運命の相手
運命の相手だった。
探し、探し求めてようやく見つけた全力で殺り合える人間。この瞬間をどれほど待ち望んだかは俺にも分からない。
魔法を打ち合い、剣を交え、時には拳も振り下ろす。限界をこえて尚も実力は拮抗し、互いの思想がぶつかり合う。
ただ勝ちたい。そう魂が叫ぶ。
一歩も引かない戦いは永遠かのように感じられた。
だが終わりは唐突にーーやってくる。
一瞬彼女の身体がふらついた。即ち、体力の限界。
その隙を見逃すほど生温い剣はしていない。
ザクッ、鋭く深い一撃が彼女の胸を貫いた。鮮血が散り彼女は崩れ落ちた。
訪れた静寂が終わりを告げる。体はボロボロ、血は垂れ痛みが今を現実だと知らしめる。勝利を噛みしめ剣を収めた時、そこに駆け寄る少女が目に入った。
「お母さん!!ねぇお母さん!!!!」
少女は彼女の体を揺さぶり必死に問いかける。たしか彼女と共に暮らしていた子だ。
「無駄だ、彼女はもうじき死ぬ」
事実を告げ俺は剣を収めた。
「そんなことない!!お母さんは最強なんだから!絶対負けないんだから!」
大粒の涙を流し少女は言う。
「マ……リィ、ごめんねぇ。お母さん、負け……ちゃっ……た」
そして彼女が最後の言葉を残す。
「愛してる」
そう言って彼女は死に果てた。もうここにいる意味はない。そうその場を離れようと足を運ばせる、その瞬間だった。
「わだしの名はマリィ!!覚えておけ、お前を超え打ち果たす名だ」
突如少女が叫んだ。涙を堪え唇を噛み締めながら吠える。さっきまで居た少女はもう居ない。確かな覚悟を心に誓いその目は戦士の目に変容している。
「俺はカイ。ただ強さを追い求める者」
彼女は強い、そしてきっと俺の前に立ちはだかる脅威となる。そんな予感がした。
多くは語らない。わずかな期待を胸に含めながらその場を去った。
期待は現実に。時は経ち、彼女は脅威となり俺の目に前に立ちはだかる。
そして思う、君こそ運命の相手だと。剣を握りフッと息をはく。思わず口角がニッと上がる。
もうこの世界に言葉なんかいらない。さぁ殺り合おうじゃないか。
どちらかが死に果てるまで。
とある機会に書いた短編です
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