エルのご飯~突撃テロリスト、お前がご飯になるんだよ!~
エルの為の「肉」が無くなってしまい困り果てるジン。
「肉」を調達すべく、フエに調達場所は無いかと問いただし──
「ジンおにいちゃん、おなかすいた」
「エル様、しばしお待ちを」
ジンはわずかな肉を取り出し、料理を始めた。
小さなステーキ肉に、付け合わせのポテトと、ニンジン。
そしてゼリーと、白いパンがあった。
「おにくこれしかないの?」
「申し訳ございません、それが現状最後のお肉となります」
「……わかった」
エルはしょぼんとしながらも、お肉を大切そうに食べた。
そんなエルを、ジンは悲しげに見つめた。
「──フエ様、まだ見つからないのですか⁈ 襲撃していい連中は⁈」
「この一週間探してるっつーの!」
「肉」が無くなれば、エルは飢えを感じる恐れがある。
それだけは断じて阻止したかった。
「あ、あった」
「何処です⁈」
「テロリストのいる場所、教えるからロナクと行ってきて、私も行くけど」
「おーフエ、ついに見つけたのか?」
「人間もかくれんぼがお上手になってるってこと」
ロナクの嬉々とした表情に、フエはげんなりしながら答えた。
「準備はできております」
ジンは袋を持ってきていた。
それと肉切り包丁を。
「準備はえぇなおい」
「エルのお肉が底を尽きたんだって」
「あーなるほど、だから切羽詰まった声だしてたんだ」
「つーわけでロナク、ジン、行くよ」
「はい」
「了解っと!」
フエとジンとロナクはその場から姿を消した。
「な、何なんだ彼奴、撃ってもしなねぇ!」
「いいから撃て! 人質は何処行った⁈」
「それがさっき見に行ったら全員に逃げられてて……‼」
「どうなってやがるんだ⁈」
準弾の雨を浴びながらロナクはにじり寄っていった。
「おい、ジン。こいつらはいい悪意だぜ。正義を騙ると悪に堕ちるとは言ったものだ」
「そうですね」
ざしゅ
ざしゅ、ざしゅ
テロリスト達の首が落ちていく。
一人残らず。
「いやぁ、これで当分持ちますねぇ」
先ほどの惨劇を作った顔とは違い、嬉しそうにほくほくとした顔でジンは言う。
「エルは飢えなさそう?」
「はい!」
「んじゃ帰るわよ」
「そういやフエ、人質は?」
「全員自分の家の前に送り届けた」
「フエが動けば戦争なんておこらねぇんじゃねぇの?」
「嫌よ、人間同士の諍いに入り込むなんて、どこぞの神話の神様じゃあるまいし」
「だよなー」
「じゃ、今度こそ帰るよ」
「了解です」
「OK」
フエはロナクとジンと共にその惨状の場から姿を消した。
「わー! お肉なかったんじゃないの?」
「調達してきました」
翌日の朝、エルはすじ肉のスープはいった肉の塊を見ながら言った。
「煮込んであるので柔らかいですよ」
「わーい、いただきまーす!」
エルは肉をぱくりと食べた。
「どうです?」
「おいしいー!」
「それは良かった」
「おかわりはある?」
「勿論です」
「わーい!」
ジンは微笑み、エルは喜んだ。
「今更なんだけどよ」
「なぁにロナク」
「エルの為とは言え、同族解体して料理するとかヤバくねぇ?」
「ジンがヤバいのは今更よ」
「マジか」
「マジ」
フエはソファーに座りながら、自分の膝に頭を乗せている柊の頭を撫でながら言った。
ロナクはそれを見て何となく羨ましそうな顔をして部屋を出て行った──
エルの主食である肉の確保は大変なんですよというお話です。
それとジンも相当ヤバい精神の持ち主という内容になりました。
ここまで読んでくださり有り難うございました。
次回も読んでくださると嬉しいです。