密告~「花嫁」は皆のもの~
フエは番いの柊に「浮気者」と咎められていた。
柊に密告したのは慎次でその訳は──
「フエの浮気者ー!」
「だから違うってばー!」
泣き叫ぶ柊の声と困り果てているフエの声が響いていた。
「で、柊に暴露したのは?」
レオンと慎次を招集して、紅が問いかける。
「俺だ、最近フエが調子こきすぎてる」
「なら仕方ない」
慎次の言葉に紅は納得したように返す。
「あの、調子こきすぎてるとは?」
「何かする毎に性交渉に持ち込んでヤリたがる」
「……」
慎次がぶっきらぼうにノベルと、レオンは顔を能面のようにさせた。
「マジですか?」
「マジだ」
「私がニルス見張りながら見廻りしている間にそんな美味しい……げふん、羨ましい……げふん、ろくでもないことを!」
「本音、本音隠しきれてねぇぞ」
レオンに呆れて慎次は指摘する。
「まぁ、慎次そう言うな。レオンの気持ちも分かるだろう」
「まぁ、部屋が人間には防音設備なのだけども異形の俺等には聞こえまくってて、やってる最中の零のあえぎ声とかフエの笑い声聞くと耐えてる俺偉くね?」
「偉い」
「偉いです」
慎次の爆弾発言に、紅とレオンは同じ言葉を言う。
「つーわけで番いに密告した訳だ」
「よくやりましたね」
「よくやった」
「慎次ー! 覚えてなさいー!」
遠くからフエの声が聞こえた。
「アレは反省しとらんな」
「よし、軽く締めてこよう」
「頼んだ」
紅がその場を後にした。
「みぎゃー‼」
フエの悲鳴が響き渡る。
「締められたな」
「そうですね」
慎次とレオンは顔を見合わせる。
「それにしても、そんな生殺しの状況我慢できますね良く」
「俺の異形性の発露回数増えてるの知ってるだろ、それが原因だ」
「oh……」
「全く、少しは大人しくしてほしいぜ、フエには」
「ですが、彼女が大人しくするというのは……」
「ないな」
「でしょう」
二人そろってため息をつく。
「じゃあ、俺は零の所に行く、じゃあな」
「もしかして……」
「我慢してたんだよ、密告して話するまで、じゃあな」
慎次はそう言って姿を消した。
「……零さんも大変ですね……」
翌日の仕事時、疲れてるという事で、引きこもりになった零を見て慎次に近づきレオンは言う。
「やり過ぎです」
「すまんな」
疲れたようにため息を吐く慎次に、それ以上のことは言えず、もやもやを抱えてニルスと共に見廻りに向かうレオンだった──
異形の子等共有の財産的な存在、それが「花嫁」である零です。
みんな、形は違えど零のことは大切。
そして異形性の発露に関しては重要な存在。
調子乗ってたフエが締められるのも仕方ないですね。
ここまで読んでくださり有り難うございました。
次回も読んでくださると嬉しいです。