プロローグ
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ここは剣と魔法の世界。私はエルフという種族の亜人。「サキ」と呼ばれている。3人の仲間と共にちょいと厄介な仕事の真っ最中だ。いや、大したことはないはずなのだが。新入りメンバーが不慣れなためにどうにも頼りない。我々は主に大型の生物、魔物の討伐を請け負っている。今回は体長15メートルほどの合成怪物。獅子や蛇を切り貼りしたようなバケモノだ。人面獅子とも呼ばれる5体の人を喰らう魔物を従えている。
エルフというのは魔法の知識に明るい種族だと言われるが、私も例外ではない。怪我や病気の治癒、体力の回復、それから特に召喚術というものを得意としている。
大型の獲物を相手にした仕事は、この召喚術を使えるからだ。目には目を歯には歯を。こちらも大型の魔物などを使役して対峙させる。なかでも切り札となるのはタロスという泥人形だ。
泥人形とは土、木、岩、鉄など地属性の物質でできた巨人。それから魔法具生物のひとつ。自律的に動き、その質量を生かした蹴手繰り攻撃で圧倒するパワーファイター。タロスは、さらに多くの異能を持っている。
そのタロスの異能のために、今タロスの腹の中、いや胸の中、心臓のあたりに押し込められているわけだ。コックピットとも呼ばれる場所だが。
「デイヴ! 何をやっている!? 私の指示に従え!」
「サキ、いつもの貴方らしくなわよぅ。 冷静にいこうよぉ。」
声を張り上げた私を、左の座席のクララが窘めるが、
「デイヴぅ、そろそろちゃんと当ててくれないとお姐さんも怒るわよ。大物狙いもいい加減にしなさいな。」
「雑魚を相手にしたってしょうがねえだろ!せっかくこんだけのパワーがあるんだ。頭を叩けば終わるって!」
タロスの手足を動かしているマチコもイライラしているようだ。無理もない。
デイヴが攻撃魔法でマンティコアを牽制しなければ、接近戦で多勢の魔物を相手にしなければならない。通常、泥人形の攻撃手段は格闘のみ。しかし魔法と親和性の高い希少金属から成るタロスはコックピットの魔法使いが使う魔法を増幅して放つ。遠く離れた相手、空中の敵に攻撃魔法を飛び道具として使えるわけだ。術者次第では、複数の目標に範囲攻撃もできる。タロスは人類、亜人類にとって、大型の魔物を退治するには最強戦力といえるだろう。運用を間違えなければ。
ところが、新入りの精霊魔術士デイヴは、タロスが増強した魔法の力に中てられてしまったらしい。自分の実力、魔力を過信し、キマイラに自分で止めを刺すことに固執している。
6対1では数的不利。マンティコアを攻撃魔法で片付け、本命のキマイラとサシで勝負するのが正しい運用だろう。ミスリルゴーレムの防御力ならば魔物の牙や爪でどうにかなるものでもないが、私の魔力が尽きれば制御が上手くいかずタロスは動きを止めてしまい、この仕事は失敗だ。
「デイヴ、何度言わせるつもりだ? どうせキマイラを狙って派手な大技を出しても当たらん。おまえの言う雑魚を先にやるんだ。雑魚でもないんだがな。」
「当たりゃいいんだろ。やってやっから黙って見とけよ!
何も考えないし、感じない。笑わないし泣きもしない。ただ熱い火の塊がぶつかるのみ。火球! 」
もうデイヴに真面な判断力はないようだ。タロスは人間の口に当たる部分から火の玉を吐き出すが、翼を持つキマイラは難なく躱す。と同時にタロスの前後左右からマンティコアが体当たりしてくる。ゴーレムの巨体が飛び上がって避けた。が、着地したところをもう1体のマンティコアに狙われる。膝の裏側を突かれ衝撃と共に背中を地面に叩きつけるように転倒。操縦手のマチコはよくやっているが、我々パーティの連携がなっていない。
そして隙ができたゴーレムに向けて魔物の連続攻撃。キマイラの眼前に五芒星が二つ重なった立体魔法陣が浮かぶ。
「まずい!超高等魔術だ!」
「あーら、見かけによらず知能高いのねえ。お姐さん感心しちゃったわよ。」
マチコは軽口を叩きながら、タロスの膝を立て、首をすくめ、脇を閉め、手の甲を外側に向け前腕で頭部と胸部を守る防御姿勢をとる。が、希少金属製のボディの胴体が凹む。右肩の一部はえぐられた。圧縮された空気と重力による衝撃波だろう。
悲鳴の響くコックピットの中で、私の堪忍袋の緒も切れた。能無し魔術士とタロスの接続を断った。
「クララ、私たちでやるぞ。ユー ハブ コントロール。」
「待ってました。アイ ハブ コントロール。」
「お、おい、ちょっと待てえ。どうなってんだ!」
私はあまり得意ではないが、攻撃魔法が使えないわけではない。そしてクララは投擲武器などの扱いに長けている。照準は任せる。
「クララ、私が魔力を込める。撃ち込むタイミングをそちらで頼む。」
「合点承知。」
マチコはすぐにタロスの体勢を整え、反撃に備えた。クララが引き金を引く。タロスの口から出た魔素が無数の石礫に換わりマンティコアを打ちのめす。
「仕留めたのは二匹かあ。まだまだいくわよぅ。」
「わーお、クララちゃん、やるじゃない。さすがねえ。」
「その調子だ。しかし・・・。」
残ったマンティコアがタロスの背後から飛び掛かる。1体に振り向きざまに左肘を喰らわせると、その反動を利用して、すかさず逆回転に飛び上がりもう1体に回し蹴り。さらにジャンプして1体をやり過ごし、そこへクララが石礫を放つ。
「あっちでリングに上がってたときだって空中殺法は得意だったのよ。」
いずれも効果はあったが致命傷とはなっていない。別の手で攻めるか。
タロスの前面に六芒星の魔法陣が浮かび、大きな岩の尖頭器が現れる。左手でそれを掴むやいなや大きく振りかぶり3体のマンティコアを次々になぎ倒す。勢いそのままキマイラへ突貫。尖頭器は見事キマイラの身体を刺した。
だが、合成怪物も転んでもただでは起きないようだ。タロスの頭から酸の息を吐きかけ、上半身からは、濛々と煙が上がる。ミスリルが溶けるなど考えられない事態ではあるが、事実コックピット内の気温が上がっている。
タロスの額にあった文字が消え、文字が書かれていた棘が細くなり抜け落ち、そこから魔素が抜け出していく。タロスは膝をつき項垂れ、機能を停止した。
「人選を間違えた。代償は大きいな。」
今回はプロローグで、主人公の仲間になる冒険者について書きました。
次回は第一話で、主人公登場です。