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一日デート~「花嫁」という蜜~

ある日、慎次は零にデートをしてほしいと声をかけられる。

デート理由は異形案件で──




「荒井」

「何だ所長」


 ある日の朝、零は荒井に声をかけた。


「今日一日だけ恋人としてデートしてくれ」

「は?」


 荒井は目を丸くして声を上げた。


「何だ、異形案件か、それならレオンがいるだろう?」

「レオンはニルスと別件だ、他は人間案件だからお前しかいない」


 零の言葉に荒井ははぁと息を吐いた。


「……で、どういう内容だ」


 と、問われて零は荒井に説明し始めた。


 とある区域でデートをしていると、女性が一瞬で消えてしまうらしい。

 キスをしようとした時や、食べ物をシェアしようとしている時に特に頻発しているそうだ。


「もし出てこなかったら?」

「ペンダントを外す」

「……その前に出てくれればいいがな」


 荒井は何となく姿を現さなさそうな気がして憂鬱そうに息を吐いた。





 零はブラウスにロングスカートの姿という女性らしい格好をして女性用の帽子を被って目的の区域に荒井とやって来た。


 目的の場所は噂の所為かデートスポットであるはずなのに、女性しかいない状態になっていた。


「女性同士で来ている場合は除かれるのか」

「みたいだな」


 そう言いながら、零は荒井と手を繋ぎ、飲食店などに行って料理を堪能したり、デートを行っていた。

 荒井もまんざらじゃない表情で付き合っていた。


「おかしい」

「確かに」

「何故出てこない」


 零は首をかしげてベンチに座っていた。


「食べ物のシェアはやった、キスもやった、なのに何故出てこない」

「俺が原因じゃないか」

「……それもあったか」


 零は納得したような表情をする。


 荒井が異形の子であることは異形であるなら誰でも分かる。

 その異形の子の相手に手を出すようなまねは自殺行為だと異形が認識したら出てこないだろう。


「仕方ない最終手段だ」

「わかった」


 荒井が頷くと、零はペンダントを外した。


 すると頭上に、短い手が集まったような肉塊が竜巻状で現れ、零を連れ誘うとした。


「させるか」

「そのとーり!」


 地上からは無数の黒い手、上からは黒い不気味な肉塊が降ってきて、肉塊を捕食、取り込もうとしていた。



 人には聞こえない高さの悲鳴を上げながらその異形は消滅した。

 黒い手に包まれて、何かが下りてきて、中から女性達が現れる。

 虚ろな目をしている。


「マヨイ」


 零はペンダントを付け直しながらマヨイを呼ぶ。


「う!」


 マヨイは現れ、触手達が女性達の頭を包み込む。

 そしてしばらくして──


「あれ⁈ どうして此処に健二は?」

「港君どこぉ⁈」


「荒井、警察に連絡は」

「した」

「異形対策機関には」

「した」

「助かった、有り難う」


 零は女性達は何者かに拉致されていたと適当に言ってごまかし、警察に後は任せた。





「何故、女性なんだ?」

「女性は感情が豊かとされている、恋をすればなおさら。だから女性達の感情を喰らってたのよ連中は」

「何故開放しなかった?」

「しばらくしたら繁殖期の母体にしようとしてたみたい」

「やれやれ、厄介な異形だ」


「零、晩飯だぞ」

「ああ、すまないな」


 テーブルに食事が並べられる。

 荒井は並べ終わるとふぅと息を吐いた。


「フエ、今日の事は誰にも言うなよ」

「へいへい、言わないでおくよ、あらたな火種になるからね!」

「……不安だ」

「そこは安心してちょうだい!」

「マヨイもだぞ」

「う!」

「よしよし」


 荒井はマヨイの頭を撫でた。


 食事が終わり、零は入浴を済ませ、歯を磨いた。

 髪も乾かし、寝間着も着てベッドに入る。


「デートとは存外楽しいものだったな」

「そうか」


 零がいつもの調子で言うと、荒井は苦笑した──







異形も異形の子のものには手をつける気はないけど、それが「花嫁」だったら危険だって分かってるはずなのに手をだしてしまう。

普段はペンダントで、零は「花嫁」であることを異形達の目からごまかしています。


ここまで読んでくださり有り難うございました!

次回も読んでくださると嬉しいです。

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