寒い日の異形退治
寒波が押し寄せた日、零はぶるぶるとベッドの中で凍えていた。
慎次がエアコンをつけ、暖かくなると零は──
「寒い……」
零はベッドの上で毛布にくるまりながらガタガタと震えていた。
「強い寒波が来てるらしいな」
「暖冬とか言ってたのに……」
慎次は呆れた顔をしてからエアコンをつけてやる。
しばらくすると部屋は暖かくなった。
「ふぅ、漸くベッドからでられる……」
と全裸の零が出て来た。
「服を着ろ!」
「仕方ないだろう、異形性が発露したと言って昨日寝る前にフエにヤられたんだからな、そしてそのまま気絶したし」
「……フエの奴服着せていけよな」
「同感」
慎次は呆れたような表情をして風呂にお湯を入れた。
「飯の前に風呂入れ」
「そうする」
零は風呂場へと向かった。
その間に慎次は朝食を調理する。
味噌汁、焼き鮭、たくあん、白いご飯全てを用意し、テーブルに並べる。
と同時に髪の毛を濡らして、パジャマ姿になった零が風呂場からでてきた。
「髪の毛は乾かしてやるから、飯食ってろ」
「すまんな、いただきます」
そう言って零は椅子に腰をかける。
慎次はタオルと櫛とドライヤーを出して零の髪の毛を乾かす。
「ごちそうさまでした」
食べ終わる頃には零の髪は乾いており、さらさらとして艶めいていた。
「よし、全部食ったな」
慎次はそう言うと、食器を片付け、洗い始める。
洗い終わると、食器を拭いて仕舞い、エプロンを外す。
「ふぅ」
その間に、零は着替えていた。
一見すると普段と変わらないように見えるが、しっかりと冬用のコートやズボン、ブーツ等に変わっていた。
「さて、行くとするか」
「そうだな」
慎次もコートを羽織り、後へ続く。
「ニルスとレオンも交戦中とのことだ」
「あっちもかよ」
慎次と零は、黒い肉塊の塊に追いかけられながらも人気の無い道を逃げていた。
「『花嫁』宣言したから脇目も振らずコッチにくるな」
「誰のせいだ」
「私のせいだな」
咎めるように言う慎次に、零は平然と返す。
「で、だ。そろそろ足が痛くなってきた」
「……そうだなここなら見られないだろうし」
慎次はくるっと半回転した。
慎次の影が広がる。
影から無数の手が現れ、肉塊の異形を飲み込んでいく。
異形は人には聞こえぬおぞましい声を上げながら飲み込まれていった。
「こっちはこれで完了、さて向こうは?」
零はレオンにスマートフォンで連絡を取る。
「レオン、そっちはどうだ? あ、終わった? では事務所で落ち合おう」
それで通話を切る。
「じゃあ事務所に戻るぞ、今回の異形は被害者はいなかったのは幸いだ」
「確かにな」
慎次は頷いて零の後についていった。
慎次が居なくなったあと、黒い泡が立っていた。
ぐちゃりとフエがそれを踏む。
「全く慎次も確認おろそかなんだから、まぁ零さんがいたからね」
泡を踏むと、綺麗さっぱり消えた地面になっていた。
「まぁ、昨日無理させたからこれ位はしないとね」
フエはそう言って姿を消した──
異形性の発露で裸のまま寝たら寒波到来で寒い思いをした零。
服着せろは慎次も言いますね。
服を着せなかった代わりに、手助けをするフエ、花嫁の為ですから。
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