表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

112/238

自己犠牲の強い『花嫁』

異形事件が起きた事に対して零は複雑な心境を口にする。

その事件とは──




「全く、奴らは何を考えていたんだ」


 一つの事件が終わり、探偵事務所に戻ってきた零は帽子を脱いで、コートも掛けて、不服そうにつぶやきながらソファーに座った。


「誘拐した人達を異形化させて街に放ってまた人を誘拐させてそれを繰り返そうとしたようですよ」

「マヨイがいなかったら危なかった……」

「そしてマヨイも危なかった」

「どういうことだ?」

「連中は異形化されかかっている人間を戻せるマヨイを危惧し、殺そうとしたが──」

「ジンと、ロナクが人間には攻撃しようとしないマヨイの代わりにそいつらを屠った」


 それを聞いた零ははぁとため息をつく。


「やれやれ、人間の信者がいたのはそういう訳か」

「今頃、エルの食料が増えたと喜んでいそうですがね」

「ああ、ジンって奴はエルに依存しているからな」

「確かに」


 ふぅと息を吐き出して、零は二階へと移動した。

 荒井がついて行く。


「どうした、零」

「……異形が憎い」

「そうか」

「何もできない自分も憎い」

「そんなことはねぇよ」

「何が異形の『花嫁』だ」

「零」


 荒井が零の手を掴む。


「自傷行為はすんな、お前は何も悪くないし、仕方ないことだ」

「私が生け贄になってれば起きなかった事件もあったんだぞ?」

「それはそれだ」


 荒井はカッターを仕舞い零が自傷行為をしないよう見つめていた。


「零、お前は自己犠牲が強すぎる」

「……」

「お前に何かあったらそれこそ大事件に発展する、我慢してくれ」

「分かっている、だから憎いんだ自分が」

「零」


 荒井はお茶を出した。

 冷たいお茶だったので、零は一気に飲み干した。


「っはぁ」


 空のコップを荒井は受け取り、仕舞う。


「本当は何もしないのがいいのだろう、お前達の所にいるのが一番いいのだろう。でもだめなんだ、犠牲者の方々を見てきたから。遺族の嘆きを見てきたから」

「零……」

「ああ、どうしようもならない、どうにもできない自分が忌々しい──」


「あれ?」


 零の視界がぐにゃりとゆがむ。


「なんだ、これ」


 零はそのままベッドに倒れ込んで目をつぶった。





「クラル特性の睡眠剤、本当即効性だな」


 慎次はそう呟くと、零をベッドの上にキチンと寝かせそのまま眠っている零の頬を撫でる。


「確かに、俺達の所にいてくれた方がいいんだ、その方が俺達も安心できる」


「でも、お前はそれができなくなっちまった。簡単だ、犠牲者と遺族に感情移入しちまったんだからな、それが人間ってもんだ」


「だから、お前の無理に俺は付き合ってやるよ、レオンも。ニルスの野郎はしらねぇが」


 そう言って薄紅の唇に指で触れる。


「誰もものにもならないお前が、少しはこっちを向いてくれることを俺は望む、高慢だろうがな」


 唇を重ね、そして終わると立ち上がり慎次はその場から姿を消した──








異形の子等がいないと解決することができないし、自分が「花嫁」だと明かせば周囲の被害が自分に来るので被害者が減る可能性があるということで色々悩む零。

そんな零を強引に眠らせ、眠っているからこそ慎次は本心を述べました。

「花嫁」を危険にさらしたくないから、零が大切だから。


ここまで読んでくださり有り難うございました。

次回も読んでくださると嬉しいです。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ