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撃てるんデス! ~自衛官の異世界魔法戦記~  作者: 井出 弾正 (いで だんじょう)
第12章 決戦
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第178話 城門

バトルの同時進行ってのは、面倒くさいですねえ。

 サキ、ガラハド、マリアの三人はバルナック城の正面に向けて走りながらレイゾーの歌声を聴いた。サキはレイゾーの歌声を聴くのは初めてである。


国歌(ナショナルアンセム)だ。レイゾーやったな。この土塁を越えれば見えるんじゃないか?」

「これは…、味方の兵士全員に強化魔法(バフ)を掛けたわね。」


 ガラハドとマリアはすぐにレイゾーがやったのだと気付く。吟遊詩人の能力だ。


「そんなことが出来るのか。凄いな。吟遊詩人に英雄というのは。」

「私たちにまで掛かってるでしょ。あいつは普段とぼけてるけどね。伊達じゃないわね。英雄って。」

「急ごうぜ。サキ。主力部隊が戦ってるってことだ。」


 弓や小銃を持った伏兵を蹴散らし土塁の上に登ると、バルナック城の城壁と、その前面の空堀を挟んだ城下で戦っている大軍が視認できた。ミッドガーランド軍の主力部隊とゾンビの軍団。味方の軍がやや有利に動いている。紡錘型の陣を組んで中央突破を狙って進軍しているようだ。その先頭にいるのはガウェインである。

ガウェイン以外のベテラン騎士の姿が見えないが、ガラハドは気にしない。ガウェインが突き進み城門を破れば、攻略できるはず。


「ようし、ガウェインに加勢するぞ。」


 レイゾーの強化魔法(バフ)の効果のおかげで無駄に元気なガラハドは、ゾンビの群の中を掻き分け猪突猛進。サキとマリアも二本の軍刀(サーベル)星球式鎚矛(モーニングスター)を振るい、続いていく。




 モチベーションの上がったミッドガーランド軍の兵士たちは、レイゾーと一緒に国家を口ずさみ始めた。レイゾーの国歌独唱が、いつの間にやら合唱になっている。レイゾーが歌い終えても軍楽隊は繰り返し演奏し、トランペットやバグパイプの調べは続き、兵たちは歌い続ける。

 ミッドガーランド軍の士気はかなり高いとみたレイゾーは、城壁の上のスコット王子、ラーンスロット卿らしき人影を目指し、単独で城壁を駆け上がる。


「クッキー、トリスタン、ホリスター、ロジャー、そっちは任せるよ。よろしくー。」


 時の精霊の加護を受け『英雄(ヒーロー)』となっているレイゾーは、加速(アクセラレーション)という能力を持つ。目にも留まらぬ速さで射撃を躱しながら城壁を登る。常人の技ではない。本気をだしたレイゾーはこんなに凄いのかと、皆目を丸くした。


 しかし、常人にとっては、喜んでいられないことがある。城壁の上に構える弩砲(バリスタ)投石器(カタパルト)だ。さらに、城壁に近づけば小銃や弓での狙撃もある。少しでも敵の飛道具を潰しておきたい。

門前の空堀や城壁を越えて攻め込むための攻城塔(ブリーチングタワー)や城門を破る破城槌(はじょうつい)も守らねばならない。最悪の場合には魔法の火力をぶつけて壁を壊すが。そちらの指揮は、やはり騎士にやってもらうのが良いだろう。


「トリスタン卿、パーシバル卿、攻城兵器部隊の指揮を頼みます。ゾンビの軍団はなんとかなるにしても、城壁の兵器をどうにかしないと味方の被害が大きい。」


 一方でホリスターは三人の弟子にすでに攻略手段についての指示を出している。城の門前の空堀を無理に越えるよりは、跳ね橋を下ろさせるほうが、はるかに楽。鍛冶師のドワーフたちは、その構造を熟知しているので、自分たちに任せろと主張している。


「今はレイゾーの歌のお陰で押し気味だけどな。どこまでいけるか分からん。ここでダメ押ししてやるんだ。」


投石器(カタパルト)の一台を寄越せとパーシバルに交渉しだした。半ば(かす)め取るように|投石器の一台を確保すると、ホリスターとグランゼルが操作する。ホリスターが車夫たちに声を掛け、台車を真っ直ぐに城門に向けると、何故かスカイゼルがスリングの袋の中に。


「いけるか、兄貴?」

「ああ。いつでもいいぞ。やってくれ。」


 グランゼルがロープを引くと、(おもり)としての岩が大きく振れ、回転軸(シャフト)がさらに大きく弧を描き、なんとスカイゼルが投擲体として飛び出す。膝を抱え丸まったスカイゼルは回転しながら、丸太で出来た城門扉にぶち当たった。丸太がミシミシと音をたてる。扉の前に転がったスカイゼルが何事もなかったように起き上がると、門柱をよじ登り、背負っていた戦斧(ウォーアックス)で次々と鎖を叩き、断ち切る。

 続いて同様にスカイゼルの息子フォーゼが投擲体として飛んでくる。途中まではスカイゼルと同じように膝を抱え丸まって回転しながら球のように飛んでいたが、城門に当たる直前に姿勢を変えた。右脚を伸ばし、左膝は直角に曲げ、右足の裏で蹴ったかと思うと行進の足踏みをするように右膝を曲げて左膝を伸ばし、もう一度足裏で蹴りを入れる。


 城門の一番外側の扉、跳ね橋を兼ねた、丸太を並べた(いかだ)のような厚い壁が、大地震で建材が(きし)むような音と共に倒れた。これで城の正門の前に横たわる大蛇のように思われた空堀が、その上を通れるようになった。沸き立つ兵士たち。


 しかし、まだこの内側に門扉(もんぴ)としての頑丈な扉がある。これを破らなければ入城はできない。そして、城門の上、左右からスカイゼルとフォーゼの親子が狙われることになった。


 トリスタン、パーシバルの指揮で城門の周りへ(いしゆみ)、投石が飛ぶ。俺も曲射弾道砲(トレンチモータル)五指雷火弾(ボルテスファイブ)の火力呪文を撃って対抗した。


「スカイゼル! フォーゼ! 戻れえええ!」


 ホリスターとグランゼルが城門の上の櫓に向けて葡萄弾(グレープショット)を撃った。この状況で、面で制圧する有効な手段だろう。これがあったので、ホリスターもあの二人を行かせたのだろうが、それにしても捨て身の戦法だ。


 ミッドガーランド軍が勢いづいて一気にゾンビ兵たちを追い詰めるが、スカイゼルとフォーゼはどうなることか。二人は打ち合わせ済みか、あっという間に跳ね橋を渡り切り全速力で走り戻ろうとするが、小銃の銃弾に矢の雨が追う。ただ、ドワーフは背が低い。的としては小さく狙い難い。そして小銃は鍛錬なしには簡単には当てられない。バルナック兵の練度はいかほどだろう。


 俺が近づいて土の魔法で壁を作ればしのげるはず。銃剣を持ち走りだすと、俺の両脇を四台の戦車(シャリオ)が走り抜けた。ロジャー、ブライアン、フレディ、ディーコンの操る物だ。ロジャーにはトリスタンが、ブライアンにはパーシバルが同乗し、弓を構えている。四台がバラバラに動いて翻弄し、一方でトリスタンとパーシバルの放つ矢は敵兵を捉える。致命傷にはならないが、ここではそれで構わない。フレディとディーコンが二人のドワーフを乗せるとアメフトのレシーバーのような軌道で走り味方の陣地内に戻って来た。

 パーシバルの左腕、スカイゼルの背中に二本、フォーゼの背中に一本の矢が刺さっている。三人ともかすり傷だと強がるが。すぐにレイチェルとジーンが駆け寄って手当てをする。


「急所じゃない。たいしたことはありませんよ。」

「ふん。俺たちドワーフにはなんでもない。」

「親父殿の言う通り。」


 一番怪我の酷そうなスカイゼルが、一番声が大きい。本当に大丈夫そうにしている。


 そして、ロジャーたち戦車(シャリオ)隊とは反対方向に、ミッドガーランド軍の後方から向かってくる物があった。後方部隊が補給として送ったストーンゴーレムだ。後方部隊は禁呪エノラ・ゲイによって壊滅し、その置き土産となってしまったストーンゴーレムだが、食糧を背負子に積み、飲料水を載せた荷車を引き、主力部隊に追いついてきた。


 時間差はあれど、三体のストーンゴーレムが戦力に加わり、ミッドガーランド軍は大いに士気が上がった。バルナック城へ突撃するという雰囲気が出来上がった。


今回のネタは宇宙鉄人キョーダインの必殺技キョーダインピッチングパワー と 仮面ライダーフォーゼのライダーキック。

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