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撃てるんデス! ~自衛官の異世界魔法戦記~  作者: 井出 弾正 (いで だんじょう)
第4章 侵略戦争
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番外編 同僚

 ケンちゃんと呼ばれて親しまれるスキンヘッドの男が同僚を探している。


「うちの車長、どこ行ったか知らない?」

「ああ、ワジーなら上に呼びつけられてたぜ。かわいそうに。多分クッキーのことだろうよ。」


このケンちゃんこと鈴本研一三等陸尉は陸上自衛隊の10式(ヒトマルしき)戦車に乗っている。ワジーこと輪島心事二等陸尉とは、自衛隊に入隊して三年目から二十年近く主力戦車の操縦手、車長として長い付き合いだ。


 輪島二等陸尉は嫌味な上官の小言を長々と聞かされた。その間は立ちっぱなしである。

この上官に対しては、

(こいつ、いつかぶん殴ったる。退官したらお礼参りに行ったるからな。)

と内心ずっと思っている。


 やっと理不尽な説教から解放されたときには、もうげっそりしていた。


「くっそう。やってらんねえなあ。」


ぼやきながら車庫に戻ってきた。


「お帰り、ワジー。」

「ただいま、ケンちゃん。」

「クッキーのことだよね?なんだって?」

「うーん、それがなあ。思わしくない。脱柵になるってさ。実家や卒業した学校とか、隈なく探すって。」


 脱柵とは、他の国の軍隊では脱走や敵前逃亡と言われるものだ。キチンと手続きを踏んで除隊退官すれば何も咎められることはないのだが、任務途中や休暇で失踪となれば大問題だ。家族や友人知人など全て捜索対象とされ連れ戻され、その費用まで本人に請求される。


 クッキー、朽木了の場合、休日に行方を晦ましたわけだが、やはり正規に手続きをしておらず、本人から何の連絡もない。看過はできない。

ただ、通常ではない事故、事件に巻き込まれた可能性がある。交通事故にあったとは考えられるのだが、彼の後ろを走っていた車のドライブレコーダーにカーブを曲がり切らず道路を外れて街路樹に衝突するまでが記録されていたにも関わらず、現場には車がない。それどころか衝突したはずの樹木には傷はなく、地面に(わだち)もない。車の破片も塗料の欠片もない。


 輪島も上官に事件に巻き込まれたのではないかと主張したのだが、まったく相手にされなかった。事件の証拠などまったく見当たらないと。


「脱柵となると、部隊にとっても不名誉なことだからなあ。アイツ、皆に嫌われるだろうなあ。帰ってきたくも無くなるよなあ。」


 鈴本はどちらかというと純粋にクッキーの安否を心配していた。行方を知りたい。


「探すったってさあ、アイツのご両親は離婚したって言ってたよね。不仲らしいから、実家には行ってないだろ?」

「そうだなあ。震災で住んでいた家も流されたんだ。それで妹さんも。地元に良い思い出はないかもな。」

「なんか話してると、どんどん暗くなってくるねえ。クッキー、俺たちにも黙って何処行っちゃったんだろ。」


 輪島も連絡がないことには気を揉んでいた。車長としての責任を感じている。


「明るい話題と言っていいか分からないけど、新しい砲手の補充するってよ。」


新しい砲手ということは、クッキーの居場所が無くなるということではないのかと二人とも思っている。年齢は離れているが、同じ戦車の乗員は一緒に過ごす時間も長く、家族同然の付き合いだ。


「ワジー、今日飲みに行こうよ。」

「だな。」


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― 新着の感想 ―
[一言] ノブはおらんのか….残念
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