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撃てるんデス! ~自衛官の異世界魔法戦記~  作者: 井出 弾正 (いで だんじょう)
第5章 戦役
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第45話 仕込み

ワールドカップサッカーで盛り上がってるので、皆さん小説どころではないと思いますが。

普通のゴーレムは命令に従うが基本的に自律行動する。タロスはそれに加えて召喚した術者たちが直接制御することができ、武闘家など体術の優れた者が操縦すれば軽快な動きをするし魔法使い(マジックユーザー)がいればタロスを通して威力を増大させた魔法も使える。

その魔法について防御面を担当するのがサキ。攻撃面を担当するのが俺ということだ。


 これは戦車に例えると俺にとっては分かりやすい。近代の主力戦車は三人から四人の乗員が要る。陸上自衛隊ならば、すでに退役の61式(ロクイチしき)戦車、74ナナヨンしき戦車は四人乗り、現行の90式(キュウマルしき)戦車と10式(ヒトマルしき)戦車は三人乗りだ。

指揮を執る車長。運転する操縦手。大砲を撃つ砲手。90式、10式にはないが、装填手(そうてんしゅ)という大砲の弾を詰める役目がいて四人。

 第2次世界大戦の頃には、いざとなれば車外に出て歩兵としての偵察任務や諸事をこなす装填手はすごく重要なポストだったらしい。勿論弾の装填が早ければ、それだけ短い間隔で大砲を撃てるわけだ。装填手がいなくなっているのは、装填が機械で自動化されたため。特に主砲が大きな車種は弾も大きく重く人力ではやっていられない。ただし、2020年近くになって開発されている主力戦車はまた乗員が増えつつある。ドローンや情報処理のコンピュータを扱うからだ。

 タロスが戦車ならば車長のサキ、操縦手マチコ、装填手クララ、砲手の俺となる。戦車の砲塔の上から顔を出して機銃を撃つのは車長なので、全体の指揮と防御、補助面での魔法を使うサキはまさにそれだろう。

 この世界では格闘家マーシャルアーティスト職能(クラス)を持つ女子プロレスラーマチコは操縦手として大きな魔物と格闘し、周囲警戒と投擲武器での副操縦手を担当するクララ、元々戦車の砲手の俺。理想的な人材配置ではないか。適材適所。あと必要なのは俺自身のスキルアップ。


 タロスの修復作業を終え、クランSLASHで取調室のホールに集まり今後の動きについてのミーティングである。とはいえ、王家の四男ゴードン王子と騎士ガウェイン卿がこの場にいないため、総勢10名。ただしクランの事務を取調室に頼むことだし、レイゾーやマリアの考えでは取調室のスタッフもそのうちにクランのメンバーとして取り込みたいようで、手の空いた者は話の内容を聴いている。またガラハドの指示で冒険者ギルドの職員が来て議事録を書き込んでいる。そのままクランからギルドへの手続きを済ませてしまうようだ。


 タロスの運用についてだが、広いフィールド上のサキがいる場所にならば何処にでも召喚できるが、タロスは大きすぎて領域渡り(フィールドウォーク)(ポータル)を通れない。まずはサキの移動を最優先に考えなければならないということだ。ただしフェザーライトの船倉にタロスを積むことができる。

 そこでシルヴァホエールとフェザーライトで一緒に運用するのが良いとの意見に纏まり、オズマ、メイ、サキ、マチコ、クララ、俺のシルヴァホエール六人パーティとレイゾー、ガラハド、マリア、タムラ、ゴードン王子、ガウェイン卿のAGI METAL六人パーティの二組を動かすことになった。普通ならば冒険者パーティを軍に徴用する場合、その六人に監察役の騎士や役人が同行するが、このクランにはそれもない。なんといってもギルドマスターがメンバーに入っている。


 それぞれのメンバーの住居だが、ゴードン王子とガウェイン卿はセントアイブスに到着すれば領事公邸のゲストルームへ。オズボーンファミリーは街に点在する空き家の一つを使うことになり、俺はシルヴァホエールのメンバーとクララの実家へ移ることになった。これまで俺が使っていた取調室の二階の寮の部屋は兵糧の備蓄倉庫になるそうだ。


 ただ俺が取調室の従業員であることには変わりがない。侵略戦争がなければ店の食材調達係なのはそのままだ。そういえば、まだ胡麻を入手していないのだった。


 そして、残った恐竜を討伐するのが喫緊(きっきん)の課題。サキが恐竜を倒すように命令したストーンゴーレムは二体とも引き続き恐竜を探して動いている。まだ恐竜がいて、どこかに隠れている。王都ジャカランダの騎士団もこれには手を打っているはずだが、南側のコーンフロール半島に逃げ込んだ恐竜がいるならばセントアイブスで対応したほうが早い。フェザーライトが上空から探し、AGI METALの四人が連携して地上で駆逐することとなった。


 その間に取調室従業員は戦に備える。食糧の備蓄。大型弩砲(バリスタ)に加えて新しく投石器(カタパルト)の用意。店の南と東西の三方に塹壕の設営。また貿易の商人に医療品や新しい武具の手配などだ。

俺も新しい武器を作ってもらいたいので説明文と下手くそな絵を描いてシーナに預けた。シーナから武具商人に渡してもらう。ついでに胡麻を仕入れできないか訊いてもらおう。

 また、騎士団にも土嚢に次いで、もう一つ街を守る手段としてアイデアを提案しておいた。これはクランSLASHから提出してもらう。限られた予算や人手の中で御苦労だが、必ず効果はあると考えている。


 俺としては、別の行動を許可してもらえるように進言してみた。土の精霊であるノームのオキナが言うには、おれは火の精霊と契約できそうで、その精霊がシドのダンジョンにいる。それができれば精霊魔術(エレメンタルマジック)を強化できる。火の精霊ならば文字通り火力アップだ。

 これには全員が賛成してくれてシルヴァホエールの四人でシドのダンジョンに挑むことになった。恐竜の生き残りを始末する仕事を押し付けてしまうようで、それは申し訳ないとは思うが。


「この四人での連携を確認するのに丁度よいだろう。新しいパーティだからな。」

「クララも風の精霊と契約したのよね。パーティの戦力アップは欠かせないわよ。」

「サキさんもマチコさんも認めてくれて良かったです。宜しくお願いします。」

「呼び方だが『サキさん』ではなく、『サキ』でいい。マチコもクララも私をサキと呼ぶ。」

「あたしも。『マチコさん』なんて、なんだかガラじゃないわねえ。」


そこはクララが突っ込む。


「やっぱり『マチコ姐さん』がいいんですか?姉御肌なんだからー。」

「そうねえ。レスラー志望の新人をしごいてやってたものねえ。」

「俺、レスラーじゃないので。お手柔らかにお願いしまーす。」

「あ~ら。そのうちに稽古つけてくださいって泣いてせがむようになるわよ~。」


 サキはパーティのリーダーとして、やはりいろいろと考えているようだ。俺がどんな魔法の呪文を使うのか確認したいのだろう。


「敵はいつ攻めてくるか分からない。このミーティングが済み次第すぐに行こう。」



 サキの言う通りであった。この時、バルナックからミッドガーランドに向けてインヴェイド・ゴーレム『ハイル』を載せた輸送船が出航していた。ゴーレムを積む船としてはギリギリの大きさだが、このハイルがまだ試作機で、また一体だけであるため、正規の軍の輸送船を出していない。今回船を着けるのが軍港や商港ではなく漁港である点からも小さめの船であることが分かる。

 その船の甲板で潮風を受けながらデイヴは物思いにふけっていた。煙草の紫煙を吐き出しながら呟く。


「まだタロスが復帰したって情報は入ってねえが、ハイルと遣り合わせてみたかったぜ。あの連中、どうしてっかな。ちょいとイイ女だったよなあ。」


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