴れていた。
その原因はニルスと彼女自身にあって──
「ニルスくたばれー!」
会議室でフエはそう叫んで暴れていた。
「おい、何がどうした?」
仕事から戻って来た慎次が他の異形の子等に事情を聞く。
「フエがどうして異形が減らないのか疑問に思ってニルス締め上げたんだと」
「で?」
「そしたら、フエ自身が破滅と混沌を望んでいる一面があるからだって言われてふざけんなとキレてる最中だ」
「要するに八つ当たり」
「だな」
紅の説明に納得したかのように慎次は頷く。
「うがー!」
フエは暴れ続けている。
よく見れば手は赤黒い。
「ニルス締めてきたんだな」
「と言うか一回殺したんだろう、でもそのうち復活するだろうあの混沌は」
冷静にフエがしてきたことを判断ししゃべる慎次と紅。
「おめーが破滅しろ! うがー!」
フエは暴れたままだ、りらやエル、マヨイはおびえている。
「このままなのは不味いな」
「そうだな」
紅と慎次は頷きあい、慎次の影で一瞬フエの動きを止めると、紅がフエの体を空中に上げるように腕を抱えた。
「フエ、其処までだ」
「だー! 紅姉さん暴れさせろー! あのにやけ面が目に焼き付いてるー!」
「断る、このまま暴れさせて住処を破壊されたら困るし、何より見ろ。りらとエル、マヨイがガタガタ震えてるじゃないか」
「……」
フエはちらりと慎次が指さしている方向を見た。
隅っこでりらとエルとマヨイが震えていた。
それを見て、目をつぶり、盛大にため息をついた。
「……わかったよ」
漸くフエは落ち着いたようだった。
「フエおねーちゃ?」
「フエおねーちゃん?」
「フエお姉ちゃん?」
りらとエルとマヨイがフエに近づく。
「もうおこってない?」
「おこってない?」
「ない?」
不安げな三人を見て、フエは何か言いたげな表情をしてから息を吐き出した。
「うん、怒ってない」
「わぁ……!」
「お姉ちゃん、遊んで!」
「遊んで遊んで!」
「はいはい」
フエはいつものような笑みを浮かべ精神の幼い異形の子等と遊び始めた。
「それにしても、あのフエの精神にも破壊と混沌を望むのがあったとはな……」
「何をいう、慎次、破壊と混沌など誰しもが内に秘めている、公に出している連中が異常者とみられるだけだ」
紅はなんでもないように言い切った。
「私達とて、それは変わらんさ」
「……そうだな」
破壊と混沌を司る異形達の子、それが異形の子。
その子等である、紅やフエ達も、紛れもなく破壊と混沌を司っているのだ。
本人達が、否定しようとそれは変わらない──
異形の子ですから、深層心理では破壊と混沌を望むのが基本ですね。
マヨイやクラル達は例外。
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