第2話 登録
サカ〇〇〇〇ゾー HR/HMの好きな読者さんならば、誰をモデルにしたのかお分かりですね?
肉SHOCK!
「ちょっと待ってください。取調室って、どういうことです?」
「ああ、これ見たの? 店の名前だよ。レストラン取調室。上に小さい字で restaurant って書いてあるよね。」
よく見ると、確かに書いてあるが、小さい。引っ掛け問題か。
「僕は刑事ドラマが好きでね。この店のメニュー、飲み物以外は、カツ丼と豚骨ラーメンだけなんだよ。刑事ドラマの取調室で食べてみたいと思わない?」
「いや、その前に容疑者になりたくないです。」
「そうかなあ。2時間サスペンスドラマとか、僕は大好きなんだけど。熱血刑事に諭されて容疑者が自白するシーンとか感動しない?このネーミングの良さをこのユーロックスの世界の人たちは分かってくれなくって。君みたいに突っ込んでくれたのは初めてだ。日本人が来てくれてうれしいよ。」
なんかニコニコしてる。なんなの、このセンス。日本人にしか、いや、日本人でも分からないだろ。ちょっとズレてない?
「なんで、カツ丼と豚骨ラーメンだけって偏ったメニューなんですか?」
「うん、まあ、僕の趣味だけじゃなく、食材も理由だね。とんかつ定食とか出したいけどねえ。小麦粉や豚肉に米、あと玉子は上質の物が手に入るけど、キャベツなんかがないんだよ。とんかつ用のソースも上手くいかない。大豆がないから味噌もできない。」
それ、水や野菜が良くないってことだろうか? いや、なんかどうでもいい話題なんじゃない? 馬鹿馬鹿しくなってきたぞ。
「いや、あの、俺、不審者みたいに扱われて取り調べを受けるのかと。」
「はっはっはっは。それはない。だってこれで日本人だって分かったじゃないか。それにこの世界では、身分証明や個人情報がしっかりしてるから、よほど悪意をむき出しにしない限り大丈夫だよ。」
個人情報がしっかり?どういうことだろう。ここは町の一番外側とはいえ、町の雰囲気としては、そんなに発展しているようには思えない。考えつかないようなインフラや行政の仕組みがあるとか?
「とりあえず、店に入ってよ。営業時間中ではないから、気を使わなくていいんだ。同郷として力になるから。」
この後いろいろとこの世界のことを教えてもらった。生活の基盤としては、このレストラン取調室で、住み込みで働かせてもらうこととなった。バックヤードでの雑用と食材の調達をしてもらうよ、と。
俺としては、もとに戻る方法と魔法が気になるのだが、おいおい教えてもらおう。車も放ったままだし。
翌朝、店の従業員を紹介されたが、言葉が通じない。まかないの朝食をいただいて、手持無沙汰でいると一緒に出掛けるからついてくるように言われる。
「魔法を使えるのは、ごく一部の人なんだけど、それを公共に利用することで、この世界は成り立ってる。エンチャント・マジックって悪いイメージの言葉を使って分かりやすく言うと呪いを掛けることなんだけどね、それでたくさんのことができるようなる。エンチャントを掛けてもらいに行くよ。何ヵ所か周るけど、まあ、役所とか職安みたいなもんだね。」
呪いを掛けるって本当にイメージ悪いんだが、もう開き直るしかないだろう。だが、おかげで言葉が通じるようになり、戸籍のような手続き、出たり消えたりする不思議なIDカードとなる金属片を支給され、滞りなく体裁が整っていった。
言葉がわかるようになってから、驚いたことに礼三は、皆から英雄と呼ばれている。それで優遇されスムーズに物事が進んでいくのか。ちょっと親切で変わり者のあんちゃんかと思っていた。失礼しました。いったいどんな偉業を成し遂げたんだろうか?
その後、探索者ギルドという所で、ちょっとした騒ぎになった。俺はどうやら魔法が使えるらしいのだ。食材調達に必要だから組合に登録するとのことだったのだが、IDカードの職業という欄に探索者と書き込まれた後、職能という欄には、戦士、射手、魔導士、黒魔術士という文字が浮かび上がった。
「ええっ、凄い! 初めて登録して4つも! まさかこんなことが。初めて見ました。上級職能ですから、これなら職業も、すぐに冒険者も登録できますよ。」
ギルドの受付嬢が驚いて声をあげると、人が集まってきた。
「おおっ、スゲエな、兄ちゃん。どうだい、うちのパーティに入らねえか?」
「ねえ、お兄さん、うちに来てよ。」
「俺んとこならギャラはずむぜぇ。」
「ウィザードだってよ。すげえ戦力になるな。」
「戦士に魔導士って凄い!前衛も後衛もいけるじゃない!」
なんか俺、ひょっとしてモテてる? 航空自衛隊のパイロットとかは、女の子にもチヤホヤされるみたいなんだけど。同じ自衛隊員でも陸上だとゴリラのような筋肉の塊とか脳筋みたいなイメージがあって全然モテないんだよな。こんなの初めてだよ。ハハハ。うん、この世界、ユーロックスだっけ? 悪くないかも。
「クッキーは陸上自衛隊だっていうから前衛職で冒険者になれると期待してたんだ。大きく期待を超えたね。素晴らしいよ。」
「よく分からないけど、ありがとうございます、礼三さん。」
褒められた。素直にうれしい。自衛隊の訓練では厳しく発破を掛けられるばっかりだもんなあ。
「さすが。レイゾーさんが連れてくる方ですから、只者ではないだろうとは思いましたが。このまま冒険者としての登録もこちらでやって構いませんよね?」
「ああ、お願い。どうせ冒険者ギルドには、そのうちにいかなきゃならない。今行っても二度手間だからね。登録だけなら、ここでやっておこう。」
「はい、ただし登録したばかりでは、いくら上級職能でも、ランクとしては最低のGランクです。難易度や報酬の高い依頼仕事は、単独では受けられません。」
あら? やっぱりイイこと尽くめでもないわけか。
「僕のパーティに入れる。そっちの登録手続きも宜しくね。この後、南側のダンジョンに潜るつもりだからね。」
「ギルドのパーティ登録上での職能は、どれになさいますか?」
あ、4つから選べっていうのか? これは自分で決めさせてもらうぞ。
「魔法使い! 魔法使いでお願いします!」
「はい、魔導士でよろしいですね?」
「お願いします!」
礼三が笑っている。慌てて見えただろうか?
「そんなに鼻息荒くしなくても大丈夫。書類上でのことだよ。他の職能についても備考欄には、ちゃんと書き込まれるから。 それにしても、魔法使いになりたいんだね?」
「俺、戦車の砲手なんです。昨日の礼三さんの火の魔法をみた限りでは、魔法って大砲撃つようなものかと。」
「ああ。なるほどね。まあ、魔法の使い方も教えるよ。うちの店のためだけじゃないんだから、しっかり働いてくれ。早速これから実践だ。」
どうやら『南のダンジョン』に入るらしい。南のってことは、他にもあるんだよな。
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