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13話:ダンジョンへ行こう その2


さて、武器屋の豪華な剣を手に入れることには何とか成功した。

セヴェロが高等な治癒術を覚えていなければ死んでいたところであった。

「もう、前に出ないでくださいね」

「後ろは自分に任せるッス!」

でも何だか保護対象みたいな感じになってしまった。

謎の街には他に目ぼしいものも無かったので、さっさと退散することにする。

次なる階層はいかにもな地下通路風のダンジョンだった。

ところどころに松明が設置されており、薄暗いものの視界は確保できている。

「オーソドックスなダンジョン!と思われるッスが、こういうタイプのダンジョンは実はそう多くないんスねぇ」

マシニッサくんの解説が捗る。別に聞いてないんだけど。

「龍の時代をもたらしたとされる原初の勇者パーティーの伝承に登場するダンジョンがこのタイプであり、それで有名になったんスよ!ちなみに現在の魔王国中部にある『ケナブレアンの地下迷宮』が伝承のダンジョンではないかとされているッス!」

「詳しいんですね!」

ルーナが褒めると、マシニッサくんは鼻高々である。すごい早口。

「審問官も褒めてくれてもいいんスよ!」

「まあ、すごいよ……」

「にっへっへー!」

急にあざとさを前面に出してきたな。今までそんな笑い方してたっけ?

ともかくも、私達は探索を続ける。そして肝心な事を忘れていたことに気がつくのだ。


◇ ◆ ◇ ◆ ◇


「今何時?」

「さあ……」

時間の感覚が狂い始める。なにせずっと屋内でずっと明るいし。

ひょっとするともう二日ぐらいは経過しているのだろうか?

「時間がわかるものを持ってくるのが定石ッスよ!」

「持ってきてる?」

「持ってきてないッス……」

罠の解除や魔物退治に忙しくて文字通り時間を忘れていたのだ。

しかも、このダンジョンバカみたいに広いようで、もう40層ぐらいまで来ている。多分。

ここに入ったパーティーがなかなか戻らないのも頷ける。

とはいえ、魔物が食べようと思えば食べられるタイプの魔物であり、時々キレイな水源も発見できているので食糧事情は問題ない。

「お腹減ったなぁ……そろそろお昼にしようよ」

「そうッスね!今日はここでキャンプにするッスか!」

ということで、テントを張り食事の準備を始める。

マシニッサくんと二人で料理を作る、といっても簡単なごった煮ぐらいだが。

今回初めて知ったが、ルーナとセヴェロは料理が壊滅的であった。

「ニンニクやオリーブオイルがあればいいんスけどねぇ」

「まあ、一味欲しいわね」

ダンジョン内で取れる香草では少し限度があった。あとは持ってきていた塩ぐらいしかない。

そして食材は洞窟オオトカゲの肉である……これを見ているとなんだかドゥライドを思い出す。元気してるかな。

「猟奇的ッスね……文字通り食べるって訳ッスか……」

「冗談に決まってるでしょ」

この肉は結構美味しいのだが、淡白ではある。香草と一緒に煮込んでしまおう。

持ち込んだオートミールも砕いて水と混ぜて焼く。粥にするよりはマシな食べ方だ。

「天と地の龍神よ、あなた方の慈しみに感謝いたします。実りを今日の糧と出来ることに感謝いたします」

食前の祈りを済ますと、早速いただくことにする。

「お二人とも料理が上手ですね」

「でもルーナ、この間お菓子作ってなかった?」

「あれは食事係の方に作ってもらったんですよ。ほら、私ってこうだから、料理作っちゃダメですし……」

そ、それもそうだが……しかしセヴェロはそんなことないと言いたげだ。

「……!」

「ありがとう、セヴェロくん。気にしないでください、しようがないことですから」

今無言で通じ合ってなかった……?

「あの二人……」

やはりマシニッサくんもそう思うか。

「姉弟なんスかね?」

う、うーん……。


◇ ◆ ◇ ◆ ◇


食事も済ませると仮眠を取る。見張りは私とルーナ、マシニッサくんが交互に行うことになった。

セヴェロはパーティーの火力の要であるし、そもそも喋らないので見張りに向いていない。

彼は気持ちよさそうに呑気に眠っている。ただでさえ可愛い顔なのに寝顔だと更にバリ可愛いのだ。

ルーナはジッとその顔を見つめている。彼女ああ見えて可愛い物好きだし……早く寝ろ。

可愛いといえば、獣人であるマシニッサくんの寝顔もバリ可愛いのである。

こういう容貌のレベルが全体的に高いところは獣人のズルいところだと思う。

と、どうでもいいことを考えつつ見回りをしていると、うめき声が聞こえてきた。

「……うぅ……」

両手剣を構えて静かに声の発生源を探す。少しその場を離れて曲がり角を覗く。

野営の火が見え、そこに二つの人影が見える。そして人影は重なっていた。

へ、へぇー!すげー!こんなところで!あんれまぁそんなことまでしちゃって!

いやまあ別にそういうの否定はしないけどね?私だってそういう経験無いわけじゃないしね?

私は音を立てないようにその場を去ることにした。こういうのは黙って立ち去るに限るのだ。

「もう、永久に出られないのね……最期に、こうなれてよかった……」

「うん、うん……」

……コトが終わったら助けに行ってやるか。

皆の元へと戻り、マシニッサくんと交代する。

「ふわーあ、もう交代ッスかぁ」

「もう数時間経ったよ」

「……あれ?なんか声が聞こえるッス」

「あとで見に行けば?」

私はベッドロールに包まり、目を閉じた。


◇ ◆ ◇ ◆ ◇


結局殆ど寝られなかったが、それは二人も同じようだ。

ルーナもマシニッサくんも、あと私も、寝不足の顔だ。

「……見ました?」

「見たッス」

「見たわ……」

快眠顔のセヴェロは何のことだかわかっていない様子であったが、お前にはまだ早いのだ。

さて、朝食を済ませたら早速あのカップルを助けに行こう。

かなり絶望している様子だったので、揃って自刃してないといいのだが……。

「んっ、んんっ、んっ」

「はっ、はっ、うぅっ……」

まだハッスルしてました。もういいだろやめろ!

「お二人さんちょっといいスかぁ?」

「えっ!?」

「あっ、なっ、なんだ君たちは!?」

「こっちのセリフだ、おバカ!」

事情を聞くに、二人組の冒険者のようである。幼馴染同士で一緒に旅をしていたらしい。

それでこのダンジョンに入ってみたら脱出不能になってしまっていたとのこと。

絶望して最期に思いを伝えて、それでなんだか盛り上がってしまったようである。

「やっぱこいつら助けるんじゃなかったッスね!」

「そうね……」

「ええっ!?」

クピド派にあるまじき事を思わずついつい口にしてしまう。

とにかく、気まずいけど彼らを引き連れてダンジョン攻略を目指す。

この深さまで来れるなら相当な手練だろう。戦力としては期待できそうだ。

男の方はジョン、女の方はカミラと言うらしい。ジョンとカミラ、不思議と舌に馴染む名前だ。

というわけで自己紹介も済んだところで探索再開である。

ダンジョンは地下へと続く構造になっており、下へ下へと潜っていくことになる。

途中現れた魔物たちはジョンとカミラがやっつけてくれるので楽ちんだ。

流石は冒険者なだけはあるが、じゃああんなところでどうして絶望してたのか。

「このダンジョン、広すぎる気がします」

「ええ、こんなのは初めて……」

二人は数多のダンジョンを巡ってきた猛者でもあるらしく、その二人がそう言うのなら相当なのだろう。

実際問題、私たちは既にかなりの階層を降りているはずなのだが、一向に終わりは見えない。

そして厄介なことに、魔物の強さと凶暴さも増してきた。

「一般的にダンジョンの奥深くの方が魔力の濃度が濃いので、それに感応した魔物はより強力なものになっていくッス!」

マシニッサくんは上機嫌に解説する。

「階層が多くて深いほどに強い魔物が現れるそうで……うーん、40層はあまり聞いたことがないので……」

つまり、とんでもない強さの魔物が出てくる可能性があるって、事……!?

「ということは、腕がなりますね!」

ルーナとセヴェロはフンフンとやる気十分だ。頼もしい限りである。


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