タチの悪い忘却癖
「花嫁」を危機にさらした罰として封印されたロナク。
ロナの影の中に封印されたロナクは影の中から文句を言うが──
『いい加減だしてくれよーねーちゃーん‼』
ロナの影からロナクが叫ぶ。
『まだフエ姉さんからの許可がでてないから駄目よ』
『そんなー!』
影からはしくしくと泣く声がした。
『ロナク、貴方に非があったからこうなったのよ、少しは反省して頂戴』
『うー、だってー』
『零さんを危険な目に遭わせたでしょう? だから皆カンカンなのよ』
『うへえ、みんなって』
『みんなよ』
「ろなおねーちゃんこんにちはー」
「こんにちはー」
「こんにちはー」
エルとマヨイとりらの三名がやって来た。
『げ』
『あら、みんなどうしたの?』
ロナは皆に合わせて屈む。
「ろなくどこー?」
「そうそう、ろなくどこー」
「どこ?」
三名は声をそろえて尋ねた。
『……私の影よ』
ロナは諦めたように呟くと、三名はそれぞれナイフを持ってロナの影をざくざくし始めた。
『いでででででで‼』
「零さんあぶないめにあわせたわるいこ!」
「わるいこ!」
「わるいこ」
ざくざくざくざくざく!
『いででででででで‼ 悪かった、悪かったから異形用のナイフで俺刺すのやめてくれ‼ マジしゃれにならんレベルで痛いんだよ‼』
ロナクは絶叫する。
「じゃあ、もうしない?」
『しない! しないって!』
「うーん」
「うーん」
「そう言ってアンタはする奴だから信用できないのよねぇ」
『げ』
「「「フエおねえちゃん!」」」
『フエ姉さん』
フエが姿を現した。
フエは非常に呆れた顔をする。
「今回の件ももう四回もやってるのよ、アンタ」
『う』
「だから当分そうしてなさい」
『畜生』
「ロナ、ロナクの封印任せることになるけど、お願いね」
『はい、フエ姉さん』
「じゃあ私は零さんの所行ってくるから」
「零さん、まだあんせい?」
「そう、安静よ」
フエはチラリと影を見て言うと、その場から立ち去った。
『ロナク、本当反省して』
「はんせいしなさい!」
「しなさい!」
「しなさい」
『う゛ー……』
うめき声のような声を上げて何も言い返せなかった。
「零さんごめんねー大丈夫?」
「服が破けたのと襲われかけたので済んで良かったよ」
「あ、まだ大丈夫じゃない」
「大丈夫だ、と言っているのに他の皆は外出禁止、慎次は見張り」
「たりめぇだ」
「いやー本当、ロナクの馬鹿がごめんなさいねー」
「確かこれで四度目だった気がする」
「その通り」
その言葉に、慎次はあきれかえる。
「あの馬鹿四度もそんな馬鹿してやがんのか⁈」
「仰る通りで、仕置きでボコろうが封印しようが、忘れた時にやらかすのよ……」
「鶏よりタチがわりぃじゃねぇか」
「その通り」
フエはため息をついた。
包帯で体を覆っている零は口を開く。
「マヨイを呼んでくれないか、早く治して出かけたい」
「マヨイ便りになると駄目と言うことだからクラルまでなら呼ぶ」
「クラルでもいい、早く治したい」
「そうはさせんぞ」
クラルが呼んでもいないのに現れた。
「あ、クラル」
「零、お前は日頃オーバーワークなのだ、だからこれを機会に休んで貰うぞ」
「なんて酷い」
「やかましい」
クラルは包帯を解いて体を診る。
ひっかき傷と黒い手形が無数についていた。
クラルは液体を浸したタオルで体を拭いていく。
すると傷跡は薄くなり、手形も薄くなった。
「これで様子見だ、明日来る」
「もう一回拭けば治らないか?」
「治ったら無理するからやらん」
「零さんはさー、もう少しゆっくりすることを覚えなよー」
「……無理だな」
「もー」
諦めたように言う零に、フエは疲れたようにいった──
異形の悲劇を無くすために零は活動している。
だから、休むというのはあってはならないのだろう──
ロナクフルボッコですね。
そして零が休むという思考に中々ならない理由。
異形はほとんどが人類の敵ですから。
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