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撃てるんデス! ~自衛官の異世界魔法戦記~  作者: 井出 弾正 (いで だんじょう)
第4章 侵略戦争
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第43話 クラン

洋楽HR/HMの好きな人にしか分からないネタがちょっと多いかもしれませんねえ。

 レイゾーが歌うと様々な現象が現実になり恐竜が倒されていく。運よく免れた個体もガラハドの打撃で骨を砕かれ沈む。二人の活躍でこの周辺の粗方の恐竜は片付いた。


「ああ、久しぶりにシャウトした。スッキリ。」

「俺も力一杯本気出してぶん殴ってやった。久しぶりに。」


 ハイタッチして笑いあっている。

 こうなると気になるのは西の砦と街である。西の砦といっても街の西側であり、今二人のいる位置からは東になるのだが。砦はタムラとクッキーが守っているはずなので、街へ向かうことにした。マリアとクララも放っておいても大丈夫だろう。街が無事ならば、恐竜が現われた地点を調査に行きたいところだ。


 レイゾーとガラハドが領域渡り(フィールドウォーク)で街の中心地に出ると妙に静かだったが、土埃が舞い、悪臭が立ち込めていた。土埃の薄いところから時折見える恐竜の死骸に構築物や建物の残骸。どうやら戦いは終わったようだが、人影がない。情報を仕入れるために領主公邸を目指すことにした。


「店やギルドも心配だけどねえ。」

「まあ、そりゃそうだが。やっぱページ公のところへ行くのが筋だよなあ。街の住人が逃げ込むのは、領主館か病院になってる旧セントアイブス城のどちらかだろうしな。」

「そうだねえ。店やギルドの者はなんとか対応してるよねえ。普段から僕らが仕込んでるんだから。」




 俺が立ち上がった姿を見てサキはすぐに怪我を察したらしい。やはり不自然な姿勢をしていただろうか。


「あちこちに打ち身と擦過傷といったところかな。私は白魔導士(ホワイトメイジ)だ。すぐに治そう。君の怪我を放っておいたら、後でクララに怒られる。」


サキが呪文を唱えると痛みが引いた。なるほど。ポーションより効くようだ。


「あ、ありがとうございます。楽になりました。クララですが、今は此処にいません。」


タムラやロジャーが俺を心配して駆け寄ってきた。挨拶後、俺たちはクララと一緒にダンジョンに入ったこと、出るとすぐに恐竜に出くわしたこと、翼竜を追ってマリアとクララが北へ飛んでいったことなどを説明し、またサキ、マチコからもリュウが異変を察したことで西へ恐竜を討伐に向かったことなどを聞いた。そして、またリュウはどこかへ飛んでいく。


 飛行船フェザーライトはクラブハウスで、騎士パーシバルとアラン王子を下ろし、代わりに(あるじ)のオズマ・オズボーンを乗せセントアイブスへ。クラブハウスではパーシバル、アランが事後処理に当たった。半島の根本で人の往来の多い街とはいえ商業的には洋上船で荷物を運べるセントアイブスでは飛行船を見たことがある者はほとんどおらず、俺も含め皆フェザーライトに驚いたが、情報としては知られているため、そう騒がれなかった。ひとまず街の東側の海岸に着水。サキの姿を見つけたオズマはすぐに甲板から飛び降りてサキに話しかける。


「おおい、ミスリルを持ってきたぞ。」

「本当か?さすがだな。こちらから連絡がつかなかったが。」

「青い月まで行ってたんだ。ミスリル鉱石なら、それが一番早い。せっかくのフェザーライトだ。」


青い月まで行っていたとは、どういうことだろう?後で訊いてみよう。


「クッキー、紹介しておこう。我々の協力者だ。この飛行船を造ったオズマ・オズボーン。」

「初めまして。クッキーです。本名は朽木了(くつぎりょう)といいますが。」

「クッキーはシルヴァホエールに迎え入れたいと思っている。タロスの砲手として。」

「おお、そうかい。宜しく頼むよ。いい魔法使いが見付かったか。」


オズボーン、何処かで聞いたことがある名前なんだが。そうだ、初めてテオのダンジョンに入った時に。


「あ、オズボーンさんって、もしかしてヴァンパイアバットの羽根に食いついて毒で死にかかったという方ですか?」


一歩遅れて下船してきたメイが、それに答えた。


「あ、横からごめんなさい。それ、私の父だと思います。父のオズワルド・オズボーンのことです。人騒がせな父でお恥ずかしいです。私はオズマ・オズボーンの姪のメイ・オズボーンです。伯父のオズマとフェザーライトで商売をしています。」

「おう。お馬鹿な弟ですまないな。変な事で有名になってるな。」

「叔父様だって、さっきデーモンの羽根を食い千切ってたでしょ。同類よ。」

「で、おまえは、その娘で、姪だ。やっぱ同類だ。」

「なんでそうなるのよ。あたしは蝙蝠かじったりしないわよ。親は親、子は子。別人格です!」


デーモンの羽根を食い千切るって、どんな状況だったんだろうか?いろいろな意味で凄い人のようだ。


「なんだか楽しそうな船ですねえ。」


他に答えようもなかったが。そこへクララがいきなり抱きついてきた。フェザーライトに一緒に乗ってきていたのだ。


「さっきリュウから聞いたの。無茶な戦い方したって。無事なのよね?」

「ああ、大丈夫だよ。かすり傷だけど、それもサキさんが治してくれた。クララこそ、怪我無い?」

「あたしはほとんど何もしてないのよ。働いたのはマリアさん。」

(マリアさんがデーモンにワルプルガと呼ばれていたのが気になりますね。ガラハドさんとの関係も。)


クララは俺に抱きついたまま最後に船を降りてきたマリアを一瞥したが、どんな意味があったのか、そのときの俺には分からなかった。



 こうして、セントアイブスの領主の下へ町中の戦力が集まった。戦に備える話し合いがあり解散後はそれぞれの仕事に取り掛かった。武具の制作、街とその周辺の農地を囲う形ばかりの防壁の補修など。

 俺は陸上自衛隊としての技術、土嚢を使っての陣地形成、格闘術に怪我人の搬送方法なども教えることになった。代わりに剣や弓の教えを受けたわけだが。


 しかし、俺にとってそれ以上に大きなことは二つ。この後の行動に関わってくる。


一つ目はパーティの移籍の件だ。サキとレイゾーが長時間話し合っていたが『クラン』を組むこととなった。一時的なパーティを組むことをレイドというが、それとは違う。クランはパーティがいくつか集合したグループ。パーティとギルドの間とでもいおうか。グループ内のバランスの悪いパーティ同士で人材のやりくりや育成をしたり、クエストによって助っ人を送ったり情報や資材の調整もする。

 冒険者のパーティが軍と同様の戦力を持たないようにするためにパーティの人数の上限を六人に限っていることからも容易に想像できるが、クランを編成するには厳しい条件がある。原則として同じクエストに複数のパーティを当たらせることはできない。他にも構成員や活動拠点をギルドに知らせること、有事に軍に協力することが義務になるなどだ。

 AGI METAL、シルヴァホエール、そしてフェザーライトの二人。この三つのパーティでクランを作ることになった。AGI METALは三年前の戦争を終結させた英雄パーティで冒険者、探索者のギルドマスターが在籍、また実質的に街の南側を守る砦になっているレストラン取調室のオーナーである坂上礼三がパーティリーダー。シルヴァホエールも大型のモンスター、クリーチャーから人を守るAクラスのパーティ。有利な条件はもともと揃っていたが、建前として侵略戦争からミッドガーランドを守るために協力するという条件でクランが認められた。またパーティの入れ替えが可能なこともありAGI METAL元メンバーのゴードン王子もクランのメンバーとして復帰が決まった。

このクランの中で俺は状況によってAGI METAL とシルヴァホエールを行ったり来たりすることになり、俺がいなくてもAGI METALはゴードン王子を加えて六人のフルメンバーで行動も可能だ。あとは現行メンバーでありながら別行動になっている騎士ガウェインが戻ってくるのを待てば良い。すると総勢十二名となり六名のパーティ二組を編成できる。


 そして二つ目。俺はシルヴァホエールのパーティに入った場合『タロス』というゴーレムで攻撃魔法を撃つ砲手となるそうだ。ゴーレムっていうのは、お伽噺にでてくる石なんかで出来た巨人だよな?違うか?その砲手?なんだかロボットアニメみたいになってきたぞ。

いや、メカ怪獣だと思っておくか。すると火炎放射を跳ね返したりするのか?実感が湧かないが、まあ後で分かるだろう。

 その『タロス』がなかったとしても白魔導士(ホワイトメイジ)召喚士(サモナー)のサキ、格闘家マーシャルアーティストのマチコ、遊撃手(レンジャー)のクララに魔導士(ウィザード)で弓と近接格闘もできる俺が加われば、あと二人の枠に誰が入ってもバランスの良いパーティ編成にはなるだろう。もともと大型の獲物の討伐のクエストばかりしか受けないのでAクラス評価だが、他の任務もこなしていればSクラス評価でも良いくらいの実力があるらしい。


 やはり、まずやるべきは自分自身のスキルアップか。今回の恐竜の一件でも被害者を出してしまった。元の世界とは違うにしても、もうこんなのは御免被る。


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