調子に乗らないように
ある日、フエは機嫌が良かった。
それはニルスが痛い目を見たからだという──
「♩~」
ある日、フエは歌を歌っていた。
「どうしたフエ、機嫌が良さそうだな」
「ニルスが痛い目みたからね、だからちょっと機嫌がいいの!」
紅の問いかけにフエは楽しそうに答えた。
「それは楽しそうだな」
「でしょう!」
フエはスキップしながらその場から立ち去った。
「……調子に乗ってヘマしなきゃいいんだが」
一人残された紅はそう呟いた。
「ニルスが動けないからフエに急遽入って貰った」
「はぁい!」
零の事務所で、零がそうフエを紹介すると、レオンと慎次は顔をしかめた。
「不安だ」
「ああ、不安だ」
「なにさー!」
「調子乗ってヘマしないかだ」
「そうです」
「それは……しないように善処する」
慎次とレオンに指摘され、フエは苦虫を噛み潰したかのような顔をする。
「とりあえず、レオンとフエ、私と慎次で見廻りだ。何か起きたら即刻対処すること、いいな。連絡も怠るな」
「了解です」
「了解」
「了解!」
二組に分かれて見廻りに出かけた。
「出てこないねぇ」
「フエさん、貴方の気配を察知して逃げてるようですよ」
「やっぱり?」
レオンの言葉に、フエはやらかしたという顔をする。
「仕方ない、じゃあその気配をたどって食い殺しますか」
「さすがですね」
「まぁねー」
フエは目を閉じる、すると影が広がり、木の枝のように広がっていく。
しばらくそうしていて立ち止まっていたが、やがて影は普通の影に戻った。
「うわ、異形不味い」
フエはげんなりした表情を浮かべた。
「とりあえず、零さんに連絡を取りましょう」
「おねがーい」
レオンはスマートフォンで連絡を取り始めた。
「ああ、零さん。こちらはフエさんが異形を喰ったので大分静かになりましたよ、そちらは?」
「……」
「え⁈ 人気のない所に逃走中またなんで……異形⁈ 慎次は⁈」
「まさか」
「え、慎次に人の救助任せたから一人⁈」
「いやな予感あーたり! 私いってくる!」
フエは転移した。
転移した先では無数の手足の生えた異形が猛スピードで零を追いかけ回しているのだ。
「零さーん! そのまままっすぐ逃げてー!」
「了解した!」
零は全速力で逃げており、フエは零の足跡にトラップを仕掛けた。
足跡を踏んだ異形は四角檻に封印される。
「これ、被害者救済できるかな、マヨイー」
「う!」
マヨイがひょこっと現れ、巨大な触手が空間毎異形を飲み込んだ。
もごもごと咀嚼するような動きをした触手は地面に口をつけぺっぺっぺと吐き出した。
十人の男女が服を着た状態で地面に横たわっていた。
「後は警察に任せる、助かったよ。フエ、マヨイ」
「う!」
「次は慎次を餌にしてよね、はいペンダント」
零がいつの間にか外していたペンダントをもっていたフエは零にそれを渡す。
「すまないな」
「いいよー別に、感謝ならお茶してちょうだい」
「お茶ならいくらでも、よし戻るぞ」
零は警察が来たので事情を説明し、その場から立ち去った。
「なんで、零さんとしないの?」
「慎次に告げ口されて柊さんと修羅場になるから」
「そうなのー……」
「異形性の発露ならともかくそれ以外だと凄いガルガルモードになって責めてくるからねー……」
「それフエおねえちゃんのじごうじとく、なの」
「マヨイにもそう言われるかー……しょぼん」
フエは肩を落とした。
その後、零の事務所の二階でちょっとしたお茶会が開かれたそうだ、他の異形の子等もやって来て賑やかなお茶会になったそうだ──
ニルスが痛い目見て動けないので急遽フエが入った話です。
零はペンダントを捨てて自分が花嫁だと分かる状況で逃亡し、人から離しました。
そのことを、軽く叱られてますね。
そしてフエは零に異形性の発露以外ではしないようになりつつあります、慎次が告げ口して柊がうぎゃー!とわめき散らかすからです。
ここまで読んでくださり有り難うございました。
次回も読んでくださると嬉しいです。