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撃てるんデス! ~自衛官の異世界魔法戦記~  作者: 井出 弾正 (いで だんじょう)
第6章 乱戦
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第84話 共闘

 ガウェインが銃の弾丸を防ぐとすぐにフォロンが前輪を挙げて前進。馬から降りたガウェインの頭の上から突起(スパイク)付きの車輪を叩きつけようとする。右手のトンファーで受けて左側へ回り込み、レッド男爵の右脚に一撃。レッドはフォロンを左に一回転ターンさせガウェインの足下(あしもと)(すく)おうとするが、ガウェインはすかさず跳躍して避ける。


 次から次へと増えていたクズリやオルトロスだが、ガウェインがレッドと戦うと、魔物を召喚する速度が下がっている。クララのダガーが飛び交い、サキのサーベルがクズリの喉を突き刺す。レイゾーの剣が双頭犬(オルトロス)をおろし単頭半身にすれば、タムラの(ナタ)は首狩りの道具だ。今がレッドに従う魔物を抑え込むチャンスだろうと思った俺は範囲攻撃のソーサリーを使う。味方がおらず敵の魔物が多い場所、つまりはレッドが開けた領域渡り(フィールドウォーク)(ポータル)の方向へ。



「曇天の空、深淵の沼、気圧の谷間で、これまでの大罪を恥じ謹慎せよ。地の毒(フィジックヴェノム)!」


(ポータル)の前の地面が泥と化し、クズリやオルトロスの足が沈み込む。藻掻いているうちにコンクリートのように固まり動きを封じると、レイゾーが火力呪文を、マチコが電撃を放ち効率良く片付けていく。


 このペースならガウェイン卿の加勢に行けるかと思っていると、ジャカランダ城の方から大きな爆発音が聞こえ、濛々と黒煙が上がった。そうだった。飛行型ゴーレムがジャカランダを襲っているのだった。サキは魔法で石礫を創り、クズリの群れに投射しながら言う。


「やるべきことをやろう。ここはAGI METALに任せよう。我々シルヴァホエールが直接戦うのはゴーレムだ。」

「おう、行ってくれ。ワン公どもは僕たちが退治するよ。」


 レイゾーが行けと言うからには大丈夫だろう。サキが俺の顔を見て頷いた。


「青い月を仰いで申す。天と地の(ことわり)をわきまえ巨神ゴルグの足下にて、その力を貸し与え給うことを祈るものなり。召喚(サモン)ミスリルゴーレム!」


 十字を含む直径十メートルほどの大きな魔法陣が浮かび、その中心にタロスが回転しながら、歌舞伎役者が奈落から廻り舞台で上がって出て来るように現れた。頭頂高十七メートルのタロスを見て、魔物(モンスター)オルトロスはともかく、生物(クリーチャー)クズリは本能的に敵わないと思ったのか逃げ出して散り散りに走り始めた。


 サキはタロスのコックピットへのハッチとなる(ポータル)をオキナが創った土の防壁の表面に開くと、俺達シルヴァホエールにタロスに乗り込むように促す。


「レイゾーさん、タムラさん、ここはお願いします。」

「はーい、引き受けたよ。城の守りを宜しく~。」

「了、頑張って来いよー。」


 パーティ四人、タロスのコックピットに入り込むが、ジャカランダ城では、また爆発があった。規模の大きさは先程と同じくらい。おそらく攻撃の手口は一緒なんだろう。クララからの報告。飛行型ゴーレムが何かを投げつけたようだ。


 マチコがタロスを城に向かい走らせる。すると日が暮れて薄暗くなった頭上をフェザーライトが通り過ぎていった。ファザーライトは空を飛ぶが、俺達は領域渡り(フィールドウォーク)を使ったのでジャカランダ城の郊外へは早く到着していた。今フェザーライトが追い付いてきたわけだ。いや、追い越された。


「メイ、敵のゴーレム、捉えたか?」

「愚問よ、伯父様。真っ直ぐ突っ込めばいいんでしょ?」

「おう、ぶつける気で行け。俺は舳先(へさき)に立つから操舵輪(そうだりん)握っとけ。」

「じゃあ、火力呪文はそっちで宜しく。」


 メイはジャカランダ城上空を飛び回る『メッサーV』の一体に狙いを定め真っ直ぐに進む。狙うは手に爆弾を持つ機体。城に爆弾を落とされる前にそのゴーレムを堕としたい。

 オズマとしても同じだが、もう一つ。『メッサー』とは違う『メッサーV』を残骸で良いのでホリスターのもとへ持ち込み敵戦力の分析を進めたいと思っていた。

 ただし、そうなると完全に破壊するわけにはいかず、程々のところで寸止めし動きを停めるくらいにしなければならない。『メッサーV』を外側から観察する限り、背中の翼と翼の間にある瘤のような塊の部分からマナを変換したエネルギーを吹き出し推力を得ていると予想できた。そして、おそらくは魔法使い(マジックユーザー)が乗り込み制御している。


「タロスを模倣して人を乗せたんだな。そいつも捕虜にして情報を訊き出したいもんだ。まずは弱い魔法から試すか。」


 オズマは衝撃(ショック)火葬(インシネレート)といったインスタント呪文を試したが、これは器用に避け、また防御魔法で弾かれた。


「ほお、こりゃ面白い。自律型のゴーレムは動きが単純だっていう証明だな。じゃあ次は外れないヤツな。」


 風と水の魔法の矢(マジックミサイル)の呪文、氷の矢(アイスアロー)を撃つと腹に命中。高度を堕とすが、墜落前に体勢を持ち直した。


 フェザーライトの応援にジャカランダ城を守る騎士団の士気が上がる。動きの速い的には当てにくいが、据え置き式弩砲(バリスタ)投石器(カタパルト)まで持ち出して懸命に応戦している。そこへタロスが走り込んでいったことで、さらに士気が上がり、鬨の声までが出始めた。三体の飛行型ゴーレムは、それぞれフェザーライト、騎士団、タロスと対峙する。


 俺はメイに教わった魔法の矢(マジックミサイル)の一つをここで試すことにした。実戦では初めてなので精神を集中する。


「マチコ姐さん!タロスの腕を挙げて。五本指の先を上に。飛行型ゴーレムに向けてくれ。」

「ん、了解。なにかやるつもりね?」

「あー、あれですねえ。」


 クララは鍛錬に付き合ってもらったので、俺が何をやろうとしているのか知っている。空を飛ぶ相手には有効な魔法だ。六芒星魔法(ヘキサグラム)のイエローとレッドのマナを使うマルチカラーのインスタント呪文。タロスの両掌を「パー」にして十本の指先を『メッサーV』に向けた。呪文詠唱。


「行くぞ!五指雷火弾(ボルテスファイブ)!」


タロスの両手の指先から十条のプラズマ火球が飛び、『メッサーV』の一体を捉えた。追尾式の火球が十もあれば避けられまい。全てが命中して抱えていた爆弾に引火。爆発を起こして火達磨になり城壁の外の畑の中に落ちた。


 また騎士たちのモチベーションが上がるとバリスタを撃ち始めた。いや、空を飛ぶ相手には大味過ぎて不利だろうと思っていたのだが、バリスタの大きな(やじり)にもトークンを埋め込み、魔法の効果を与えているようだ。ジャカランダの市民たちも遊んでいるわけではない。空中で軌道修正して目標へ飛び、ゴーレムの背中にある翼の鉄の皮膜を突き破った。グライダーのように風に乗って滑空していた『メッサー』と違い『メッサーV』は背中に魔法の内燃機関を持ち自ら推力を生み出して進むため、まだ落ちはしないが、かなりのダメージのようで飛行速度はガクンと下がった。たまらず回頭し、どうやら撤退するようだ。


 あとは、もう一体の飛行型ゴーレム。それに人食い魔獣(マンティコア)に乗ったデーモンのガンバ男爵。ガンバはフェザーライトと対決中のゴーレムに指示を出す。


「城内ならば、もうどこでもいい。爆弾を投げろ。」


 残った『メッサーV』が二発の爆弾をジャカランダ城の城館の近くの一番目立つ大きな塔に向かって爆弾を投げつけると、ガンバはフェザーライトに襲い掛かった。待ってましたと言わんばかりにオズマはガンバを迎え撃つ。


 一体残っていた『メッサーV』が投げたのが爆弾だとすぐに分かった。同じ判断をしたクララとサキが叫ぶ。


「了!」

「クッキー!」


 爆弾が着弾する前に爆発させてしまえば、なんとかなるだろうか?あの爆弾を撃つ。そう決めて憶えたばかりの呪文を使った。


暗器(デリンジャー)!」


 タロスの口の部分に浮かんだ二重の五芒星の魔法陣から、二発の火球が発射され、緩い弧を描いて飛ぶ。銀色の爆弾が塔に着弾する前、城の上空にて魔法の火球が爆弾を貫き爆発した。黒い煙と爆音とともに爆弾の破片が降り注ぐ。なんとか最後の爆弾二発の被害は防いだ。


フィリピンで実写化される ボルテスV が楽しみ。

早く日本でも公開してほしいものです。

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