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撃てるんデス! ~自衛官の異世界魔法戦記~  作者: 井出 弾正 (いで だんじょう)
第5章 戦役
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第58話 ランチミーティング

 まずページ公から。眼光は鋭いが、穏やかな声だ。


「茶を飲みながら話そう。大事な事だが、だからこそリラックスして話すのが良い。」


レイゾーとサキに着席するよう促して、隣席のガウェインを紹介する。


「こちらはガウェイン卿。王都の騎士団の団長。英雄レイゾーのパーティAGI METALのメンバーでもある。パーティメンバーとはいっても、お立場があるので、当然普段は王都におられる。セント・アイブスには3年ぶりですな。」


料理の皿が運ばれてくる前と食事中には、ページ、ガウェイン、レイゾー、サキの4人が何か話していた。ガウェインとガラハド、マリアはそれぞれ目を合わせていたようだが。


 ガウェイン、レイゾー、サキからこれまでの経緯と現況の説明。王都の軍ではシルヴァホエールに大型クリーチャーとモンスターの討伐の依頼を決定し、ガウェインがパーティを探しに大陸へ渡り行き違いになったこと、昨日のゴーレム同士の交戦、漁村クライテンが占領されており、そこからまた別のゴーレムが陸揚げされるであろうことが報告された。


ガウェインからは、今後の国軍の動きについて。


「漁村クライテンの港にゴーレムを運ぶ船が着くのを阻止しなければならない。クラブハウスには大きな商業港、クラブハウスとクライテンの間にもう一つ、漁村リスターがあり、この港も重要。国軍はクラブハウスとリスターを守りつつクライテンを奪還する。シルヴァホエールにはゴーレムや恐竜に対抗するため作戦に参加してもらいたい。セント・アイブスの皆さんには、この半島の守備を。」


 ここで、ガラハドが挙手。質問があがった。


「幾つか訊きたい。まず、バルナックの侵略に対しては基本的に国軍が対応するということか?

 俺たちは、この街と半島を守るが。はたして、それだけで良いのか?

 それからゴーレムの移動手段は船だけか?フィールドウォークでそこいらに現れることは?」

「基本的に国軍がやる。そのための国軍だからな。状況次第では徴兵もあるだろうが、勿論そうならないように努める。ガラハドとマリアはギルドマスター。レイゾーもこの街を守る砦の責任者。それぞれ役目がある。」


 ゴーレムの移動手段については、サキとマリアからの説明があった。タロスは特殊なもので、他と比較対象にはならない。他のゴーレムが運用に関してタロスと同様にはできない。何故タロスだけが可能なのかは、機密事項だそうだ。俺も説明できない。今までにパーティメンバーとしてヒントはもらっているが。

 フィールドウォークには大きさは勿論のこと、重量、質量の限界がありゴーレムを扱うことはできない。恐竜が最大だろう。そのためにゴーレムは術者が、その場にある土や岩から造り上げる。『召喚術』『ゴーレム召喚』と言われるのは、その場で造った人形(ひとがた)に入る霊的な存在、魂を呼び寄せるからだ。まず人形(ひとがた)を造ることが前提なので、人形を造る者と魂を召喚する者との複数でゴーレムを動かすこともあるようだ。逆に言えば、ゴーレムを使う術者が移動するならば、何処にでもゴーレムが現われることになる。ただ、話が戻ってしまうが、その場にある土や岩から人形を造り上げるので、結局質量の大きな鋼鉄の泥人形(アイアンゴーレム)はフィールドウォーク以外の方法で運ばなければならない。

 クレイゴーレムやストーンゴーレム、ウッドゥンゴーレムなら何処にでも出て来る、ということだ。ゴーレムを操れる術者がいれば。


 そして騎士団長ロジャーが立ち上がり強い口調で告げる。


「ゴーレム以外にもバルナック軍が大型のクリーチャーやモンスターを使役することは明白。クランSLASHから国軍へ幾つかの新しい戦術の提案があった。大型の相手に有効な策だ。セント・アイブスでも同様の備えをする。職人ギルドでは新しい武具の制作に邁進している。騎士団は主力ばかりでなく魔法兵団も後方支援部隊も講習、訓練を受けてもらう。冒険者も希望者は参加可能。冒険者から受講料は取らない。できるだけ多くの参加を期待している。講師はAGI METALの皆さんだ。」


 これには、騎士団も冒険者も驚いた。英雄のパーティから技術を学べる機会を得るからだ。


「その戦術の一つ、陣地形成のやり方についてはブライアンも講師になってもらうが。他にも、冒険者の中にエンチャンターがいれば、新しいマジックアイテムを作る仕事があるので、そちらはギルドを通して募集する。クエストとしてなので報酬もある。安いので申し訳ないがな。」


 呪術師(エンチャンター)についても、安い報酬であれ、新しいマジックアイテムの作り方を知る機会だ。むしろプラスと考えて良い。

 冒険者たちは、侵略戦争についても徴兵されずともバルナック軍のクリーチャー、モンスターを倒せば普通に肉や皮、ドロップアイテムといった戦利品が手に入り、それを目的にこの街へ集まっているのだ。街としては、バルナック軍だけでなく、不安定なダンジョンのオーバーランを防ぎ探索を進めたい思惑もあり、お互いの利益が一致している。


 再びガウェインが発言。断っておかないといけないことがある。


「レイゾーとも話し合ったのだが。すまないが、私は国軍の指揮を執る立場から、正式にAGI METALのメンバーからは外れることになった。よってクランSLASHからも外れる。協力関係は今までと変わらず、なにかあれば駆けつけるが、戦術講習の講師になることはない。

 それから、その新しい戦術の提案はSLASHから国軍に向けたものであったので、当然、現在王都でも準備を進めている。この街よりも早いペースで。そして準備ができ次第、クライテン奪還作戦を開始する。クライテンを逃げ出したバルナック兵がこの街を目指して来る事もあるかもしれない。その場合の対応をしっかりとお願いしたい。」


 そうか。AGI METALは四人だけでもバランスの良い、というかガーランド最強の冒険者の集まりなので問題はないだろう。俺はパーティメンバーとしてガウェインとは、ほとんど関わりを持つことはなく残念だが、先に移籍したのは俺だし、仕方がないな。ただ、シルヴァホエールはクライテン奪還作戦に参加することになりそうだから、仲良くしておきたいところだ。


 この後は反対する意見もなく、技術的な面からの質問などがあっただけでページ公の挨拶、閉会となった。多くの冒険者が街を守るために動いてくれそうだ。

タムラなどは雑談した冒険者全員に、この街が潰れたらカツ丼も焼きそばも食えねえぞ、と言いくるめていた。冒険者ども、胃袋掴まれたな。タムラもレイゾーもまだ新しいメニューを開発中だそうだぞ。俺も胃袋掴まれてるけどな。


漁村の名前 クライテン リスター は宇宙船レッドドワーフ号 からのネタです。

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