97.これがパンよ
料理学校。それが私の居城。
嘘です。でも所有者は私です。
やりたくないけどいつものやりますね。
ばーん。
メグミ・ヒイラギ
HP803/895 職業:愛人強者 料理人 農場管理者 階級:領主の愛人恋人強者、料理学校校長。料理人のカリスマ、複数工房経営者、実験農場責任者 冒険者階級:赤銅級
状態:(普通)
力:強い
体力:普通にある
魔力:402
精神:高揚
スキル:鑑定Lv:5.999
ユニークスキル:言語理解
:言語翻訳
ほとんど成長しとらんやんけ!って言わないでね。なんかここ最近伸びが悪い。予測だけど成長限界があるんじゃないかな。もしくは条件があるとか。
鑑定レベルが5.999で止まったのがその証拠だと思う。
そんなことはどうでも良い。
私はついに手に入れた!自由に使える小麦粉の権利を!
小麦粉は無かったわけじゃないけどバーナじゃ物凄く高いんだ。しかも売っているのは全粒粉っていう茶色っぽい粉と普通の白っぽいが若干混じり物がある小麦粉の2種類だけ。全粒粉でkg10万円。白っぽい小麦粉がkg1000万円。
うん。どんだけ貴重なんだよ。正気じゃねえ。ここの領主やばいわ。って当時思ってた。まあ誤解はすぐに解けたんだけどね。
でもさあ。麦の生産量がとてつもないんだバーナって。米の生産量の方が確かに多いんだけど。護衛の人に聞いたら教えてくれた。既に王国最大の生産量らしい。その大半を換金している。そして献金額は既に一定らしい。
それなら換金する量を減らしてって考えるけど。目くらまし政策だから方針は簡単には変えられない。みんなそれを理解しているから誰も言わない。今まではそうだった。
私途中で気付いちゃったんだよねえ。所属派閥は超が付く過激派。力でねじ伏せる派閥。そして爵位は伯爵。これ途中で忘れてるんじゃないかって思ったんだ。
だって官司だっけ?そんなのが来ていちゃもんつけようと力で黙らせればいい。虚偽の報告をしたって潰せば良いだけじゃん。何度も繰り返せば黙るんじゃない?
貴族問題?超過激派の領地にわざわざ喧嘩売りに来る?だってここの領主の別名、鬼畜、悪逆、極道、残虐領主よ。って言い過ぎか。
でもそんな領主が治める領地に来て問題なんか起こしたら無事に帰れるなんて思うかしら。消される覚悟があるなら別だろうけど。
領民という平民なら?領民をただの労働力という財産扱いしてる領主に?通じると思うのかしら。
私だってそこまで馬鹿じゃない。奥様軍団に世間話として旦那の愚痴を聞くわけだけど色々情報流れてくるわけさ。領内の情勢とかね。
じゃあ何で麦を通常価格で売らないんだろうか。領民を守るため?
この領の武力。頭イカれてると思うかもだけど領民ほとんど全員が戦える。手軽に扱える遠距離武器の小型絡繰弓が領民の標準装備。
シーサーペント討伐の際に開発されたという大型絡繰弓に投石機という大型兵器や魔法弾と魔法矢って新型兵器も開発されている。ある意味王国最大規模の戦力を保有している。そんなところに喧嘩吹っ掛ける馬鹿いる?
なんとなくなんだけどこの領が単独で王国と戦争になっても勝てはしないけど負けもしない気がするんだよねえ。
そこに過激派閥の戦力が上乗せ。国王様もこっち側。何を恐れる必要があるんだろう?
皆もそう思うでしょ?
そこから導き出された結論。彼氏が完璧に麦の事を忘れているか面倒くさがって手を付けていない。
あれだけ忙しい人だし。体力的、精神的に追い詰められてる人だから責めようとは思わないけど。私は麦を小麦粉を金額に気を使うことなく自由に使いたい。広めたい!
きっと切っ掛けが必要なだけだ。そう思って釣りに同行して小麦の件を無理やりねじ込んでみた。
結果は勝訴!いとも簡単に麦の値段が変わることが決まった。
フハハハハハ!領民共、この愛人様の知略に感謝するが良い!
、、、なんて言うと本当に崇めてくるような連中だから絶対言わないけど。私を見てくる目が時々怖いんだよ。彼氏に向ける目と同等になってきている気がする。
私は料理学校の校長!
有言実行。小麦の研究を開始する!
、、、いきなりとん挫した。取り急ぎ麦を貰ってきて脱穀して石うすで挽いてみたわけです。何でか出来上がったのは全粒粉。茶色っぽい小麦粉。
あれ~。小麦粉だよね。何で白くならんの?
ハタと気が付く。そうか米と同じで糠みたいなのがついているんだ。これは水車で磨いてもらわねば。
、、、私はとんでもない勘違いをしていた。えっと何から話せば良いかな。小麦粉ってさ等級あるんだ。何をいきなりって思うかもしれないけど。
水車小屋に行く。既に小麦粉の製造が始まっていて。普通に用意されていた。どれが必要ですかと聞かれる。出てきたのは5種類。全粒粉から始まり段階を経て真っ白な小麦が並べられた。
新型製粉機というものが稼働していた。それを見学させてもらって認識を改めさせられたんだ。白い小麦粉。これを人力でやっていた?そりゃあ馬鹿みたいに高いわけだわ。
それに精米技術。これが無かったら。水車が無かったら。この歯車の組み合わせが無かったら。どれが無くてもこんなに大量に小麦粉を作れない。白い小麦粉を量産出来ない。計算され尽くした計画に思えてきた。
当然全種類の小麦粉を貰ってきた。5種類全ての小麦を使って講師を集め皆で酵母を使ったパン作りをしてみる。小麦粉に少量の塩、水、酵母を入れてこねる。一次発酵。ガス抜き、鉄板の上に乗せて濡れ布巾をかぶせて二次発酵。オーブンに突っ込む。
焼き上がり、講師みんなから感嘆の声が上がる。うん、いい匂い。
試食開始。
5等級全粒粉ね。焼き上がりの中身も茶色い。味は悪くない。けど日本で食べてたパンからは程遠い。
4等級。5等級よりは雑味?みたいなのが少ない程度の味。
3等級。う~ん。これ、すでに近い気がするんだけど。なんか違う。
2等級。???あれ、美味しい。美味しいんだけどなんか離れた気が。
1等級。????????何でこうなった?軽くておいしい。美味しいんだけど違うんだ。何というか、そう味の薄いスポンジみたいな。
あれ~~~~。何で?1等級が一番近くなると思ったのに。むしろ3等級の方が近い位だ。好みの差はあるだろうけど。というか現に講師の人達は絶賛中。
でも違うんだ。私が求めているパンは。パンの味がしっかりしていて。って意味不明に聞こえるかもだけど。
使うのは1、2、3等級でいいと思う。くそう、思い出せ!パンの作り方を。私はどうやってパンを作っていた?
、、、って普段からパンなんか買ってきてたから作ったことなかったわ私。
ダメじゃん!
いや、待てよ。確か小学校か中学校の家庭科で作ったことあったわ。あの時の材料って小麦と塩とイースト菌だけだっけ?
違う!さらに砂糖、、、牛乳!卵!バター!
この領に、学校に材料は、、、揃ってる!
ってか何で私は全部揃っているのに作らなかったんだろう。
まあいい。砂糖だって黒糖じゃない製糖された白い奴だ。私が開発した!ドヤァ
、、、器具とか全部揃ってたけど。遠心分離機まであるなんて。なきゃできなかったけど。
まずは3等級でいく。小麦粉に砂糖をほんの少し入れて軽く混ぜる。酵母、常温の牛乳、卵黄を入れて混ぜる。軽くまとまるまで混ぜる。
で溶かしたバターを入れる。混ぜる。混ぜる。ってかこねる!身体強化使ってこねる!
後はさっきと同じ一次発酵、ガス抜きして休ませて、二次発酵でオーブンへ!
、、、って待て。たしか最後に溶かしバターを生地に塗ってからだ。
焼き上がり。懐かしい焼きたてのパンの香りだ。こんな匂いだったな。数年ぶりのパンだ。こんがりきつね色。二つに割ってみる。普通にパンだ。日本で食べてたやつ。
食べてみる。懐かしい風味、ほのかに感じる甘味。パンの味だ。美味しい。
これだった。この普通のパンを何気なく食べてたけど。こんなに美味しかったんだ。
講師全員無言だった。
「これが、パンですか?お菓子ではなくてですか?」
そうなるんだあ。砂糖入れたからねえ。そういうことじゃなくて?
「とりあえずこれはパン。私基準のパンよ!」
材料の命名、料理の命名。すべて私が基準!この世界の料理界トップは私よ!




