表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/46

9話:ゴブリン退治


今日は討伐任務だ。

こういうことは冒険者ギルドの仕事と思われるかもしれないが、我々教団も慈善事業の一環として行っている。

冒険者ギルドは各地から依頼を取りまとめ、冒険者たちに仲介する組織である。

彼らにとっては慈善事業で無料で依頼を解決してしまう龍教団はすごく邪魔なのだ。

そういうわけで、お互いに商売敵として両組織の仲はあまりよろしくない。

何はともあれ、鎖帷子は鬱陶しくて慣れないが、これも仕事のためだと割り切ろう。

「ギヨームが残念がっていましたよ」

ルーナは楽しそうに言った。今日は彼はお留守番である。

今日は私とルーナ、そして修道院付けの魔術師セヴェロの三人での任務だ。

なんでも、近郊の森にゴブリンの集落が発見されたらしい。

ゴブリンというのは亜人の一種である。亜人というのは人間から何らかの呪いで魔物化した存在だ。

人類からは巨人、獣人ならコボルトやケットシー、ミノタウロスなど。

ハイエルフからはゴブリン、ドワーフからトロル、オークならオーガ、竜人からはリザードマンなどが確認されている。

魔族の亜人は、在野の魔物がそうではないかとされているが詳細は不明。

これらの亜人は元となった人種より知能が低く、力が強い傾向にあり、タフだ。

また繁殖能力も高く、人里近くに住み着くと周辺の魔物や家畜、田畑を襲撃される恐れもあるため駆除対象になるのだ。


◇ ◆ ◇ ◆ ◇


魔術師セヴェロは寡黙な少年であった。道中、私とルーナの会話に混ざることも無く静かにしていた。

別に仲間はずれにしたわけではないが、話を降っても身振り手振りでしか答えてくれない。

「修道士と喋っているところは見たことあるのですが……」

ルーナは不思議そうな顔をしていたが、彼は彼女に熱い視線を送っていた……!

これは、ひょっとしてそういうことなのか!?恋しちゃってるの!?

しかしもしそういう事であっても、病のこともあるし、ルーナはきっと拒絶するだろう。

おお、愛の神龍クピドよ、困難へと立ち向かう少年の心に勇気と祝福を与えたまえ。

「あはは、まだ祈るのは早いんじゃないですか?」

私が両手を重ねて胸に手を当てていると、ルーナが苦笑した。

しかし、そんなこんなで特に何事も起こらず、我々は目的の場所に到着した。

そこは街道から外れた林の奥にある小さな泉だった。

その畔には粗末な小屋が建っている。

おそらくあれがゴブリンの集落であろう。

「主神クピドよ、憐れな御霊をお救いください」

私たちは胸に手を当て、祈りを捧げてから集落の中へ踏み込んだ。

小屋の中には、ボロ布をまとった十匹ほどの小鬼がいた。

セヴェロが手をかざし呪文を叫ぶ。

「走れ、雷よ!」

瞬間、青白い光が瞬き、ゴブリンたちを貫いていく。

「グギャッ!?」

「ギィイイッ!!」

ゴブリンたちは一瞬にして黒焦げになり絶命した。

騒ぎを聞きつけたのか、他のゴブリンたちがわらわらと出てくる。

「ギャッギャッ!」

「ねえなんでー?なんで人襲っちゃだめなのー?なんでー?」

ウワーッ!ガキみてーなゴブリン!

私は両手剣、ルーナは片手剣とカイトシールドを構え、セヴェロを背に庇いながら迎撃する。

戦闘の基本は遠隔から一方的に攻撃することだ。魔術師や弓兵こそが主な火力である。

セヴェロの雷魔法がゴブリンたちを殲滅する。撃ちもらした奴らは、私とルーナで仕留める。

この程度の数であれば特に問題なく倒せる。

最後の一匹を倒し終えた後、私はセヴェロに声をかける。

「大丈夫、疲れてない?」

彼は無言でこくりと肯くだけだった。

ルーナが彼の頭を撫でると、彼は嬉しそうに目を細めた。

セヴェロは背が低く、ルーナは長身な方なのでさながら姉弟のようだ。

が、しばらくするとハッとしたルーナが慌てて手を離す。

「失礼、つい……今日はよく頭を洗ってくださいね」

彼女はそう言ってバツが悪そうにするのであった。


◇ ◆ ◇ ◆ ◇


後日、訓練所にセヴェロの姿があった。なんと彼も金属の仮面をつけていたのだ。

ゴブリン退治の日に見ていたのはルーナというより銀の仮面であったらしい。

恋心とかではなく若気の至りであったか……まあ彼、13歳だしね。

任務達成のお小遣いをすべてつぎ込み鍛冶屋に作らせたようで、装飾も凝っており結構なお値段がしたに違いない。

「似合っていますよ」

ルーナがそう言うと、彼はとても満足そうな雰囲気を醸し出していた。

自慢気に着けていたのだが、それを知った修道女たちにはからかわれ、聖務の際は外すように副院長に叱られ、泣きべそかいていたという。

だが心なしかルーナの、彼を見る時の雰囲気が優しかった気がした。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ