黒い部屋
私は今、黒い部屋にいる。いや、入れられたと言った方が正しいのかもしれない。
私は酷く真っ当な人間でした。前ならえをすれば、定規のように真っ直ぐに手を伸ばし、きちっと前にならおうとするような、酷く真面目な生き方だ。
そんな私は今、黒い部屋にいる。
夜になり、シャワーを浴びるのだが、浴びるものすら真っ黒で.......。いや、何をそんなに黒くする必要があるのだろうと思うこともあった。
正道を貫く私は、ある日、過ちを犯したのだ。
ーーー女を殺した。
俺のことを愛してやまぬ女を殺した。俺の子供を憎む女を殺した。
その次の日には、品行方正を貫いた私の足跡は、全て黒く塗り尽くされた。
今日も黒い部屋で、息をする。
窓の外で、ケタケタと、口角を恐ろしいほどに上げて、指差して笑う真っ白な人たち。笑いながら、責め立てるものたち。踏み入らず、六法全書片手に笑うやつ。その全てが真っ白だ。
そんな日々を送る私の前に、何かがボトッと落とされた。酷く鈍い音だ。また黒い。
その黒を見てみると、その形容が明らかになった。
私の子供だ。それは酷く赤黒く。子供と言うにはあまりに奇々怪界とした異様のもの。
私は泣いた。部屋の外に漏れるような声で泣いた。だが、不思議なことに、漏れ出した言葉も真っ黒なのだ。それを見て、またケタケタ笑う。おつる涙は、透明だった。
ひとしきり泣き叫び、この子をどうするかと戸惑い続けて、辺りを見てみると、真っ白な縄が、見つけろと言わんばかりに部屋の真ん中に置いてあった。
私は、そこらにあった椅子に乗り、縄に首を通した。
身を吊らせ、透明な涙を流した後に私はーーー。
透明になった。
眠れんから書いた。一回書いたことあったかもだけど......。人生で初めて描いた小説だね。