レラの我が儘~『花嫁』が好きだから~
レラが零の手伝いをしたいとフエに訴える。
しかしフエはそれを却下し──
「零さんのお手伝いしたい!」
「駄目」
「なんでぇ?」
レラが零の手伝いをしたいとフエに言うとフエは速攻で却下した。
「レラはまだ力の制御が全然できてないでしょう? マヨイとクラルに教えて貰いながら練習して、その後お手伝いしなさい」
「今したいの!」
「駄目」
「なんでぇ」
「感情で手伝える程、零さんのお手伝いは簡単じゃないの」
フエはいつもとは違う真面目な態度でレラに言い聞かせる。
「フエの言う通りだぞ、レラ」
「紅お姉ちゃん」
そこに紅が姿を現した。
「レラ、お前は零の手伝いは簡単だと思っているがそんな簡単なものじゃないぞ」
「なんで?」
「彼奴は鉄砲玉のようなものだ、異形案件があれば自分の身を顧みずに異形を滅ぼそうと行動する」
「自分が『花嫁』であるのも利用して他者を守ろうとする」
「そんな零の護衛と異形退治両方やりつつ、彼奴の日常生活の面倒まで見るんだ、並大抵の事じゃないぞ」
「え、日常生活ってどういうこと?」
レラが首をかしげるのでフエは口を開いた。
「零さん、日常生活を送るのがド下手くそなのよ、料理もまともにできない、服はそのまんまとか……生活習慣がアレなのよ」
「うわぁ」
それには予想もしなかったのかレラは少し引いた声を出した。
「その件は慎次に聞いた方がいいだろうな、おい慎次」
「何だよ、俺はこれから零の朝飯作りに行かなきゃならねぇんだよ」
「レラが零の手伝いをしたいと行ってな」
「ガキはガキらしく大人しく勉強してろ」
「ひどーい! もう15歳なんだよ!」
「異形の子ならガキだ。俺や紅やフエは50は余裕で超えてるんだよ」
「そうそう、マヨイも、ね」
「そんなぁ」
「レラ、ここに居たのか」
クラルがやって来て、レラは慌てた顔をする。
「父に言われてお前の教育係をしてくれと言われてたのに、お前は逃げ出して、今日という今日は容赦はせんぞ、くるんだ」
クラルはレラの首根っこを掴んでずるずる引きずっていく。
「やだー! クラルお兄ちゃんのお勉強頭がぐるぐるするー!」
「お前はマヨイ以下だな、マヨイはあんなだが、真面目に勉強していたぞ」
クラルはそう言ってレラと共に姿を消した。
「確かにマヨイはあんなだが、頭はいいよな」
「異形性が表に出過ぎちゃってるからねーしゃーない」
「人間みたいだけど、それに異形性が合わさってああなってうーうー言うのが普段の会話になってるのよねー」
「最近は隼斗のおかげでしゃべれるようになったがな」
「ただ、零としゃべるとなると隼斗がショックを受けるから零とは今まで通りだが」
「そうだな」
「で、慎次。零の朝食は」
「今行く」
紅に問われ、慎次はその場から姿を消した。
「私も見に行こうっと」
フエも姿を消す。
「やれやれ」
紅は疲れたように息を吐いた。
「なるほど、そんな事が」
朝食を食べながら、零はフエから聞いた内容に少し驚いたような顔をした。
「零さんになついてるようだしね、異形性の発露の一件で」
「あの時は死ぬかと思ったがな」
「死なない死なない」
「それにしてもレラはそんなに駄目なのか?」
零が尋ねると慎次とフエは頷いた。
「駄目ね」
「駄目だな」
「そうなのか」
「料理をすれば食材を破壊し、ごちゃ混ぜ煮の一択」
「異形と対峙すれば建物も破壊しちゃう範囲攻撃の一択」
「「手伝いなんてとてもじゃないけどさせられない」」
「……確かに、それは、な」
朝食を食べ終えた零は服に着替える。
「手伝えるようになるのを気長に待つか、さぁ荒井、フエ行くぞ」
「OK♩」
「了解」
三人は一階の事務所へと下りていった。
今日も探偵事務所の業務が始まる──
まだまだ幼いレラには異形の子の力の制御ができていない。
なので、それを知ってるフエは却下して勉強を促すのです、レラが嫌がっても。
異形の子もそれほど危険な存在なのですから。
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